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考えたこと、読んだ本

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廃林のコモンズ アナ・チン「マツタケ」

マツタケ アナ・チン みすず書房 2019. 9. 17 2016年に刊行されて人類学の各賞を受賞した、文化人類学者アナ・チンによる、マツタケの採取と流通についての本。米国オレゴンのカスケード山脈には、マツタケを探す移民たちのテント村がある。このキャンプの観察に始まり、バイヤーたちの取引、海の向こうの日本市場、さらには雲南や京都のマツタケ狩りまで、広くその売買の世界をたどっていく。サプライチェーンの各地を移動していく取材の方法は、マルチサイテッドな民族誌と呼ばれている。

    • よく当たる占いbot

      1 かつて勤めていたネットの会社で、占いをするチャットbotのサービスを作ったことがあった。会社はメッセンジャーのアプリでよく知られていた。アプリ内の課金コンテンツとして、占いの企画が選ばれたのだった。  若いディレクターの丸美さんが、襟の大きなシャツ姿で開発フロアに現れ、承認印が押されたばかりの提案書をめくって説明してくれた。企業アカウントによく利用されているbotを、占いに使い、いろいろな占い師の中から選んでチャットできるようにする、というのがおおよその内容だった。丸

      • 武蔵小杉の浸水

        台風19号の後の武蔵小杉のタワマン叩きは、ネットにおける人の変化の早さを感じさせる出来事だった。大型台風の状況を案じる空気が、一転してタワーマンションが集まる街に対する反感という別のものに変わってしまっていた。 12日の夜、住んでいる高田馬場のあたりも大した被害はなかったが、Twitterを見ると、武蔵小杉駅前が冠水している写真が流れていた。浮き輪を持ち出した若い人が、水たまりに入って泳いでいた。かなりリプライがついていて、バカだなと呆れる人や、下水からあふれた水だから不衛

      廃林のコモンズ アナ・チン「マツタケ」