成人男性のヒールチャレンジ #KuToo
兼ねてよりツイッターで仲良くしてくれている友人たちに「ヒールはつらいんだぞ」と聞かされてきた.「せっかくだから試して身に染みてみよう」という運びになり,とうとう先日わざわざ靴を買ってもらって,8時間ほど過ごしてみた.この頃話題の#KuToo ムーヴメントに賛同するかたちで,男性視点での所感を書き残しておこうと思う.
ヒールチャレンジは当日11:00に友人と集合し,デパートで靴を試着の上で購入,とりあえず履かずに移動して,14:00に入室したカラオケ店内から始めた.
屋内のちょっとした移動(適宜許可と助言を受けて素足になってもいた)→18:00から夕食の店への往路30分→会食の場では着席して過ごし→22:00過ぎに退店した後,酔った状態で復路20分の徒歩
で,22:40にゴールとした.駅の改札を通り,ホームのベンチで普通のブーツに履き替えて帰途についた.
「5分で音を上げるんじゃないか」
「血みどろの靴擦れが待ってるぞ」
「泣き言言ってもダメだから」
と前々からおどされていたので,適切に警戒心を煽ってもらったことも功を奏したのか,“概ね想像通りのつらさ”を実感できた.ヒールって痛いよ.
人生初のヒールは「どうせなら一番容赦ないヤツ」と頼み,7cmの高め・ヒール細めのパンプスを選択した.ストラップ付きやブーツ型など,足を固定する助けのあるものはあえて回避した.筆者は身長の割に足が大きめな部類で,27cmの女性靴は選択肢が少なかった.対応してくれた店員にも「男性がヒールとは,罰ゲームか忘年会の一発芸か」と聞かれる始末で,社会勉強と答えておいた.
まず,親指の付け根あたりに掛かる負荷を分散させる術がない.真っ先に痛くなり,継続して痛みを覚えたのは親指の付け根部分だった.いざ着用しても,当然すぐに慣れるはずもなく,往路の足取りはおぼつかないまま.直立不動でもふらついてたし,背筋を伸ばせない有様だった.「当たり前のように常に痛い」のがハイヒールだ.
些細な凹凸・傾斜・地面の穴・階段など,普段なら気にも留めない接地面の状態に意識を集中せざるを得ず,すこしでも油断すれば転倒の危険がある.不用意に着地したら余計に痛い思いをするし.さらに足の甲が剥き出しだから,この時期の屋外は一際寒く感じた.日も沈んでいたし,ナビに言われるがまま狭い路地を通ったりもしたから,とにかく怖かった.
屋内で椅子に座っていても,ただ履いているだけで圧迫感がある.脱ぎたくなる.そもそも人間は普通に生活しているだけで足がむくむ.そして,むくみは肉体的苦痛にマジで直結する.(適宜許可を得て脱いでたけど)時間を追うごとにだんだん窮屈になっていた.
夕食の店を出る頃には,酔いが回っていたこともあってむくみがひどかった.むくんでくると,あれだ,孫悟空の頭についてる緊箍児(きんこじ).あれみたいにギリギリと確実に絞まりが強まる.いや,この場合膨らんだこっちの自業自得なんだけど.そのくせ乱暴に歩くと,きついはずなのにかかとが抜けそうになる.どっちかにして欲しい.意味分かんない.
復路は酔っ払っている分注意力が散漫になり,せっかくの慣れを相殺.素直に「行きより痛いな」と思いながら歩いていた.特に下り坂は,「下り坂,下り坂⋯」とうわ言のようにボヤいていたらしい.
終始スリリングな挑戦だった.普通のブーツに履き替えたら,それはそれは楽チンだった.
翌日の朝,目立った外傷は無かった.その代わり,首・腰・ひざが痛んだ.体幹の関節が頑張っていたらしい.股関節から下は全体的にほんのり筋肉痛になったが,全く動けないほどではなかった.
今回まともに負荷を掛けたのはたったの1時間未満,それも曲がりなりにも”都会”の舗装路を歩いただけなのに,蓄積したダメージがこんなに表出した.筆者には,ヒールを履いて丸一日活動するのは到底無理だろう.
ヒールは西洋文化における纏足とでもいえよう.“機能より見た目偏重”の装飾品だと思う.
ヒールを履いていたら,夜道で身の危険を感じたって“走って逃げる”のはまず不可能だと感じた.歩幅を拡げたらバランスを崩しやすくなるし,ピッチを上げれば足への負担が高まる.
就活でヒールを履かされるのだって,無為に神経と体力を磨り減らす.不要な労力だ.怪我の心配ばかりで面接どころじゃない.接客業や立ち仕事でヒール着用など,ナンセンスだ.
根拠もなく”慣習”としてヒール着用を求める社会はおかしい.“たかが靴“じゃないんだ.ヒールを履くことは自発的なChoiceの領域にあるべきもので,Mandatoryではない.こんなものを社会が強要するのは不条理だし,変えていかねばならんよ.
伝聞で知る苦痛と,実感を伴う体験では,インパクトが全く違う.たいへん勉強になりました.
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