映画『SHEARING』について 1 桃井真衣 2014年11月12日 08:56 篠崎誠監督による映画『SHEARING』釜山国際映画祭で見てきました。出身キャンパスが舞台になっているからなのか、夢が随所に散らばっているからなのか。既視感と過去が入り混じり、自分がどこにいるのかわからなくなる体験をした。311は卒業してから起きた出来事なのに311の絶望的な感傷を、あのキャンパスで感じているようだった。一つは回廊性にあるのかもしれない。ロの字型のキャンパスは、どこを曲がっても同じような景色が広がり、自由なはずなのにどこにも行けない、楽になれない苦しい大学時代を再認識させられる。学生が見せようとした演劇に対する論議ですら出身学科の学生が見せるそれそのもので、同じような場所を、迷いながらウロウロと繰り返している。そんな自分たちで追い込んでしまっているシーンに、胸が痛くなった。そして回廊の中で追いつけない人物に、母の死を重ねてしまった。死は過去だ。でも、夢の中でも現実でも何度も何度も名前を呼び、追い求めている。何をしても過去の出来事には追いつけられない。だからラストシーンは、私にとっても(一緒に見ていた父にとっても)救いに近かった。無理やり納得させていた死は、語られなければ回廊からは抜け出せない。映画の中でのキャンパスは、大学時代と過去と今の気持ちがみせる迷宮かもしれない。ヨコ、タテ、奥行きの3Dではなく、そこに時間の前後が組み合わさって平衡感覚がわからなくなる。私にとっては4D映画だった。釜山国際映画祭では、【不思議な岬の物語】【紙と月】【SHEARING】を見たけどこんなに気持ちを揺さぶられたのは【SHEARING】だけでした。まだ日本での上映はされておらず、11月24日のみ公開予定です。11月24日(月・祝)18:10 有楽町朝日ホール前売券発売中とのこと。→ http://bit.ly/1FYGVDe 1 この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか? サポート