映画『SHEARING』について

篠崎誠監督による映画『SHEARING』
釜山国際映画祭で見てきました。

出身キャンパスが舞台になっているからなのか、
夢が随所に散らばっているからなのか。
既視感と過去が入り混じり、自分がどこにいるのかわからなくなる体験をした。
311は卒業してから起きた出来事なのに311の絶望的な感傷を、あのキャンパスで感じているようだった。


一つは回廊性にあるのかもしれない。
ロの字型のキャンパスは、どこを曲がっても同じような景色が広がり、
自由なはずなのにどこにも行けない、楽になれない苦しい大学時代を再認識させられる。
学生が見せようとした演劇に対する論議ですら
出身学科の学生が見せるそれそのもので、同じような場所を、迷いながらウロウロと繰り返している。
そんな自分たちで追い込んでしまっているシーンに、胸が痛くなった。


そして回廊の中で追いつけない人物に、母の死を重ねてしまった。

死は過去だ。

でも、夢の中でも現実でも何度も何度も名前を呼び、追い求めている。
何をしても過去の出来事には追いつけられない。


だからラストシーンは、私にとっても(一緒に見ていた父にとっても)救いに近かった。
無理やり納得させていた死は、語られなければ回廊からは抜け出せない。


映画の中でのキャンパスは、大学時代と過去と今の気持ちがみせる迷宮かもしれない。
ヨコ、タテ、奥行きの3Dではなく、そこに時間の前後が組み合わさって平衡感覚がわからなくなる。

私にとっては4D映画だった。

釜山国際映画祭では、
【不思議な岬の物語】【紙と月】【SHEARING】を見たけど
こんなに気持ちを揺さぶられたのは【SHEARING】だけでした。
まだ日本での上映はされておらず、11月24日のみ公開予定です。


11月24日(月・祝)18:10 有楽町朝日ホール
前売券発売中とのこと。→ http://bit.ly/1FYGVDe

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?