見出し画像

【 Norwegian Wood に見る ミクソリディアン・スケール 】


「 ミクソリディアンスケールはM3とm7を持つドミナント系のスケールで、イオニアンの第5音から開始するのと同じ構造です」
と言われても ピン!と来ませんが、メジャースケール( Keyが C ならド レ ミ ファ ソ ラ シ ド)の7番目の音(シ)をフラットさせただけの音階だと知れば、一気に難易度が下がって友達になれそうなスケールになります。

主にメジャーキーのドミナント( Ⅰ 度に対してⅤ度 )で使われることが多い、エキゾチックな響きが特徴です。

【 Norwegian Wood ( ノルウェーの森 )】The Beatles



この曲のキーは E ですが、ギターで演奏する時には2フレットにカポタストを着けてオープンコード D のフォームで演奏することが多いです。

そして、このフォームを基本にしてメロディーを入れて行きます。
曲の主戦律をギターとシタールでなぞる感じなのですが、そのフレーズがミクソリディアン・スケール内の音で出来ているのです。

面白いのはキーが「D」の曲なので通常の音階では「 レ ミ ファ# ソ ラ シ ド# レ 」なのですが、シタールのメロディーは「ラ」で始まって「ラ」で終わるところです。

「レ」( Ⅰ 度 )から見て「ラ」は Ⅴ度 にあたります。
メジャー・スケールの5番目の音から始まるイオニアン・スケールと同じ作りのスケールをミクソリディアン・スケール と言うそうです。

ミクソリディアン・スケール は7番目目の音がフラットしますから「 D ミクソリディアン・スケール 」は「 レ ミ ファ# ソ ラ シ ド レ 」になって、7番目の「 ド 」の # がなくなります。

このミクソリディアン・スケールはその東洋的な調べから「ヒンズー・スケール」と呼ばれることもあるそうです。
なのでシタールの音色が良く合いますね。

そして、この曲には通奏低音として「ラ」の音がなっています。
壊れたクラクションが鳴り続けている印象です。

【 Yesterday 】の中でも同じことをバイオリン🎻でやっていましたが、イギリス人ですからバグパイプの影響もあったのかも知れませんね。


この曲が面白い点の一つとしてモーダル寄りの曲だと言うことがあります。

コードトーンを中心に意識してフレーズを作っていく「コーダル」に対してコードがあまり動かない「 モーダル」があります。
メロディアスな曲なのにコードは殆ど動いていません。

モーダルの場合はコード・トーンよりもキーや繰り返しのフレーズに重きが置かれるそうです。

そして、この曲のメロディー・パターンは A、Bメロで同じメロディーをそれぞれ2回繰り返すだけというシンプルな構成。
それでこのクオリティの曲ですから
驚愕です。

Aメロのコードは「 D 」だけ、Bメロというかサビに入って「 Dm 」になると言う主調転調が行われます。

それまで明るかった世界が突然切ない雰囲気になって好きです。

この曲が収録されているアルバム『 RUBBER SOUL 』には他にもモーダルな曲があります。

良い曲なのでギターで弾いてみようとしたら「 エッ!」と驚くほどコードが動かない。

まぁ、次のアルバム『 REVOLVER 』には初めて聴かされたときにあのポールがビックリしたという曲も有りますけど。

余談ですが、この『 Norwegian Wood 』という曲には『 ノルウェーの森 』という邦題が付いています。

ですが、直訳すると『ノルウェー製の家具、材木 』となります。
しかしながら日本のファンの間では何十年もの間『 ノルウェーの森 』という意味で信じられていました。

『 森 』ではないと気づかれ始めたのはここ数年です。
それほどこの曲とタイトルがしっくりと合っているということだと思います。

この曲に限らずビートルズの邦題の殆どすべてを付けられたのはヴァイオリニスト、高嶋ちさ子さんのお父様であり、俳優の高嶋忠夫さんの弟、高嶋弘之さんです。

高嶋さんのトークショーに何度か行ったことがあるのですが、ご高齢にも関わらずエネルギッシュでとにかく明るく愉快な方で、お話もとても上手な方でした。

高嶋さんはビートルズの初代ディレクターで日本におけるビートルズを売り出す役目を担った方です。
この曲のタイトルについて後年、どうしてこのタイトルを付けたのか聞かれて「僕は英語が得意じゃないから、曲を聞いたときの雰囲気で付けた」と仰っていました。
いい加減な様ですが、本当に良い邦題だと思います。

このタイトルを見て村上春樹さんの書籍を思い出される方も多いと思います。
この事でも面白い話が有ります。

同名の本が売れて最初は純粋に喜んでいたそうです。
ですが、後になって村上春樹さんは高嶋さんの早稲田大学の後輩にあたることを知って「けしからん奴だ!」と思ったそうです。
「俺が付けたタイトルと同じタイトルを付けた本が世界中で翻訳される位の大ヒットになったのに、あいつは俺のところに来てお礼の一つも言わない」と。

暫くして高嶋さんの方は『 ノルウェーの森 』だけど、村上さんの方は『 ノルウェイの森 』になっていると分かり「それじゃ仕方ない」と。
「ノーベル文学賞にノミネートされる位の人はしっかりしている」と笑いを取っていました。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?