どうみても自殺

「あー」
「あーですね」
「自殺だな」
「自殺ですね」
「どうみても自殺だな」
「どうみても自殺ですね」
「じゃぁ行くか」
「待ってください警部」
「どうした」
「HDDレコーダーが録画をはじめています」
「それがどうした」
「これから自殺しようとする人間が、録画予約をするものでしょうか……？」
「……」
「……」
「毎週で録画予約している番組なんじゃないのか」
「なるほど、それもそうですね」
「じゃぁ行くか」
「待ってください警部」
「どうした」
「冷蔵庫でビールがキンキンに冷えています」
「それがどうした」
「これから自殺しようとする人間が、ビールを冷やすものでしょうか……？」
「……」
「……」
「去年からずっと冷蔵庫にあるんじゃないのか」
「秋味とか冬物語とか入ってますね」
「じゃぁ行くか」
「待ってください警部」
「どうした」
「この人、食べ残しにラップをかけています」
「それがどうした」
「これから自殺をしようとする人間が、食べ残しにラップをかけるでしょうか……？」
「……」
「……」
「ラップをかけたあとで、気が変わったのかもしれないぞ」
「結果、自分へのお供え物みたいになりましたね」
「じゃぁ行くか」
「待ってください警部」
「どうした」
「ガソリンを入れたレシートがあります。満タンにしていますね」
「それがどうした」
「これから自殺しようとする人間が、ガソリンを満タンにいれるでしょうか……？」
「……」
「……」
「増税前の駆け込み需要じゃないのか」
「うっかりブームに乗ってしまったんですね」
「じゃぁ行くか」
「待ってください警部」
「どうした」
「手帳に合コンの予定が向こう三ヶ月ビッシリ入っています」
「それがどうした」
「これから自殺しようとする人間が、合コンの予定をビッシリ入れるでしょうか」
「……」
「……」
「これだからリア充は」
「全くです」
「じゃぁ行くか」
「待ってください警部」
「どうした」
「トイレがキレイに流されています」
「それがどうした」
「これから自殺しようとする人間が、トイレを……」
「……」
「……」
「流すだろう」
「流しますね」
「じゃぁ行くか」
「待ってください警部」
「どうした」
「この人、背中を刃物でひと突きされて死んでいます」
「それがどうした」
「これから自殺しようとする人間が、手が届かない背中に刃物を立てるでしょうか」
「……」
「……」
「無くは無いよね」
「あるっちゃありますね」
「じゃぁ行くか」
「行きましょうか」
「どうみても自殺だなー」
「どうみても自殺ですねー」

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