生まれたときから毛むくじゃら

思春期を迎えヒゲが生えてきた息子が「なんで今さら生えてくるんだ」と言う。

確かにヒゲはめんどくさい。毎朝剃らないとぼうぼうになっちゃう。思春期になり、本人の意思とは別にその面倒さが新たに加わるのは本人も不本意であろう。あと思春期だからヒゲ以外にもあちこちに毛が生えてきているだろう。

それにしても「今さら」とはどういうことなのか。もっと早く生えてきていいってこと……?

詳しく話を聞くと、「これまでヒゲなしでも十分生きてきたのに、なんで今さら生えてくるのか」ということだった。生まれてこのかた、そこに毛がなくても楽しく暮らしてきた。なぜ今になって毛が必要なのか?と。

確かにそうだ。髪の毛や脇毛などは「急所を守るために生えてくる」と言われている。でもそれなら、生まれたときから全ての毛がボウボウに生えているべきだろう。生まれたての赤ん坊なんて急所だらけである。守るべき大切な存在だ。本来なら毛むくじゃらで生まれてきていい。

で、成長とともに自分自身の体が守れるようになり、脳が「大丈夫」と判断した場所から毛が抜け落ち、生えなくなる……という順番であるべきじゃないか。足し算ではなく引き算である。

その世界では成長とともに体毛が抜け、青年期には全身がツルンツルンになる。そして、年老いていくにつれ体は再び毛に覆われていくだろう。

まるで繭から生まれ、繭に還るようだなと思う。真っ黒な繭だけど。

スキを押すと「今日のラッキー路線図」で表示されます。