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「成長」とは何なのか

思い

思いを伝えることって、難しい。

そんな呟きから、第6話は始まりました。

天王寺璃奈にとって、ありのままでいることは人一倍難しかった。
璃奈にとって、"本当の自分"というのは何なのか。

私は、コミュニケーションというのは相手に伝えて初めて成立するものだと考えています。
その中でも、ただ言葉を伝えればいいのではなくて、伝え方にもポイントがある。

「表情」です。

例えば、「ありがとう」と伝えるとしましょう。
それがもし怒った顔であれば、相手にとっては「この人はぶっきらぼうで気持ちが伝わってこない」と感じるでしょう。
しかし、嬉しい顔をしたなら、相手も嬉しく感じるでしょう。

「目は口ほどに物を言う」とはよく言ったもので、表情を伝えることがコミュニケーションには強く求められています。

しかし、璃奈はそれが難しい。

だからこそ、伝えたい想いがあるのに、届けたい想いがあるのに、それが相手に伝わっていない、しかし伝えるのは難しい、そういう悩みに陥ってしまうのです。

友達

ところが、璃奈は「表情など、伝えなくていい」とは思っていませんでした。
ましてや「友達など、必要ない」とも。

しかし、これが璃奈にとっては逆に足枷になってしまった。
なぜか。

本当の気持ちと今の自分がマッチしていないから。

「自分は本当はこうしたい」と言う想いが、いつの間にか「そうでない/そうなりきれていない自分が許せない」という想いに変わっていってしまったのです。

そんな璃奈に手を差し伸べたのが、宮下愛でした。
愛の登場は、璃奈にとっては運命とも言えるでしょう。
なぜか。

想いを伝える前に読み取ってくれるから。

声をかけてきた愛に「怖い」と感じた璃奈ですが、それを愛は即座に読み取り「怖くないよ」と話します。
そんな人は、なかなかいません。
璃奈の「友達は欲しい→でも思いを伝えることは難しい→だから言葉にできない→友達が作れない」という一連の悩みを、全て解決してくれるような存在が、愛だったのです。
なんて天才なんでしょうか。
楽しいの天才は、友達作りの天才でもあります。

愛がもっと凄いのは、「なんか元気なさそうだった」から話しかけたという点です。
そんな人、いますか?
誰か「元気がなさそうだ」と思っても、多くの人は、気にするにせよ「それなりの事情があったのだろう」と考えて過ぎ去ることでしょう。

しかし、愛はそんな気持ちを察して、行動に移すことができる。
ジョイポリスのチケットを「お友達と行ってください」と仰々しく手渡す璃奈に対して、しばらくの後「じゃあ、一緒に行こっか」と声をかけられるのも、その一つ。
さらに、引っ込み思案な璃奈を丸ごと肯定してくれる。 
璃奈にとっての最高の「友達」のあり方ではないかと、強く感じました。
同時に、そんな友達に声をかけてもらった璃奈は、とても幸運であったと言えるでしょう。

変化

そして、スクールアイドル同好会に入部した璃奈と愛。
「もっとたくさんの人たちと繋がりたい」と強く願う璃奈は、「今からでも変われるんだ」とある種の自信を持っていました。

璃奈がジョイポリスでライブをやると決意したのは、そこが自分が変われる場所だと思ったからではないでしょうか。

ライブをするというのは、自分を表現することであり、自分を変えるきっかけになるものだと考えています。
璃奈にとってジョイポリスとは、初めて繋がることのできた愛と訪れている思い出の場所であり、ゲームという得意なことを表現できる場所でもあります。
「たくさんの人と繋がりたい」と願う璃奈にとって、格好の場所でしょう。

そこで、璃奈は「変われる」という自信から、「来週の土曜日」と、早い時期にライブの予定を決めます。

皆に(本当の自分を)見て欲しくなったから、PVはキャラに頼ってしまったから...

そんな理由に、「自信」が垣間見えます。
それに皆が口を揃えて「応援する」と言い、それに「ありがとう」と答える璃奈。

本当の自分を少しずつ、表現できているように感じました。

チャンス

誰にでも、「得意なこと」と「不得意なこと」があります。

璃奈にとって、グラフィックやサウンド、機械やゲームなど一人でできる遊びは得意ですが、運動や歌うことは不得意です。
それを教えてくれる仲間が同好会にはいる。
璃奈にとっては、そこに入れたことも幸運だと感じます。

MCも、璃奈にとっては不得意な分野です。
自分の思いを伝える時間であるMCは、璃奈にとっては1番不得意であると言えます。

そこでかすみとせつ菜は、MCをやらないことを提案します。
しかし、璃奈は毅然としてその意見を否定します。

できないからやらないは、なしにする。

と。
それもまた、璃奈の「自信」と繋がっていっているように感じました。

「多くの人と繋がりたい」と願う璃奈にとって、「ワクワクすること」や「変われること」は、同好会に入ったからこそのチャンスでした。
そして、最大の願いの実現もまた、チャンスとして巡って来ていたのです。

璃奈は、3人に「頑張る」と言いました。
ずっと一人だった璃奈にとって、自分を身近に支えてくれる人がいることはある種の奇跡であって、運命です。
だからこそ、そうした人たちにライブの成功という形で応えたい。
「自分は変われる」という自信のもと、自分の変わった姿を見て欲しいと願うのです。

しかし、そんな「自信」が音を立てて無残にも崩れ去る瞬間を、璃奈は目の当たりにするのです。

自分の「表情」を見て。

成長

成長というのは、出来ることを増やすこと、だけではありません
璃奈は、その重大な事実に気づけていなかった。

「変われる」と思っていたはずなのに、変われていない。
本当の自分と、今の自分のギャップが許せなくなってしまったのです。

「やらないからできないは、なしにする」と語っていた璃奈にとって、「自分を許せなくなること」は1番やってはいけないことだった。
しかし、変われるチャンスを手放してまで、それまでの「自信」が崩れ去った今、璃奈は殻に閉じこもってしまう。
チャンスを掴む前に、諦めてしまいかけたのです。

そんな璃奈に手を差し伸べたのは、愛だけではありません。
同好会全員で璃奈の家に向かい、説得を試みます。

これは個人的に思ったのですが、本当に自分を諦めていたのなら、家に入れさせないはずではないでしょうか。
エントランスを開けたのは、璃奈はまだ諦め切れていなかったからではないかと感じました。

変われるチャンスを与えてくれた人たちに応えたいと願っていた璃奈にとって、そういう人たちを捨てる訳にはいかなかった。
本当の気持ちを知って欲しかった。
それを伝えられるのは同好会の皆しかいなかった。

そう考えていたのだと思います。

自分が変われること、それは璃奈にとって間違いなく成長です。
しかし、変わるために今、何が必要なのかを選び取ることが出来るのも、成長です。

ただ璃奈は、自分の全てを変えようとしていた。
得意なこと、不得意なことにかかわらず、全てを出来るようにしなければならないと、足枷を知らず知らずのうちに、自分ではめてしまっていたのです。
しかもその不得意分野が、自分を1番苦しめ続けた表情であること。
変えられるチャンスだったスクールアイドルとしてライブをすること、その中で自分を変えたいのは、その表情だったのです。

そこで声をかけたのが、あの天才・高咲侑です。
自分は、「こういう場面で登場すべきなのが侑だろう」と思っていたのですが、やはり来てくれました。

(本当にこの人は...)

「私、璃奈ちゃんのライブ観たいな」

また一言で、璃奈を突き動かした。
天才やないかい。

あ、高咲侑の「天才性」については、この間記事で触れたので、是非併せてお読みください。

「今はまだ、出来ないことがあってもいい」

自分を変えるために何が必要なのかを選び取ることを教えた。
まさにそれこそが「成長」です。
出来ないことに悩むより、出来ることを数える。
それが、成長です。

「出来ないことを武器にするのが、一人前のスクールアイドル」

というかすみの言葉も、成長を促す言葉です。
出来ないことを強みに変えていくことで、ファンを喜ばせる。
スクールアイドルとは何なのかを1番考えている、かすみだからこその発言だと感じました。
「できない→やらない」のではなく、「できない→自分を表現する武器にする」のです。
つまり、「表情に出せない」のなら「表情を自分を使って出せるようにする」のではなく、「表情を自分自身『以外を』用いた方法で出してしまう」のです。

この柔軟な発想が実現できるのは、できないことをカバーできる「得意」が璃奈にあったから。
それは、ちょうど段ボールを被っていた自分が気づかせた方法だった。
それもまた、幸運なことだと思います。

そして璃奈は、「たくさんの人と繋がる」という願いを実現し、変わることが出来たのです。

幸運

最後に、璃奈には成長の過程でたくさんの幸運があったと考えています。

愛と出逢えたこと。

同好会に入れたこと。

自分を変える方法に気づけたこと。

たくさんの幸運がありました。
その幸運を運んだのは、璃奈の周りの人たち。
ひとりぼっちだった璃奈は、そういった幸運もあって、成長することができた。
自分自身を変えることができた。

これは、自分にも深く響くテーマです。

自分も、璃奈のように表情を上手く作ることは得意ではありません。
それにより、意図しない誤解もたくさんありました。

そんな自分を変えられる方法は、一体何なのか…

璃奈を好きになったのは、自分と似てるからかもしれません。

なるほどね。

好きでよかった。

もちろん、これからも、ですがね。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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ではまた次の機会に。

さよなら、さよなら、さよなら。

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