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【書き起こし:前編】未発見の才能サミット:基調パネル:「INNOVA人材」の活躍がこれからの競争力になる

本記事は2021年9月29日開催の未発見の才能サミット、基調パネル:「INNOVA人材」の活躍がこれからの競争力になるのパネルディスカッションの文字起こし【 前編 】です。

後半は こちら

< 登壇者(敬称略) >
株式会社デジタルハーツプラス 代表取締役 畑田 康二郎
ロート製薬CEO付兼未来社会デザイン室長 荒木 健史
内閣府 科学技術・イノベーション推進事務局 審議官 合田 哲雄
株式会社SPACE 代表取締役 福本 理恵

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1. セッション主旨・デジタルハーツプラス 畑田氏 自己紹介

■畑田氏
 株式会社デジタルハーツプラス 代表取締役の畑田康二郎です。本日はよろしくお願いします。

 本日は、イベント全体を通じて「仲間作り」というのが最大のコンセプトとなっておりまして、いろんな論点から、有識者といいますか登壇者の方にお願いしているんですけれども、実はこの特にその中でも基調パネルのコンセプトはですね、もうすでに仲間を集めてみました っていうコーナーでありまして、この僕がやろうとしているデジタルハーツプラスのこのINNOVAはですね、いろんな異端な人材を活躍させる拠点を作るっていうところについてですね 発信して行く上でどういうメンバー集めたらいいかなって考えたときに最初に顔が浮かんだ面々が実は今日揃っています。

 本当にお忙しい中、都合合わせていただいて、大変もう感謝感激なんですけれども、最初に、先ほどこのイベントの趣旨と言いますか、INNOVA初台のコンセプトのところはお話させていただいたので、パーソナルな話も含めて最初に私からお話しさせてください。

 元々、経済産業省で10数年間役人として働いておりまして、さらに遡るとその前は大学ではエネルギー変換科学を専攻していました。何も考えずに僕はもう研究者なるのかなと思っていたんですけど、一研究者として人生を終えるのは僕の飽きっぽい性格からして無理があるなと思いまして、むしろ研究者を増やしていくためにはってことで文部科学省に興味を持ったんですが、うろうろしている間に経済産業省というもっと面白いやつに捕まってしまいまして、日本経済をよくすることを一緒に考えようと言われてですね、気がついたら経産省にいました。

 その中で10年間僕がやってきたことを一言で表すなら、実現したい未来をより早く実装するための加速みたいなことをずっと取り組んでいたなという風に自分の役人人生を総括しています。

 産業構造をどう変革していくか、新規事業をどう創出していくか、ほっといてもそういうことは起きていくんですけれども、そこに政策介入し、いろんな装置作っていく、法律や制度を変えていくことでこうあって欲しい未来がもっと早くやってくるようにする取り組みを10年間ずっとやってたんですが、だんだんですね、私もこの性格からして自分でやりたいなという風になり、特に僕が一番取り組みたい社会課題が引きこもりや発達障害の方が居場所がないというのは本当にどうにかしなきゃといけない、待ってても多分誰もやらないので、僕がやるしかないってことでですね、3年前からやってきまして、サイバーセキュリティ人材の育成を一つの軸に、なかなか居場所が見つけられない、引きこもり歴がある、発達障害だっていう方を積極的に雇用して戦力にしていく、そういう取り組みをすごく頑張ってきました。

 実はその頑張ってきたことも、ずっとこのメンバーには今こういう風にやってますが大変です、とか話しながら進めてきたので戦友だと思っておりまして、ここの貴重パネルではそういったよくわかっている仲間で話を盛り上げていければなと考えております。

 その中でも、同じ時期に偶然うっかり経産省内に入り、まさに経産省内異端人材としてうろうろしていて、これまた偶然示し合わせたわけではないのですが全く同時期に卒業し、かたやデジタルハーツ、かたやロート製薬にいき、異端な取り組みをしている荒木さんに最初バトンを渡し、話を膨らませてもらえればなと思います。

2. ロート製薬 荒木氏 自己紹介

■荒木氏
 ありがとうございます。もうパーソナルな部分も含めてご紹介いただいたので、だいぶ話しやすくなりました。

 最後に触れていただいた通り、畑田さんとは経産省で同期でかつ本当に同時期に、地球から離れた宇宙関係の部局にいたんですが、その後一瞬違うところに行きつつも、本当に7月のタイミングで同時期に、事前のすり合わせも全くなかったんですが辞めたというのがあって、その後はやめたからそれっきりではなく、経産省でグレーターミーティングみたいなのがあり、野に放たれても引き続き公の性格を帯るというのが一部あると思っていまして、もはや彼とは盟友ということで僕はありがたいなと思っています。

 デジタルハーツさん全体としては、今e-Sportsの関係で産業振興を中心にやらさせていただきつつ、一部教育を軸に協業という形を取らさせていただいております。

 いくつか記事にもお書きいただいたメディアもございましたが、大阪市の公立中学校で、デジタルハーツさんの所属のみぃみさんというプロゲーマーの方にもご登壇・ご登場いただいて、いわゆる公立中の総合の時間を活用してe-Sportsの授業を実施、伴走させていただいた経緯が一つございます。

 そこでの大きな気づきの一つとしては、生徒自らがゲームに対してどういう認識を持っているのかなという点を4ヶ月ほど話をさせていただいたところ、生徒自らが「ゲームは本当に悪なのかな?」「これって元々教育のツールなんじゃないのかな?」といった疑問を持ち始め、結局e-Sportsの大会に閉じずに、最後は研究発表という構成で実証したのが、実は今年の2月末です。

 その結果、先生たちからの受け売りの一つですが、語弊を恐れずにいうと、これまで地味だった子がすごいプレーアップされたりとか、いきなり司会やり始めたとか、輝く生徒が変わったなどコメントもいただいたりしました。

 あとは研究発表の内容もすごい秀逸だと思ったのは、「なんでも使い方を誤れば悪になってしまう」というものが、極めて印象的だったなと思っています。

 ゲームについても、良い面が認識されないのはなんでだろうという点では、トラブルなど悪い面がわかりやすく認識されやすい。他方で、いわゆる良い面が、今回非認知スキルをテーマにしていた部分もありますが、そういうところにあるのではないかと結論づけていたのが、すごい印象的だったと思います。

 そして、ここは後半の合田さんに繋がるのかもしれませんけど、昨今のOECDで提唱されているような生徒エージェンシーのような、自分で自ら何かを発見をして探求する、追求するみたいな姿勢っていうのが、実はこのe-Sportsの授業の中でも極めて具現化できてきているのが、僕自身良い意味で痛感をした場面でもありました。

 そのe-Sportsをきっかけにしながら、今後海洋生物環境ですとか、ちょうどお話を別途いただいた演劇においても何かしらの非認知スキルと繋がる部分がありそうで、そういう様々な分野で、かつ子供達がなりたい職業ランキングに近い、という領域とうまく紐付けながら、いわゆる教育と今回の雇用・就労の出口部分が重要かなと思って、一気通関にできるといいのかなと、強く思っています。

 そういった経験をなぜかロートで得ながらですね、本日の11時にリリースをさせていただいたんですけれども、10月1日付ですが、「ロートこどもみらい財団」を設立をさせていただくことになりました。

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 ホームページが10月1日にwebサイトもオープンです。

 コンセプトは三つほど傾げていて、一つはやっぱり「個性の尊重」というところと、あとはロート製薬は「目」という印象もありますが、他方で「目」という生物的な話と、見極める力と言うのを持っているところを考えると、その「見極める力」を育むという点と、やはりコロナという全然何もかもわからないこの不透明極まる未来社会をどう生きるかという観点の「レジデンシー」というのが大事かなと、この3つを軸にコンセプトデザインをしています。

 ロート製薬に標語がありまして、「難しいからこそチャレンジする」ないし、「社会的健康というのを実現する」そういったキーワードにしているものですから、それらを紐解きながらデザイニングをしたと言うのが背景になっています。

 先ほどのOECDに絡めると、ラーニングコンパスで社会的ウェルビーイングみたいなものを提唱されておりますので、そのような点どもリンケージ、リンク張っていけるかなと思っています。

 内容的には、このあと福本さんからお話いただけるかもしれませんが、いろんな環境下で個性を出しきれていない子がいるな、というのをこれまですごく感じています。

 そういった、すでにもし何かやりたいことがあれば、そういう子に対するいわゆる助成やメンターとの出会いというのを提供させていただき、なんか俺やりたいことがあるんだよな、みたいな子に対しては、プログラム、例えば自然教育などのプログラムを提供させていただいたり、あとはコアとしては横の学び、同じ境遇の子供達が集まるコミュニティーづくりが大切になってくるのかなと思っています。

 このあたりもWHOが提唱するようなウェルビーイングで言うと、身体的な所に限らず、精神的なところ、社会的なところのウェルビーイングというところにあと時間あるかわかりませんけど、極めてプライベートな話で申し上げると、自分の子供を見ていると学校自体にも純粋な指導要諦というよりかは、保育という心が必要なのかなと常々思っています。

 そういった自分ごととの関係で考えて、かつこの財団の代表を担うに至って、自分のスキルセットに足りないものとして感じ、昨今保育士になりました。その保育士と面も生かしながら今後、運営をしたいと思っていますし、まさに財団の設立に至っては、今おられる福本さんから多大なご尽力、サポートをいただき、ロケットでご経験された内容もふんだんに盛り込ませていただきました。改めて御礼を申し上げつつ、内容面については引き続き今後もご相談をさせていただけることを、とてもありがたく思っております。

 少し時間超過しておりますが、ここで福本さんにバトンタッチをさせていただいてもよろしいでしょうか。

3. SPACE 福本氏 自己紹介

■福本氏
 はい、ありがとうございます。バトンを受け取らせていただきます。
今日無事に、荒木さんとご一緒している「ロートこどもみらい財団」も立ち上がったんですが、私自身は株式会社SPACEというという教育ベンチャーを昨年の夏に立ち上げました。SPACE自体は好奇心と情熱で作動していく、究極に自分らしさを追求する学びと仕事をどうやって作れるか、そこに切り込んでいける、そんな会社を目指して活動しています。

 スペースって宇宙って意味もあると思うんですが、そのスペースを産んだロケットというのがありまして、ロケットの子ども達っていうのがですね、 私の人生にこう好奇心と情熱を取り戻させてくれたような子供達だったんですね。

異才発掘プロジェクト ROCKET

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 これは2014年に日本財団さんが初めて資金提供してくださって、東大先端研で始まった不登校向けの教育プロジェクトだったんですけれども、とにかく不登校の子供達の中にユニークな子供達が眠っていると、そういう子達がなんか自分でドローンを組み立てたり、自分でなんか投資を始めたり、なんか大人でもやらないようなことをやっているぞ、というところに着目して財団さんが投資をしてくださった形で立ち上がったのがこちらです。

 ここにきてた子供達、本当に凸凹なるユニークな子供たち、そして本当に愛着を持てるですね、生きにくそうな子供達が集まってきてまして、時に繊細で感受性が強すぎると言いますか、いろんな感覚過敏も含めて繊細であり、なおかつだからこそ必死に生きている躍動感のある、そして大きな揺らぎですね、揺らぎあって、とにかく人間っぽい、生っぽいような子供達が集まっていたなという印象があります。

 その中には例えばこういうキノコですね。ずっと研究しながら、きのこ研究してたと思ったらドラマを自分で一人で全部作り上げてしまうとか、音楽も全部作っちゃうというようなそんな才能の発揮の仕方をしている子もいれば、写真をずっと撮りながら、自分の見ているフィルターの世界を私たちに見せてくれて、それ自体を仕事にしたいと言ってですね、大好きな鯉のぼりっていうものを立ち上げていく、鯉のぼりブランドを立ち上げていくっていうようなことをしている子もいましたし、あとは北斎に小学校の時に見せられて、渋いなと思うんですけども、小学校の時に魅せられてそのまま彫師の道に行くっていうことで弟子入りをしてしまった今はもう高校生になった子もいますし、読み書きの書きの部分が自分の名前さえも書けないんだけれども、こんなに緻密な絵が描けてしまうっていう、描(えが)くっていうことと文字を書くっていうことが実は私たちの中では違うんだっていうことを教えてくれた子供達がいたりですね。

 あとは引きこもってずっと爆破映像ばかり作り続けて大丈夫なのかなっていう、なんかこう危ないことに繋がらないかなって思いつつ見守ってたところ、実際にそのスキルが大人の人以上に伸びてしまい、初の仕事がGUのプロモーションムービーの製作に繋がり、今は音楽家のミュージックムービーを作ったり、あとNSTで投資90万ぐらい描けて自分のアートを売るっていうのを、そんなチャレンジしてる子がいました。

 彼らは本当に、認知や性格の偏りですね、あとはこだわったら強くて強くて譲らないっていうこととか、集中しまくるっていうそういうことで、学校の中にやっぱり入っていけなかったんですよね。

 だから私たちはとにかく興味を持てるもの、そして日本全国をフィールドにし、また、時には世界に出て行く形で学びの場を広げていく生き方と学び方をチャレンジできる、そういう場を提供してきたかなと思います。

 ユニークな子供達が育つっていうのはやっぱり枠を外したところの自由な環境、そして既存の評価ではなくて新しい評価と言いますか、自分が軸になってく評価を子供達がちゃんとトライアルの中で自分の事を見つめ直していくようなそんな評価が必要なんじゃないかなと思ってます。

 学校の枠は外して、教科書なし、そして時間制限もなし5年間ずっとやったプロジェクトもありますし、目的さえなくっていきなりインドに連れていかれてしまうっていう旅なんかの、でレジリエンスを上げていくっていうことをしたんですけれども、軸をこうずらしていく、当たり前の社会だと軸を固めていってきちんと守っていくことを決めていくだと思うんですけど、ロケットは逆に軸をぶらしながら既存の価値観を問うっていう人生の哲学を自分たちで作っていくということをやっていたのかなと思います。

 そのなかで好奇心と情熱のままに自分らしい道を見つける。その人生のトライアルができるような場がやっぱり日本にもたくさんあってほしいなということでスペースを立ち上げたんですよね。

 今スペースでやっていることは異才から多才っていう、異才じゃなくてもいいんじゃない、個人個人一人一人違うっていうものをちゃんと見える化していくことでその子にあった環境っていうのがマッチングできるんじゃないかっていうことで、多様な環境、学習環境とマッチングをしたり、あとはこういう面白いプログラムをですね開発して、オンラインとオフライン含めてですね、地域が交流しながらながら子供達もいろんな人たちと交流して学び方と生きたかを学べるというそういう場所を作っています。

 一昨日、これもローンチしたんですけど、鎌倉市さんと一緒に不登校を、不登校傾向にある子供たちに新しい学びをロケットのような学びを提供するっていうのが自治体でも始まります。

 こういう形になってくると選ばれた子供たちということではなく、全ての子供達が自分の才能ってどこにあるんだろう、逆に苦手なことってどうやって避けたらいいんだろうっていうことをトライアルできる場が日本中に広がってくんじゃないかなと思っています。

 最後にすみません、未発見の未発掘の才能を見出すために私が思ってるところはやっぱり発掘の旗を立てる、今日畑田さんが発掘の旗を立ててくれて、こういうトピックスをやるから集まってくれって言う、これってやっぱキュレーターの役割だなと思っていて、そこにトピックスがたたないと、そういう事が始まってるとか、そういうものを求めてる人がいるんだってことに気づかないんですよね。

 それが立つことによってラベルがなかった才能にこうフォーカスが上がっていくということがまずあるんじゃないかなと思います。その次にやっぱり個才とその多様な環境が本当に合ってるのかどうかいうことマッチして見極めていくこの“マッチンガー”というマッチングをやり続ける、マッチンガーみたいな人たちが必要なんじゃないかなと。最後にその才能、本当に多様な才能ですね、そういうものを生業に変換していくようなプロデューサーっていうものがいた時に初めてその子達は自信を持って社会の中で活躍できる人材に変わってくのかなという風に思います。すみません長く喋りすぎました。

■畑田氏
 ありがとうございます。もう結論出ちゃった。もうあの本当に、福本さんがロケットやってる時代からの付き合いですので、どれだけの数の異才たちと向き合ってきたかというのをすごく蓄積を感じる良いプレゼンテーションでした。ありがとうございました。

 僕ら3人異才発掘集団がですね、いろんな地を這ってやっている活動を内閣府でイノベーションを考えられている合田さんに届けるというのが今日このパネルの最大の目的だったので、ここまでの話を踏まえて、ぜひ合田さんの取り組みなども紹介していただきながらお話をしていただけると有り難いです。

4. 内閣府 合田氏 自己紹介

■合田氏
 はい、ありがとうございます。内閣府の合田です。内閣府に今いますが、元々は文部科学省に務めておりまして、2008年それから2017年の学習指導要領の改訂などを担当してました。私は92年に旧文部省に入ったのですが、当時は正直に白状しますと、やっぱり政府、中央政府、地方政府は公教育に全部責任をおうんだという風に思っていました。ガバメントソリューションで全部できると、教育っていうのは市場に任しちゃだめだと、マーケットソリューションではダメで、ガバメントソリューションじゃなきゃいけないという風にむしろ思っていました。

 指導要領もそういうつもりで、責任感ある意味で責任感を持ってやってきたんですけども、私は今日参加なさっているお三方それぞれですね、お話を聞いてすごい衝撃を受けました。

 まず、畑田さんがデジタルハーツでおやりになっていることの中で、畑田さんに言われたのは、まず畑田さんも荒木さんも霞ヶ関、かつての霞ヶ関仲間ですから、ゲームのデバックとか、エシカルハッカーというのは霞ヶ関にいるこの受験体制の勝者には絶対に出来ませんと、短期間でまんべんなく点数を取る、プライオリティをパッと決めて判断して組み立てていくっていうことのそういう、そのプログラミングをしている人間には、でゲームのデバックやそれからそのエシカルハッカーという仕事はできませんと、アンテナ高くちょっとした変化だとか人には見分けられないような変化を見つけることができる人じゃないとできませんと、霞ヶ関の人間は絶対できませんと言われました。

 これはものすごく大きな衝撃でした。それから福本さんからはですね、要するにその学校に通学して学んでいる子、それからどうしても学校に行きたいと思ってるけども行けない子、それから自覚的に自分は学校に行かないと思っている子、その子供達の認知の特性を調べてみると明らかに傾向の違いがあるという風に教えていただきました。

 それから荒木さんからはですね、この間先ほどはお話がありましたけれども、e-Sportsの関係でやっぱり、e-Sportsを通じて見てその子供たちが、何と言うんでしょうかね。

自己肯定感を回復させたかと、ゲームばっかりやってっていうのじゃなくて、ゲームを通じて人と繋がっていて、しかもいつも教室では目立たない子供がこんなに生き生きと司会をやったりしているというのを見て、まず先生がびっくりしたという話を聞きました。これらに共通してるのは、結局その学校、日本の学校教育制度の近代学校教育制度150年間経っているわけですけれども、

要するに紙の教科書、活字というものを先生の授業を聞いて理解をして、自分でノートを取って整理をして、それをそのペーパーテストでアウトプットする。しかも先生が採点しやすい、マルバツで採点しやすいことが聞かれるなということを戦略的に理解して、それを先取りしていくという人の能力が評価されていたシステムだったんだなということを極めて痛感したわけで。

 私にとっては自分の人生はなんだったんだぐらいに根本から覆されるようなことではあったんですけれども、ただ要するに、そのこと自体がやっぱり私はこれからの学校教育の在り方を考えていかなければいけない重要なポイントだと思っています。

 これまで日本の学校教育がこういう風にやってきたのはですね、決して先生方がそうやりたいと思ってきた訳ではなく、大変失礼な言い方をすれば、元経産省のお二人を前に教育を解くのは恐縮ですけれども、むしろその社会とか企業がですね、工業化社会の中でゴールを見つけなくていいから、与えられたゴールを効率的に達成できる人間が欲しいと、そういうホワイトカラーが欲しいと、そういう工場で働く人材が欲しいという話で、そうなってきたんです。

 しかし本来はですね、その日本の学校教育というのは、やはり子ども達の一人一人の認知の特性や関心を踏まえ、それを伸ばしていきたい、それからその対話とか協同を通じて、意見は違うけれども納得感を形成して前へ進んでいきたいということを大事にしてきたので、私としてはその事に立ち返ってですね、日本の教育の可能性を引き出してみたい。

 そのためには、先ほど申し上げた通り特定の能力、素早く正確に解く力だけを重視する学校教育の、成功してしまったが故の慣性みたいなものをどう乗り越えていくのか、それからやはり学校種や学年や学級、教科というこの縦割りの構造をどうしていくのかという点。

 その他先ほど話があったように、非常にアンテナの高い子供、じっとしていられない子や友達と仲良くできない子など、辛い思いをしなきゃいけないようなこういうバイアスをどうしていくのかと、これを乗り越えなくてはいけないなという風に思ってまして、

 実は私が今内閣府にいるのは、もうはっきり申し上げて、ご案内の通り、あらゆる社会的な課題について、ひとつの省で解決できることは何一つなくなっています。

 それは多分、同じことは一つの学校とか一つの教科で解決できることはもう無くなっているということと同じだと思っているんですが、内閣府っていうのはありがたいことに声をかければ、関係者が「がっ」と集まって「がっ」とソリューションを出すということができる役所です。


 私は年末、年度末に向けて、今申し上げたことをするために、日本の学校教育の中におけるリソースと時間、それから人材、財源、これの再配置が必要だという風に思っています。

 例えば時間っていうのは難しいように聞こえるかもしれませんけど、教育課程、朝8時半に出て来て、4時半まで6コマありますと。45分の授業をみんな同じように聞きますという時間の使い方で本当にいいんですか、と。

 場所もですね、あの空間の中に全員いなきゃいけないんですか。今は一人一台の情報端末を配られた時に、情報端末をひとつのツールにしながらも、そこは学び方について時間軸も空間軸も多様化するんじゃないですかと。ただ、その場合にはやっぱり先ほど申し上げたように先生方が採点しやすいことだけではなくて、まさにロケットなんかでおやりになった探究活動の成果っていうのをきちんと評価をするっていうことが、これを問われているのが大人です。大人がそれをちゃんと理解して評価しなきゃいけない、大人が問われているところですね。

 あるいはギフテッドの子供をどうしていくのか、オルタナティブスクールをどのようにしていくのか、というような話ですとか、それからやはり今の学校が、教育学部を出て18歳で先生になろうと思い、22歳で先生になり、60歳まで勤め上げるという人生モデルが中心にできているので、これをいかに免許制度を変えることによって多様化していくかという点もあります。

 それから公立の小中学校には年間10兆円という、かなり大きなお金が国と地方で流れているんですけれども、これら全て紙ベースで構築されていて、かつ、あの授業モデルが前提になっていますので、それをやっぱりどうアロケートしていくかということを、これは省を超えて取り組む必要があります。これは明日すぐ授業が変わるとは私も思いません。

 ただやっぱり、デジタル庁もでき、デジタルコンテンツプラットフォームもできる時代に、やはり5年とかを見据えながら、それに向けてどう変えていくのかということを府省横断でやっていきたいと思っています。

 教育行政の観点で言えば、5年後っていうのはちょうど次の改訂が行われている年なので、次の改定こそは、学ぶということについて時間軸も空間軸も多様化しているということを前提に組み立てていくことができるようにしたい。

 ですが、そのことをどう生かすかっていうのは、今日お話を頂いお三方の取り組みとか実践とかっていうのを織り合わせていかなきゃいけないという風に思っておりますのでぜひこれからもご指導頂きたいと思っております。長くなりました、ありがとうございます。

5. セッション後半はこちら

同セッション後半は こちら


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