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何が原因でアイドルヲタクになったか

 2024年1回目の投稿は昨年の下書き(備忘録)から、ヲタクになった理由。
相変わらずだらだらとした長い文章ですが少しお付き合い下さい。


 きっかけは10年少し前の後輩の鬱の発症だった。

同じ部署には居たにしろ、業務内容は少し違って直接の関わりはない競馬仲間の後輩が、調子悪そうだなと思っていたら鬱と診断されて会社に来れなくなった。

連絡が取れるのは会社の総務部くらいで、僕らからのメールには返信も来ず、携帯を切っている節もみられた。

3ヶ月くらい経った頃、心療内科の先生の社会復帰プログラムを受けているという話が回ってきたので、それならそろそろ連絡がつくかな?と思い、メールをしてみても、まだ返信は返って来なかった。

半年程経った時、それまでメールを送ってた内容が「気晴らしに競馬に行かないか?」と競馬場に誘う話ばかりだったので、少し趣きを変えてみた。



「今週末のAKB48の握手会に行かないか?」




「行きます」


返事が返って来た!半年以上振りのメールだ!

嬉しかった。

だが、慌てた。

握手会に行こうと誘ったにしろ、握手会がどんなものか知らなかった。
ネットで調べて、とりあえず僕の分、彼の分と、初回限定盤のCDを2枚買った。
「ギンガムチェック」という曲だった。
(調べてみると2012年10月28日の握手会)
中にキラキラとしたイベント券が入っていた。これを持って行くのだなと分かった。

唐突のメールの理由は、カラオケに行くと彼は、「ポニーテールとシュシュ」とか「ヘビーローテーション」とかをよく唄っていたからだ。
逆に僕はAKB48は聴いたことが無く、AKB48の曲は彼のカラオケでしか聴いたことがなかった。

そんな理由だけでAKBに興味があるのではないか?と思ったことと、ちょうど京セラドームで握手会が開かれると聞いたことで、これは良さそうだと思って握手会に誘ったのだ。

色々とネットで知識を得た。
・CDに入っていたイベント券を当日整理番号券に変える。
・9時の開場と同時に入ると良い席でミニコンサートが観られるから行くのは早い方が良い。
・でもそのミニコンサートは12時くらいからなので時間を潰す方法が必要。
などなど。

なので集合時間は最寄り駅に8時半にした。

3時間も時間を潰さないといけないのか。まぁ何か話してるうちに時間は経つか…と考え、それよりは彼との会話をどうするか…と別の心配事が頭をもたげてきた。

当日。待ち合わせの時間より少し早く駅に着いて彼を待つことにした。

時間になっても彼は来ない。

あー、これはやっぱりダメだったか。
家を出るときに玄関でしんどくなる人もいるって聞いたことあるなー…と思い巡らしていると、

「おはようございます。人、多いッスね。」

と、後ろから声が掛かった。

京セラドームは地下鉄のドーム前千代崎駅が地下鉄の最寄りではあるが、もう一つの駅が近くにある。彼は難波から来るので阪神なんば線のドーム前駅から来たのだった。

「おお、おはよう。元気そうやな」

外見も体型も言葉遣いも変わらず、ごくごく普通に話し始めた。

「どうや?調子は」

「まあまあッスね」

「どこで並ぶんかな?みんな歩いて行くあっちかな?」

ぎごちなくなり過ぎて独り言のような感じで話す。

ドームにはすぐ着いて並ぶ列も分かったが最後尾が見えない。
ドームの横に何列もの折り返しがあり、辿って行くと階段から下りて隣の建物の方に伸びている。

「凄いッスね」
「どこまで行くんやろな」

ようやく最後尾に辿り着いたが、次から次へと後ろに人が並び列が伸びて行く。

「前の方は始発ですかね」
「そうやろなー」

まだ様子見のような会話しかできない。

開場の9時まではすぐだったので、少しずつ列が動いて行く。
少し歩いては立ち止まり、また少し歩く単調な時間が過ぎる。

やっと入口になり、イベント参加券と引き換えにチケットを貰う。この時は普通のコンサートチケットのような参加券だった。券面に座席番号が書いてあるのを覚えている。
『アリーナ』の印字にワクワクし、行ってみると、アリーナ後方だったが、ステージが正面で見やすそうだった。

「12時までどうする?何か食おうか」
と彼を誘いドームの売店に向かった。

待っている間の記憶は抜け落ちてて、何を話して2時間持たせたかは覚えていない。

ミニライブが始まった。
ライブで立つのだけは他のとこと同じだが、サイリウムは持っていない。

テレビでは見たことはあるが、初めて生で見るアイドルにドキドキした。

セットリストは

1.フライングゲット
2.真夏のSounds good!
MC
3.大声ダイヤモンド
4.ギンガムチェック
5.誰かのために

だったようだ。

終わった後、椅子に座り込みボーッとした。
あー、ええもん見た。
と感慨にふけっていたら、

「握手、誰行きます?」
とレーン表を見ながら彼が話しかけてきた。


アメブロ【AKB48祭り】『ギンガムチェック』
 関西エリア 参加メンバー・詳細決定!!より


「この中で一番卒業が早そうな子にしようと思うんです」

この年の春に卒業発表をして8月末に前田敦子さんが卒業している。
アイドルに卒業という選択肢があったんだと気付かされた年でもあった。

「好きなのは麻里子様なんですが、まだ居そうなので⑦番にします。」

⑦は板野友美、横山由依とある。

なるほど。と思うのと、横山由依さんはYouTubeの昇格時の動画で結構気になっていたので、

「一緒のとこ行くわ」

と答えた。

囲まれたテントがズラリと並び、車椅子、子供と順番を待ち、何も分からないまま列に並んだ。

テントの入口に着いた。
係員に券を渡すと、手をヒラヒラとしている。
?何のこっちゃ?と思っていると、
手を見せて!と言われた。

あー、そういうことか。
と、手をヒラヒラさせると、

どうぞ!と左に誘導された。

はい…どうも…と、左を見ると・・・

そこに、板野友美が居た。

ひぇっ!!…

たぶん、めちゃめちゃ驚いていたのだろう、

クソ笑われた。手を叩いて笑っていた。

こちらはそんなことお構いなしで、そのまま何も言えず、顔も見れず下を向いて握手をして、
そのまま隣に移って、下を向いたまま握手をして離れ…

ギュッ!

ハッ!強く握られた。

顔も見れてないけど横山由依さんが離れ際に強く手を握ってきたのだ。

これは何かこんな技があると聞いたことがあるぞ。

と思いつつ後ろを見ると、握手終わりの嬉しそうな彼が居た。


早い時間だったが、そのまま難波に飲みに行った。
正確には難波の場外馬券売場でその日の天皇賞の馬券を買い、それが当たるのを期待しながら近くの居酒屋で飲んだ。(場外馬券売場の近くにはテレビで中継を流している居酒屋がたくさんある)

馬券は外れたが、1枚のイベント参加券で、ライブを観て、アイドルと握手をして…と、こんなにお得で凄いものがあったのだ!と賞賛しながら飲んだ。


結局、彼の鬱に関しては、この日は全く話題に上げていない。

それが良かったのかどうかも分からないが、彼はその後、少ししてから会社に復帰した。

その次のAKB48のシングル『UZA』は、僕らの話を聞いて興味を持った会社の仲間とその家族、5家族10人超で参加した。全員スタンドで観た。

娘さんがいる家庭ばっかりだったが喜んでいた。
そいつらも子供が気になっていたがシステムが分からず行けなかったらしい。


あれから11年。ヲタクとして残っているのは主戦場をSKEに変えた僕と、UZAの握手会に参加して、主戦場をNMBに変えたもう1人だけなのは少し寂しい。


アイドルヲタクになったのは、元はと言えば、病気になった後輩を楽しませようとした企画がきっかけだったのだ。


 鬱だった彼は、今は違う部署だが、新年明けの今日も元気に出社している。

「去年いっぱいで推しが卒業してなー」
「まーだやってんすか?」
と笑いながら話している。

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