論文『スマート農業の実現に向けて 』 300文字 要約

https://www.jstage.jst.go.jp/article/ieiej/36/10/36_691/_pdf/-char/ja

☑要約

 食料供給や地域経済振興など重要な役割を担う農業・農村だが、従事者の減少や高齢化による労働者不足が深刻な状況。今後の発展には経営者が活躍できる環境作りと技術革新が必要である。
 国は先進技術を活用し『スマート農業』の実現する為に、研究会、戦略、事業の中でトラクターの自動走行やアシストスーツなどの実証や開発、安全確保策のルールづくりを行う。

 一方で、センサや農作業履歴管理システムを使い、農産物の品質・価値の向上や、他技術と組み合わせた革新的な技術体系の研究や普及を進める。

現在は農業情報をビッグデータとして活用する為にガイドラインの策定やサービスの利用規約の解説作りなど環境整備を進めている。(299文字)

☑論文が伝えたい事(箇条書き)

◆はじめに
 ・農業・農村は、国民に食料を安定的に供給し、食品産業等の関連産業や地域の経済を支えているだけでなく、優れた生産装置である水田、世界に評価されている食文化、美しい農村風景など潜在力を有している。
 
 ・農業は生産額が大きく減少する中で、農業従事者数は年々減少、平均年齢は67歳(2016年データ)、65歳以上の従事者が全体の6割を超えるなど、農業を取り巻く情勢は厳しさを増しており、農業現場における労働者不足が深刻な状況になっているので、若者や女性など様々な人に農業参入をしてもらう為に、作業の省力化、初心者でも農業に取組める環境を整備する必要がある。
 
 ・農業生産現場では100haを越える大規模経営や、先端技術を活用した施設園芸など、新たな経営が出現したり、6次産業化や海外輸出など新たな価値の創出や市場開拓の取り組みも始まっている。
 
 ・今後、食料の安定供給や多面的機能の発揮を発揮させるために、農業を持続的に発展させて農業経営者が活躍できる環境の整備と国産農産物の競争力の強化していく事が重要なので、担い手の育成・確保や担い手への農地集積、農業生産基盤の整備、技術革新を実現する必要がある。

 ・農林水産省では、技術革新の大きな柱の1つとして、ロボット技術やICT等の先進技術を活用する事で超省力・高品質生産を図る『スマート農業』の実現を目標にし、目指す方向性や研究開発、生産現場への導入実証、普及に向けて環境整備に取り組んでいる。

◆スマート農業の推進
 ・農業技術において省力化・軽労化、精密化・情報化などの改革を図る必要性があり、他分野で活用されているロボット技術やICT等の技術は農業分野を強力な推進力になる事が期待されている。

 ・先端技術を活用して超省力・高品質生産を可能にする農業を『スマート農業』と位置づけ、2013年11月に『スマート農業の実現に向けた研究会』を立ち上げた。この研究会では、スマート農業が目指す将来像を議論するグループ、ロボット技術の安全性確保策を検討するグループの2つを設けて検討を重ね、2014年3月に中間取りまとめを行った。

 ・中間取りまとめでは、①トラクターの自動走行を実現し、超省力・大規模生産の実現、②過去データを活用しきめ細かな栽培を行い、作物の能力を最大限に発揮、③アシストスーツや除草作業の自動化等で、きつい作業、危険な作業からの解放、④農機のアシスト装置、栽培ノウハウのデータ化等により、誰もが取り組み易い農業を実現、⑤生産情報の見える化消費者・需要者に安心と信頼を提供、の5つの方向性について整理し、重要な技術分野について、3年後、5年後、長期的に開発すべき技術(マイルストーン)を明確化、ロードマップを整理した。
 
 ・2015年2月、日本経済再生本部が決定した『ロボット新戦略』にて、農林水産業・食品産業分野が2020年までに目指すべき姿((KPI)として、①自動走行のトラクターの現場実装、②新たなロボットを20機種以上導入の2点が設定された。

 ・2016年3月4日に開催された『未来投資に向けた官民対話』内で、安倍総理大臣は
①2018年までに圃場ないの農機の自動走行システムの市販化、②2020年までに遠隔監視無人システムの実現を指示した。
 
 ・2016年6月2日に閣議決定された『日本再興戦略2016』内で、有人監視下での圃場内無人システムについて2018年までに製品化する為に、共同研究の支援と安全性確保ガイドラインを策定する事が明記されている。

 ・農林水産分野でのロボット技術の開発・導入は急務であり、(2016年)現在、日本各地でトラクターの自動走行やアシストスーツが実際に使用されデータ収集が行われている。
 
 ・2015年度補正予算事業『革新的技術開発・緊急展開事業』で、ロボット技術等の先進技術の導入実証や先導的技術の研究開発を進めると共に、2016年度予算事業『「農林水産業におけるロボット技術安全確保策検討事業』で、ロボット技術に関する安全確保策のルールづくりに取り組んでいる。

◆ICT導入に向けた取り組み
 ・農業分野へのICTの導入は、篤農家の栽培技術を新規就農者等へ継承させる事に役立ち、生産性の向上や高品質な農産物の生産を向上させたり、センサ等の活用で生産管理の効率化、収量の向上、経営改善など様々な可能性が期待されている。

 ・農林水産省では、『スマート農業の実現に向けた研究会』で整理したロードマップに基づき、2014年度よりセンサや農作業履歴管理システムを活用し、農産物の高品質化・高付加価値化を実証する取り組みの支援や、2016年度から高度な生産管理や鮮度保持技術などと組み合わせて革新的な技術体系を実証研究や普及する仕組みの支援を行っている。
 
 ・農業関連のICTサービスが増加・拡大する中で、今後ビッグデータが扱える環境を作る為には農業情報の標準化を進める事が必要になるので、現在は内閣官房情報通信技術(IT)総合戦略室や総務省等が連携して『農作業の名称』、『農作物の名称』、『農薬に係る情報』、『肥料等に係る情報』、『環境情報のデータ項目』及び『農業情報のデータ交換のインターフェース』などのガイドラインの策定・検討や、生産者等が提供者と契約を行う際にお互いの権利や義務について記載されている利用規約について解説した『農業ITサービス標準利用規約ガイド』を公表しているなど、ICT利用と今後の発展に向けた環境整備を進めている。

◆まとめ
 ・『スマート農業』は異分野の先端技術であるロボット技術やICTを融合させた新しい取り組みである。他にも人工知能技術やIOTといった新たな展開も融合させ、我が国の農業が抱えている課題の克服に貢献できるように、関係者の理解と協力を得ながら取り組みを前進させたい。

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