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一日に水2リットル飲まなきゃいけないという呪縛

私の胃袋は毎朝、コップ一杯の酵素ドリンクによって起こされます。
朝起きがけの水分補給は胃と腸が刺激されるため、蠕動運動の促進や、自律神経を整るといった効果が期待できます。
過去の私はしばらく、朝にコップ一杯の水道水一気飲みを心がけていましたが、習慣化できませんでした。
なんだか水っておいしくないし、一気飲みしようとしても朝のしおれた体にはスルスルと入っていきません。
そこで取り入れたのが酵素ドリンク。
ジップ付きの袋に入った粉末をスプーン一杯水に溶かして作るものです。すっきりしたレモン味なので甘ったるくもないけれど味気なくもない、ちょうどいい飲み物です。
そういえばここ数年で私の“水分補給事情”は劇的に変わりました。
現在の水分補給ルーティーンをご紹介しつつ、何がきっかけで変わっていったのかお話ししようと思います。

朝から夜まで飽きないドリンクメニュー

まずはじめに現在の水分補給ルーティーンをご紹介します。
朝起きてすぐに歯を磨いたら、酵素ドリンクを一気飲み。この“一気に飲む”というのも、刺激を与えて眠った体を起こす大事なポイント。
その次に朝食として飲むのがプロテインと野菜ジュース。こちらも両方とも粉末なのでそれぞれ水に溶かして一気に飲みます。
野菜ジュースの味はかなり青臭いので、飲んだそばから一杯のお味噌汁をお口直しに頂きます。
そこからお昼過ぎにかけては、浄水器でろ過済みのお水を400〜500mlこまめに摂取。
お昼過ぎからは気分を変えて、そのときの気分に合ったお茶を仕事の合間で嗜みます。
ちなみに最近は昼食を抜くことが多く、休憩時間は会社のランチスペースで机に突っ伏して爆睡です。
会社から帰宅して夕食を終えるまでに600mlほどのお茶を飲み、お風呂に入ります。会社がある日はシャワーのみですが、休日は湯船に浸かることが多いので、そんなときは必ず浸かっている最中でも水分を補給。
お風呂上がりはデザートの役割も兼ねた甘酒で疲れた体と心をやさしい甘みで満たします。
夜寝るまでにはまたお水を400mlほどこまめに飲んで就寝中の脱水対策。

以上が現在の私の水分補給ルーティーンです。
トータルすれば一日の水分摂取量は約2リットル前後。

お水とお茶は買わない主義だった

私が20代前半だったころ、味のしないお水、味の薄いお茶などはあまり飲みませんでした。わざわざお金を出してお水やお茶を買う人の感覚がわからないとさえ思っているくらいでしたから。
飲むタイミングも気にすることはなく、そのときの気分に応じて好きなものを飲んでいました。
朝、眠気覚ましに会社でブラックコーヒーを飲みながら黙々とパソコン作業。お昼過ぎの調子が出てきたころに甘い炭酸飲料をお供に午後の仕事に取り掛かります。ペットボトルを飲み干せば、次はデザート代わりのパック入りの甘い飲み物で糖分摂取。

と、20代前半はだいたいこのような趣きで水分を補給していました。
気分によって摂取量はまちまちだったので多くて1.5リットル、少ないと一日1リットルいかなかったかもしれません。
また、毎日ではありませんがお酒を飲む頻度は今よりずっと多かったです。
健康診断で引っかかったことはないけれど、きっとこのころの私の血液はドロドロだったでしょうね。

ひとまず一日1.5リットルでOK

ふりかえればゾッとするような20代を過ごしていた私。なぜ先ほど紹介したように、飲料に対する意識が変わったのかというと、たしかこれは、若かりしころのかすかな美意識からだったと思います。

「一日に摂取すべき水分量は2〜3リットル」
どこかで聞いたことありますよね。
私はそのときテレビに出演したタレントさんが提唱していたのを聞きました。この情報に加え、通っているピラティスの先生が「人間の体の約60%は水分」といってレッスン前にミネラルウォーターをぐびぐび飲んでいる姿とか、好きなYouTuberさんが「美容のためにやっていること○つ!」と題して、水分補給の重要性を紹介している動画とかを見て、お水をたくさん飲むことは美容面でとても大事らしい、と認識しました。
なんならお水を飲むだけでできる美容法だったらやらなきゃ損!と、それまでよりたくさんのお水を飲もうと決意しました。
摂取する飲料にこだわらなければお金もあまりかかりませんからね。

挑戦してみると案外、2リットルを一日に飲み干すというのは難しく、いちいち作業の手を止めて飲む、という動作自体もなかなか面倒。習慣化には時間がかかりました。
トイレの回数も増えたのでこれもまた面倒。
それでも、「10分に一口だけ飲む」というルールを設けてからはちょっとずつ一日の摂取量が増えてきて、飲む動作も次第に体に馴染んでいきました。
一日2リットルという目標を達成することができたのは2ヶ月もかからなかった気がします。

肝心の美容効果ですが、とくに大きな変化はありませんでした。お水をたくさん飲むようになったのは27歳前後だったと思うのですが、まだそこまで美容面での大きな問題はかかえていなかったからだったかもしれません。
これといった変化は感じられませんでしたが、きっとこういうのは30歳を過ぎてから結果が出てくる、と思ったたのでそのまま一日2リットルを飲み続けることに。
この調子で3リットル飲めるようになったら、それだけ体内の水分量が増えて内臓もお肌もぷるっぷるに!なんて考え、2リットル達成したことをいいことに水分量を増やそうとむしろ躍起になりました。
ところが3リットルは一日ではとても達成できない量でした。朝昼晩で1リットルを飲み干すなんてちょっと考えればとても現実的な量ではないとわかりますよね。
それでも意固地な私はしばらく一日3リットルを目指し、数分ごとにお水を2口3口飲むようにしていましたが、トイレの回数が増えるばかりで、なんだか飲んだ水が自分の中を素通りしているような気がしてなりません。冬にたくさんお水を飲むと体内から冷えていくようでとっても寒く感じるし…
そこでようやく一日に摂取すべき水分量とその根拠について調べることにしました。

厚生労働省によると成人が一日に必要とする水分量は2.5リットル。
前述した「一日に2〜3リットル」は、まあまあ的を得ている数字であることがわかります。ただ私は食事から摂取される水分量を考慮するのを忘れていました。
飲料からだけではなく食事からも水分は摂取されるためその分をマイナスしなければいけません。
ということは、朝はプロテインと野菜ジュースと味噌汁なので、その分は飲料としてカウント。お昼は食べないことが多いのでゼロ。夕食から算出したおよそ400〜600mlの水分量を引きます。
(とある日の夕食に使った食材の水分量から出した概算です)
理想の摂取量2.5リットル、から500mlを引くので、2リットル。
じゃあ、結局摂取量は2リットルなんじゃん、と思いきや、さらに調べてみると一日の水分摂取量は、性別、年齢、身長や体重、さらにはライフスタイルによっても変わってくるのだそう。
アメリカ科学振興協会によって発行されている科学学術雑誌「サイエンス」に掲載された論文では、人の体の水の出入りを「水の代謝回転量」といっていて、その代謝回転量を割り出す式を発明したんだとか。
その式に則って割り出された数値が一日に体内から出ていく水分量で、その失われた水分のなかで摂取しなければいけない量は約85%。さらにその85%のうち食事から摂取される水分量も引いて出た結果が、人体に必要な摂取すべき水分量です(「Variation in human water turnover associated with environmental and lifestyle factors」2022年11月24日第378巻、第6622号909-915ページ)。

式をやってみたわけではありませんが(めちゃめちゃ長い式でやる気も起きない)、どうやら飲む量は一日2.5リットルどころか2リットルも必要なさそうでした。
いろいろ調べた挙句、そこまでがんばって飲まなくてもよさそう、という気持ちになったので、朝昼晩500mlくらい飲めればOK、というゆるめのマイルールを設けました。

水分の吸収率にpH値は関係ない

自分が摂取すべきだいたいの水分量がわかったところで次に着目したのが飲料の種類。
どうやらpH値というのが自分の体と同じ指数のお水は吸収率が良いらしい、なんて話題が少し前にささやかれていたかと思います。私もその噂を聞きpH値というやつを調べてみましたが、実際には吸収率に関係はないようです。
pH値というのは、そのものに含まれる水素イオンの量を表す尺度で、高ければアルカリ性、低ければ酸性になります。
人の肌は弱酸性なので、同じ指数の弱酸性のスキンケア用品であれば刺激が少なく敏感肌でも安心して使える、として売られているものも多いです。
どういったわけか、この話が飲料にも当てはめられてしまい、pH値が自分と同じくらいの指数だと吸収率が良い、と間違った認識になってしまったようです。

吸収率に影響するのは浸透圧

吸収率に影響を及ぼすのは浸透圧でした。
この浸透圧というのは、液体や成分が媒体を出たり入ったりする力のことをいうようです。

人は運動すれば汗をかき脱水します。この脱水状態のとき摂取するにもっとも適しているのはハイポトニック飲料といわれています。
ハイポトニック飲料は、ナトリウムや糖類の濃度を低めに作られている、浸透圧が低い飲み物です。
一方脱水した人の体は、体内のナトリウムなどの成分の濃度が高くなっているので、浸透圧が高くなっています。
この浸透圧の違う2つが接触、つまり運動したあとにハイポトニック飲料を飲めば、それぞれの成分が移動し、効率的に水分補給ができる、という仕組みです。
浸透圧が違うと、濃度が低いほうから高いほうへ水分や成分が移動し、お互いの濃度を揃えよう、という働きが起こるためです。
なおかつ、ハイポトニック飲料に含まれている適量の塩分や糖質が、効率の良い吸収を促し、なおかつエネルギー源にもなります。

ちなみに、このハイポトニック飲料はスポーツドリンクの種類なかの1つで、もう1つアイソトニック飲料というのもあります。
このアイソトニック飲料は、運動もなにもしていない状態の人の浸透圧と同じに作られているようです。そのため通常の水分補給にはアイソトニック飲料が適しているとされています。

結局お水をたくさん飲むことにした

じゃあなぜ私は、通常の水分補給に適したアイソトニック飲料を生活に取り入れていないかというと、糖類を摂取したくないからです。
(味のしないお水を飲めなかった私がこんなこと言うなんて!)
やはり20代前半から時が経てば味覚も変わるし健康への意識も変わります。変わっていく過程で、飲料によってどれだけ多くのお砂糖を摂取してしまうかを知ると、例え水分補給に適しているアイソトニック飲料とはいえ抵抗が出てきてしまうのです。
それが1つめの理由。2つめの理由は脳脊髄液のpH値です。

脳みそが収まっている空間を脳室といいますが、その脳室の中は脳脊髄液という液体で満たされています。人体に衝撃が加わってもクッションの役割をする脳脊髄液があるため脳みそは傷つかずに済みます。

この脳脊髄液、本来は弱アルカリ性なのですが、どうやら飲料によって酸性寄りになる、といわれています(宮城旺照「1日1分「首わしづかみ」で脳脊髄液を流してください」光文社、2018年8月21日発行、148-151ページ)。
脳脊髄液の存在を知ってから、体内の水分の質についても考えるようになり、その方面に詳しいわけではないのですが、いったん、常飲するのはキレイなお水にしよう、と思い至りました。

主軸をお水に、そのときの好みや摂りたい栄養によってほかのドリンクをカスタマイズしていった結果自然と摂取量も増えていき、現在は無理なくそこそこの水分量を取れるようになりました。

最後に(全然関係ない話)

完全に余談なのですが、北ヨーロッパにあるノルウェー王国は日本と同じく水道水が飲める数少ない国の1つです。
会社でアプリのテスターをしていたころ、手元のスマホでアプリの検証をしがてら耳にはイヤホンをつけてラジオを聴いていました。あるとき、そのラジオから“ノルウェーの水がおいしい”という話が流れてきたのです。
なんでも、そのラジオ番組に出演していたゲストは「ジュースやお酒よりもノルウェーの水がおいしくて、それだけずっと飲んでいた」と言うのです。
きっと20代の血液ドロドロヘドロの私だったら寸分の興味も湧かなかったでしょうが、今の私にはとても興味深い話。
調べてみるとネットでノルウェー産の飲料水は手に入るらしいので、いつかのご褒美に買ってみたい。

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