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なぜチェイサーゲームWは多くの人を惹きつけたのか④

23分×8回で見たいものを見せたドラマ

チェイサーゲームWは1話23分、全8話と比較的短いドラマです。

しかし、この短い放送時間の中で、普通では考えられない奥行きと、尊さを詰め込んでいます。このドラマは大学時代に別れた二人が、社会人になり、下請け会社の社員とクライアントとして再会。そこから1〜2ヶ月の間の話を中心としています。その間に、メインのストーリーだけでは到底見せられない尊いシーンを見せる事に成功しています。一応、言っておきますが、このドラマは元恋人同士の上司(クライアント)と部下(下請け)が繰り広げる”復讐愛憎劇”なんですけど、、、実際は全編、尊いで溢れているんです。  

〈1話〉
冬雨がDD社にクライアントとして出社した初日から、樹に酔った勢いでキス。

〈2話〉
エレベーターに閉じ込められた密室での尊い2人。

〈3話〉
結婚したわけでないけど、樹と冬雨のウェディングドレス姿。

〈4話〉
同棲したわけではないけど、樹と冬雨と娘の月ちゃん。つかの間の3人での暮らし。
誤解が解けたあとの交わる体温。
尊すぎるベットシーン(ラブシーンではない)

言葉にすると何かすごいんですけど、実際の映像は女性同士のセンセーショナルなシーンというより美しく尊いシーンとなっています。

それに追加してシーンの合間には回想シーンがあり、大学時代の付き合っていた頃の初々しい2人や、陸上部時代(高校生)の爽やかな樹が見られます。

このようにドラマの前半は1話に1つは尊いシーンがあります。こんなにいいとこ取りしていいのか!と、まるでSS小説のように見たいものを見せてくれるじゃないか!と。

これらは直接的にストーリーには関係のないシーンですが、2人の心情や間柄を知る上では欠かせないシーンになっていて、その先のシーンの解像度を上げる役割もしています。そして、その美しさや尊さに視聴者はすっかり夢中になりました。ストーリーを追うだけでなく、このような尊く美しいシーンに時間をさいてくださって…太田監督ありがとうございます!!!

私は、今まで実写で大人の女性でありながら、こんなに可愛くて美しく、演技も尊いものを見たことがありませんでした。それはまさにファンタジーでした。

しかし、夢見心地のオタク達を急にリアルに引き戻すのがチェイサーゲームWです。4話では冬雨のママが樹に「中国では同性愛は幸せになれません」と突きつけ別れるように懇願します。また最終回でもレズビアンの中でも透明化されて見えていなかった既婚のレズビアンという存在を提示しました。一瞬だけ、リアルを入れて、伝えたかったことを入れた。ただチェイサーゲームWはこのように重いテーマを扱いながら、全体をファンタジーで包むことによって、視聴者は離脱せずドラマを楽しむことができた。このバランスが絶妙なんです。

ドラマで提示したレズビアンについて(提示したと私が勝手に受けとったこと)については以前書いた、こちらのnoteで触れておりますので気になる方は下記のリンクをご覧ください。

設定④ 国と時代を超えた設定
(チェイサーゲームWの凄いところ③【日本のGLドラマとして全方位に画期的だった設定】より)

私がここで勝手に言っているファンタジーという表現は適当ではないかもしれません。ただ、私はそれこそが、「チェイサーゲームW」の一番の特徴だと思っています。このnoteでもずっと言っている美しいとか尊いとか、それがこのドラマ全面に打ち出されている。大人の百合小説?社会人百合漫画?大人のGL?の世界を完全映像化したような。ただし上品でプラトニックな。
ごめんなさい、うまく言語化できないんですけど。このスタイルが今までのGLドラマとは一線を画していたのではないかと思います。

それでは、その尊いシーンを一つずつ振り返ってみま…え?これ以上長くなったら読むのがしんどい?そうですか?そう言うならやめておきます。じゃあ、後半の尊いシーンを順番に…それもいらない?
では、気になる方はぜひドラマ本編を見てください。いや、何度でも見返してください。

2人のキスシーンは上品で美しいので(小声)


【全体のピークを真ん中の4話に。飽きさせない構成】

そして4話にドラマのピークを持ってきたことがこのドラマを成功させた理由の一つだと思います。なんとなくいいかもと見ていた視聴者も一気にロックオンされた瞬間だったのではないでしょうか。

4話では、それまで微妙な関係だった2人が数日間、一つ屋根の下で一緒に過ごすことになりました。娘の月ちゃんも一緒に。その3人のかわいくて美しいこと。何ですか!この理想的な3人は!月ちゃんもかわいいし。樹にすぐに懐いてるし。徐々に2人のわだかまりも溶けて3人はとってもいい感じ。女性2人と子供の家族、いいです!素敵です!本音を言うともう少し見ていたかった。こんなの見たことなかったので。もう少し3人の暮らしを見ていたかったです。

そんな中、ちょっとした喧嘩をきっかけに2人は本音をぶつけ合い、お互い今でも愛し合っている事を確認しました。そのシーンの尊さに視聴者はもうロックオンです。そこから新たな展開が始まります。そして最終回にまたピークを迎えました。

この手法はスピード感あるストーリーとなり、視聴者を飽きさせませんでした。それに最終回なんて、すんごいスピードでストーリーが進み、置いてかれたほどです。このスピード感に慣れてしまうと他のドラマを見た時に、ストーリーが進むのゆっくりだな〜とつい感じてしまいます。 

【肉体的よりも精神的な繋がり】

4話では二人は本音をぶつけ合い、誤解がとけ、交わる体温となります。ここも、このドラマの特徴の一つです。ドラマの中で何度かキスシーン(美しい)はあるのですが、実際に交わるシーンは見せていない。肉体的な繋がりよりも精神的な繋がりを重視していることが伺えます。「チェイサーゲームW」は2時35分スタートのど深夜の時間帯のドラマ。そういった、際どいシーンもあってもよかったはずですが、そうはしなかった。もしかすると、ただ単に多くの人が受け入れやすいものにする為だったかもしれませんし、性的消費を避けるためだったかもしれません。
でも、このプラトニックな表現が「チェイサーゲームW」をより尊いものにしたと思います。

「チェイサーゲームW」の樹と冬雨の尊いシーンの映像はとにかく綺麗なんです。どのシーンもまるでMVのよう。樹と冬雨をいかに美しく見せるか、可愛いく見せるかにこだわっていたという中村プロデューサーや太田監督の言葉もあります。画角、撮り方、照明が工夫されている。シーンごとの全体の色のトーンも綺麗なんですよね。私はそこまで知識がないので、どのような手法を使っているかわからないのですが、とにかく綺麗です。百合好きは、美しさや可愛いさに弱い。これもファンを夢中にさせた一つの要因だと思います。その証拠にどのシーンを切り取っても全て絵になっています。

【ドラマを彩る楽曲】

ドラマの主題歌「ミッドナイトガール」を聴くとファンはパブロフの犬のように自動的にドラマの名シーンを思い浮かべ、エンディングテーマ「口癖」を聴くと、幸せそうな2人のifの世界線のエンディングを思い浮かべるようにできています。

「チェイサーゲームW」の主題歌と劇伴は今をときめくimaseさんが担当しています。imaseさんは前作「チェイサーゲーム」も劇伴を担当していて、その楽曲は「チェイサーゲームW」でも使用されています。この楽曲達がほんといいんですよね。どれも洗練されていて。お若いのにすごい才能です。主題歌の「ミッドナイトガール」は、ほとんどの名シーンに効果的に使われています。歌詞も「いつふゆ」を連想させるものでファンは名シーンとこの曲が、セットになっています。ちなみにimaseさんはドラマにも出演しています。

あかたんさんのエンディングテーマ「口癖」もいいんです。「ありふれている悩みも、独り流した涙も、全部全部抱え込んでまた物語は続く」そんな歌詞がこのストーリーにとても合っています。
配信でもいいので、サントラお願いします!


他にもドラマの設定など、たくさん魅力的なところがあります。詳しくはこちらをご覧ください。


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