見出し画像

中国とラッパー・河南说唱之神の注目曲「工厂」

2024年5月5日。中国で、動画共有サイト『bilibili』にアップされた1曲のラップミュージックが、公開わずか3日で再生数が200万回に到達、現在までに再生回数およそ450万、高評価も30万を超えるなどして注目されているみたいですよ。その曲&MVが、YouTubeでも公開されていました・・・!

中国のラッパー・河南说唱之神さんの新曲 「工厂」(日本語で工場の意味)

河南说唱之神 「工厂」 官方MV

ラッパーの名前は、河南说唱之神(読み方はたぶん、ふーなん・しゅおちゃん・ちー・しぇん)。日本語にすると、”河南ラップの神”的な名前ぽいですよ。曲名は「工厂」で、日本語で”工場”って意味みたいです。ビートは、河南说唱之神さんと、これまでも共同で曲を作ってきたっぽい音楽プロデューサーのJohn Liuさんの2人で、子どもたちの声やストリングスが入った幻想的&中国感あるエモラップ系ね。リリックはChatGPTによりますと、”工場から出る煙が星を覆い尽くした”的な歌詞で始まり、”幼いとき川の水はあまりキレイじゃなかった 今では金と病気をもたらす”、”お母さんはボクに良い環境を与えられなかったことで自分を責めている”、”ボクは幸運にもその地から逃られた 動けない人たちはその地に釘付けとなった ”、”彼らは運命を受け入れている”、”ボクはここが好きではない ただここで生まれただけ”とか、生まれ故郷である河南省の労働者の厳しい生活や環境をラップしているみたいです。Videoも、工場、煙を吐き出す煙突、くすんだ空、荒廃した街、裕福ではない家、そして住民が映ります。撮影は、河南说唱之神さんが1997年に生まれて育った中国中央部に位置する河南省の焦作市にある村で行ったらしいですよ。

旅情中国

このラップミュージック、河南说唱之神「工厂」が、中国でいま好評価を得て注目を集めている背景を、中国のニュースサイト『腾讯新闻』などは主に2点指摘しています。『万引き家族』みたいに記事の内容をパクりますよ・・・!

①:中国の社会問題”経済に対する不安”

まず1点目は、中国の社会問題である”経済に対する不安”。

河南说唱之神さんのラップミュージック「工厂」のモチーフになった中国・河南省焦作市はかつて河南省で最初の炭鉱が開発され、石炭によって築かれた繁栄した都市だったらしいです。しかし炭鉱開発はその後、衰退。豊かな時代が過ぎ去り人々は仕事が無くなると、”私はこの場所が好きではない 私はただこの場所に生まれただけだ” という、河南说唱之神さんの話題曲「工厂」のリリックに出てくる言葉が生まれたそうです。そして衰退した街の大人たちは、子どもたちに"良い環境を与えられなかったことで自分を責めている"のが現在までも進行形で続いているそう。中国・河南省焦作市の大人たちに、時代の大きな流れに抵抗する力はなく、黙って耐え忍びそして全ての苦難を飲み込む・・・、”彼らは運命を受け入れる"しかなかったのだと河南说唱之神さんはラップします。それだから河南说唱之神さんの親や河南省焦作市の大人たちは、子どもたちに衰退した街から”逃げる”ことを教え、それが大人たちの現在の使命となっているみたいです。誰だって、自らの故郷をとても愛している、だけど良い生活のために・・・。

中国のメディアは、河南说唱之神さんがラップする河南省焦作市のような繁栄から衰退への歴史を経験していなくても・・・、昨年の2023年6月に16~24歳における失業率が過去最高の21.3%を記録するなど、中国で若い世代を中心に広がる経済の低迷による苦しみ&迷いという社会背景が、河南说唱之神さんのラップミュージック「工厂」への共感を呼んでいると指摘しています。

繁栄からの衰退という時代の変化と中国の人々の戸惑いと無力感を歌った、河南说唱之神さんのラップミュージック「工厂」と近い曲は、ロックでも歌われています!

萬能青年旅店 「杀死那个石家庄人」

ロックバンド・萬能青年旅店の曲「杀死那个石家庄人(日本語の意味は、あの石家庄人を殺す)」は、モチーフは中国北東部の河北省。製薬工場の労働者たちに起きた、30年間続けてきた生活の突然の変化、”人生が崩れ”無力感に包まれるストーリーを歌っているそうです。

経済的な背景に加えて、もう1点。河南说唱之神さんのラップミュージック「工厂」が現在、中国で多くの好評価を得て注目を集めている背景があるみたいです。それは、中国におけるラップという音楽の発展です。

②:中国のラップ・ミュージックの発展

”中国本土で最初のラッパー”とも呼ばれているらしいラッパー・王波さんはかつて、「ヒップホップの歴史は、オレたちとは関係ない。ヒップホップの歴史は海外のモノで、中国語ラップの歴史はゼロから始まる」的な発言をしていて、2000年頃に中国にラップミュージックが入ってきた当時の、初期中国語ラップのアーティストたちは、リリックとかまでアメリカのラップをマネをしていたそうです。

Hiding(隐藏) 「In Beijing(在北京)」 MV

↑はラッパー・王波さんが2000年に結成したラップグループ・隐藏の、2003年にリリースした1stアルバム『为人民服务』の収録曲みたいです。

中国でラップが歌われ始めておよそ10年が経過した、2010年以降・・・。中国では“在北京”から、中国西南部・四川省の『成都说唱会馆』(2010年結成)、中国西北部・陝西省西安の『红花会』(2011年結成)、重慶の『GO$H』(2012年結成)地方のラップレーベルが出現して、地元にファンダムを築いていったみたいです。

CDC成都集团 「CDC 2010」 The 1st rap MV in Chengdu China

中国でラップミュージックが根付き、発展するに従って、ラッパーたちはアメリカのラップミュージックのマネから、中国語で中国の物語をラップするスタイルになり始めたそうです。そしてアンダーグラウンドから始まった中国語ラップはここ数年、メジャーシーンも視野に入るほどの人気を獲得するまでになったそうです。

そんな中国国内でのラップミュージックの人気そして地方への広がりが、河南说唱之神さんの曲「工厂」が今バズっている2つ目の背景にあるようです。

そのうえで現地のメディアは、2024年にリリースされた河南说唱之神さんによるラップミュージック「工厂」は、ローカルのことを歌いながら地域性を超えて、”今の中国を歌った曲”として『中国語ラップの第3フェーズ』を切り開いたって記事にしています!

中国では2024年、新疆ウイグル自治区のラッパーたちによるサイファーが出るなどラップシーンはまだ拡大しているっぽいです。

扬布拉德 / Edhem / AThree / 那奇沃夫 / kkluv / SAM / Zanjir / Murat-King 「新疆CYPHER 2024」 Lyric Video

あと中国では、肥満率も肥大中ですってー!