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土が育つしくみ~生物が土を作った

土壌が生成される過程を参考に、作物の生育に適した土づくりを心がけよう。


はじめに

作物栽培には、光・温度・降雨などの気象条件、土壌の柔らかさや養分供給力などの土壌条件、病害虫・雑草などの生物条件といった、作物をとりまく環境条件が関わっています。そして、これらの環境条件が適切な範囲で維持できることが大切です。

土壌ができるまで

「土」という漢字は、大地に草木の芽が出た姿を表しています。しかし「土」は、地球が誕生した時から存在していません。地表面に現在のような土壌が生成されたのは、約46億年の地球の歴史に比べると比較的最近(およそ4億年前)のことです(犬伏・斎藤 2004)。それでも、さまざまな自然現象や生物の働きを受けながら、長い時間をかけて、植物が生育できる土壌ができあがったのです。

大政(1977)を参考に、植物が育つ土が生成される過程を紹介します。最初に、太陽の熱、雨、風による風化を受けた母岩(岩石)が崩壊し、それによってできた石や砂の破片が母岩の上に堆積します。この堆積物の上に植物や微生物が棲みつきます。植物根や微生物の出す二酸化炭素を含んだ水が、砂を溶かして、さらに細かくします。植物の遺体は微生物によって分解され、その一部が土壌有機物となって蓄積します。砂から溶け出た無機物が反応しあって、粘土鉱物という微細な粒子が生成されます。

このようにしてできた、砂、粘土鉱物、溶け出た無機物、土壌有機物などが次第に増えていきます。そして、植物が吸収できる養分が増加し、さらに、これらの物質が互いに反応しあって結合し、団粒構造が発達します。この過程の中で、植物の種類が増え、棲息できるさまざまな土壌動物や微生物が増えて、加速度的に土が生成されていきます。

土づくりのヒント

この動植物、微生物の継続した働きかけのなかに、有機農業の土づくりのヒントがあります。
土に作用するさまざまな自然現象や動植物、微生物の働きを考慮し、有機物の分解や生物による密度調節などの機能性に富んだ土に育つために、農地に「生命の密度」を高めた栽培を心がけることが大切です。

※「生命の密度」を高めた栽培には「農地を生態系として捉える」ことから始めましょう。


参考引用文献

犬伏和之・斎藤雅典(2004)土壌生物圏はいかに進化したか, 化学と生物, 42(1):47-53.
大政正隆(1977)『土の科学』, 日本放送出版協会.
藤田正雄(2004)自然農法と土づくり~田畑の生命の密度を高めよう~.自然農法,54: 46-53.

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