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大地の鍬-ミミズのはたらき(2)


(3)土壌の物理的性質を改善する

ミミズの活動によって、土壌の小さい粒子が集まって結合します(図2)。土壌が団粒化することで、水分保持力が高まり、降雨時の養分の流失を防ぐなど土壌の物理的性質が改善されます。

図3 ミミズによる土壌の団粒化

その一例として、土壌の水分保持力の指標となる最大容水量について、多数のミミズが生息する有機農業畑土壌と隣接するミミズがほとんど見られない慣行栽培畑土壌を比較しました。有機農業畑土壌は、慣行栽培畑土壌に比べて7.1%も最大容水量が高くなりました

4)作物の生育を促進する

ミミズの活動によって、土壌の性質が改善されることは、作物の生育にどのように影響するのでしょうか。

ミミズ糞と飼育用土壌を用いてトウモロコシをポットで栽培しました(図4)。トウモロコシの草丈、地上部重量ともミミズ糞を用いた方が勝りました。さらに、圃場レベルでもミミズの密度を高める栽培をすると作物の生育・収量が高まることが実証されています。

図4 ミミズの活動は作物の生育量を高める
**:統計的にみて有意な差(1%未満)があることを示す。

これに加えて注目したいのは、この栽培実験のなかで雑草の発生量に違いがみられたことです。すなわち、処理10日後のポットあたりの雑草数は、飼育用土壌では42本でしたが、ミミズ糞では12本と有意に少なくなりました(図5)。ミミズは雑草の種子に比べてより細かい土壌を選択的に摂食するため、その糞中には雑草の種子が少なくなり、このような結果が得られたと考えられます。

図5 ミミズ糞からは雑草の発生数が少ない(処理10日後)
***: 統計的にみて有意な差(0.1%未満)があることを示す。

(5)土壌の機能を高める

生きものは生活するために、食べものを取り込んで変化させ、不要なものを排泄しています。そして、このことを通して回りの環境を変化させ、同じ環境に暮らす他の生きものの生活にも影響を与えています。

ミミズの生活(活動)は、作物生産に欠かせない有機物の分解を促進し、土壌の物理的、化学的性質を改善しています。このはたらきによって、土壌動物や微生物の生息場所や餌が多様になり、多種多様な生きものが生活できるような環境が形成されます。このため、生物間の拮抗作用が高まり、生物の密度調整機能も高まります。
すなわち、作物の病気や害虫が発生しにくい環境が形成されるのです。さらに、根粒菌や菌根菌などの有用微生物の拡散を助けるはたらきなども知られています。

ミミズの体の窒素含量(乾物あたり約9%)は、土壌(黒ボク土;同約0.4%)や作物(同約2%)に比べて高いため、ミミズの死体は速やかに分解し、窒素は土壌に吸着され作物の養分となります。

このように、ミミズに代表される土壌動物には栽培上重要なはたらきがあります。

※他のはたらきは「大地の鍬-ミミズのはたらき(1)」をご覧ください。

参考資料

藤田正雄(2006)土を育てる生きものたち(1)大地の鍬-ミミズのはたらき(1).ながの「農業と生活」, 43(1):9.
藤田正雄(2006)土を育てる生きものたち(2)大地の鍬-ミミズのはたらき(2).ながの「農業と生活」, 43(2):9.
中村好男(1998)『ミミズと土と有機農業』, 創森社.

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