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メルマガ 「いのちの授業」あの日から(2号)

『覚悟と行動してこそ、夢は叶う』


「お誕生日プレゼントは、ウエディングドレスにしたい」
景子の誕生日を前にしたある日、淳子が私に言いました。景子の夢は、お嫁さんになることでした。私は全てを察しました。

数日後、淳子は、子ども用のドレスショップに行きました。
店内のお客さんは、みんな家族連れです。「他の子は、いつか本物のウエディングドレスを着て、純白の花嫁になる。でも景子ちゃんは、あと数ヶ月で天国へ…」。淳子は、ドレスを選びながら、涙がこぼれたそうです。

ついにお誕生日。「えっ、これなに?」と、景子はドキドキ顔で箱を開けます。
「うわー、お嫁さんのドレスだ! やったぁ!!」。せっかくだからと、淳子は景子にお化粧をしました。景子は、ほう紅と口紅をつけてもらい神妙にじっとしています。「きれいだね。お父さん、写真をとって!」。私は、写真を撮りながら、「もう景子ちゃんの花嫁姿はみられない」との思いがこみ上げてきます。涙でカメラのピントが合いません。

覚悟のときでした。私は、この写真を景子の遺影にしよう。淳子は、ウエディングドレスで家から出棺しようと決めました。

「殺した・・・。殺した・・・」
景子を看取った瞬間、私はそう思いました。病気を見つけられなかった、治せなかった、最後は薬を使い眠らせました。そんな無力さ身勝手さがそうさせたと思います。

病院から出るために車に乗ろうとすると、淳子が言いました。
「景子ちゃんの体が冷たい。風邪をひくといけないから、タオルケット掛けて」。タオルケットをかけると、「景子、寒くないか。お家、帰ろうね…。お家、帰ろうね…」と淳子は景子をずっと抱っこしていました。

ついに、そのときを迎えました。
淳子は、ウエディングドレスを着せて、カツラとリボンをつけて、自分が結婚式のときに持ったブーケを持たせてお嫁さんにしました。私は、もう絶対になれない花嫁の父として送り出しました。六歳のお嫁さん―。景子の夢は叶いました。

夢を抱くことは、人生の希望や生きる力になります。
夢は、ただ願うだけでは叶いません。
覚悟と行動してこそ叶うのです―。

私も淳子も信じています。景子ちゃんは、天国で幸せなお嫁さんになってくれていると。
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