Study at LSE
LSE 修士にきてから数ヶ月が経過し、自分とコースに合った勉強のルーティーンが確立してきたので記録として残しておきます。
勉強のやり方はとっているコースや教授によって異なるものの、今回は今期とっているDemocracy and Capitalism の授業を例にとって紹介してこうと思います。
一つの授業に取り組むにあたってプロセスは大きく分けて4つのパートに分かれていて、
Lecture, Reading, Seminar, Revision + Output (Essay/Exam)
各パートでどのようなことをしているかを個別にシェアしたいと思います。
1.Lecture
まずは、Lectureを受けます。今期は事前に録画されたレクチャーをオンラインで受けるか、授業が生配信されてインタラクティブな形式で進められることもあります。
授業は基本は90min.ですが、オンラインに託けて大抵は時間を大幅にオーバーし120min.くらいになることが多いです。そのため事前録画の場合は時短のために1.5倍速で視聴することがほとんどです。
Lectureでは、パワーポイントや教授の話、質問したことを中心にノートをとっています。自分はOne Noteを使って以下のような形で適宜グラフをスライドから引用して要点をなるべく短くまとめています。
まとめる中で今週のテーマについての①歴史/社会的背景②理論と対抗理論③裏付けるデータを大まかに理解することがここでの目的です。
ちなみにこの週は Electoral Politics and distribution というテーマでした。
Lectureで
①民主主義によって格差がなくならないのはなぜかという背景
②Power Resource Approach (PRA) v. Varieties of Capitalism (VoC)
③それぞれの示すデータ
を大まかに理解しました。
2. Reading
Reading ではコースごとのReading ListでEssential Reading とSupplemental Reading のうちEssential を精読し、必要に応じてSupplementalを参照します。
1授業につき週に20~50ページくらいのものを4~5本読むイメージです。
この週は以下の4つの論文がEssential Reading として指定されていました。
・Scheve & Stasavage (2016) Taxing the Rich: A History of Fiscal Fairness in the United States and Europe
・Kenworthy & Pontusson (2005) Rising Inequality and the Politics of Redistribution in Affluent Countries
・Korpi (2006) Power Resources and Employer-Centered Approaches in Explanations of Welfare States and Varieties of Capitalism: Protagonists, Consenters and Antagonists
・Iversen and Soskice (2009) Distribution and Redistribution: The Shadow of the Nineteenth Century
この週はそれぞれ40, 30, 50, 55ページと通常より多めのページ数だったので物理的には大変でしたが、どれもこの分野における超有名な巨匠ばかりだったので根底にある理論は理解しており、比較的楽に読み進めることができました。
ここでも論文ノートをとります。
要旨をなるべく短く、所々太字も使いながら章ごとに箇条書きでまとめています。
後に引用する可能性のある、定義やパンチラインのような箇所はそのまま引用してページ数も振っています。さらに復習しやすくするためグラフ等は切り取って貼り付けています。
これらを全ての論文について行なっていきます。
読む中で、①仮説と検証の整合性②筆者の立場、を明らかにして読むようにしています。
例えば、画像にあるScheve & Stasavage の論文では、
①高所得者への累進的課税に対するFairness Ideaの変化と実際の政策変化をISSPやWBのデータを使って検証していること
②Left Optimism (あくまで僕の解釈です)
を精読する中で理解していきました。
3. Seminar
この授業のSeminarではSeminar Questionを元にReadingについてのディスカッションを行います。Seminar PreparationとSeminar に分けたいと思います。
3.1 Seminar Preparation
ここではSeminar Questionに対して事前に自分の考えをアウトプットしています。Seminar Questionの多くは、1問1答のようなものではなく、論文を横断的に分析し評価していくものがほとんどです。
essay を書く際に行うプロセスと似ています。
Seminar Preparationでは、
①論文の対抗関係、それぞれ論点の明確化
②それぞれの評価 which is more compelling? why?
を明確にし、Readingに対する自分自身のポジションを形成することが目的です。社会科学において非常に重要なパートだと思っています。
この週は例えばこのようなQuestionがありました。
a. Are Varieties of Capitalism (VoC) and Power Resource Theories (PRT) mutually exclusive, or can they co-exist?
b. Which argument do you prefer, and on what grounds?
c. What, if anything, is missing from these theories?
これらの問いに対する絶対的な正解はないので、自分のポジションを根拠をつけて形成することが必要とされています。
これらの答えは箇条書き→文章でアウトプットし、ディスカッションのためのプレゼンの練習まで軽く行っています。
やはり、一度自分の頭の中や口に出してロジックを固めておくと、議論で人の意見を聞く余裕も生まれるし、自分の話も構造化されて聞きやすくなると思います。
3.2 Seminar
今期のSeminarはzoomで行われています。
ブレークアウトルームでディスカッション→全体でディスカッション→教授のフィードバック+質問などがひとまとまりの流れです。
基本的にはPreparation で形成したポジショニングの元でディスカッションをしていきます。
ディスカッションでは、なるべくファシリテーターというよりはむしろオピニオンリーダー的存在になれるように多角的なアイデアを場に投げつつ自分の意見を添える、ということをするようにしています。
Seminar でもノートをとっていきます。基本的には全体でのディスカッション用にグループでまとまった意見やプロセスを簡単にメモしています。
Seminarでは、①自分のバリューを出す②自分になかった視点を得る(読み違っていたところを発見する)、を意識しています。
こいついてもいなくても変わらないな、と思われるのだけはないようにします。
Scheve & Stasavage は戦争中のcompensationとして累進課税を正当化されてきたと主張していました。
Seminarでは、これをコロナでも応用して高所得者の税率をあげる idea が広まるとS&Sは言うのではという意見を聞いて、自分にはない視点だったため大きな刺激を受けました。
4. Revision + Output
Revision はSeminarの日の終わり、1週間の終わりに2回行います。
どちらもLectureとReading のノートをさらって理論展開を頭の中で再現するという至ってシンプルな内容です。これをするだけで記憶の定着が段違いだと思います。
せっかく読んだ論文を忘れてしまってはもったいないので、誰が何を言ったのかくらいは暗記しておきたいです。
Revisionの一貫として、Seminarで不完全な理解のまま終わってしまった議題についてオフィスアワーでディスカッションすることも多いです。
Output では、コースの課題として出されるEssayをメインに毎週やっていることを自分のアカデミックな言葉で文章にしていきます。これはいつか別の記事にしたいと思います。
以上のことを週に3つのコースそれぞれで行なっています。
非常に楽しくて充実させてもらっています。
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