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ワクチン予防効果(有効率)の計算方法 その3

ワクチンの予防効果(有効率)は、コホート研究により算出するのが定石ですが、 近年では診断陰性例コントロール試験の手法を用いて算出することが多くなってきました。 近年のインフルエンザワクチンの有効率は、 ほとんどこの手法を用いて報告 されています。 コロナワクチンの報告でも、この手法を用いた論文が発表されるようになってきました。

診断陰性例コントロール試験では、オッズ比を用いてワクチン有効率を計算します。 計算方法を簡単に説明してみます。

ある病院に、感染症状を有する患者が814人受診し、新型コロナ感染症の検査したところ陽性者(感染あり)が480人、 陰性者(感染なし)が334人であり、 その際にワクチン接種の有無を確認したところ、上の表のようになったとします。 検査陰性者(感染なし)とは、新型コロナ以外の感染症に感染して受診した人です。

接種者の感染者は100人ですが、コホート研究のように追跡調査をしたわけではないため、 感染率を計算することはできません。 そこでオッズというものを計算します。 オッズは、感染ありの人数を感染なしの人数で割った数値です。 更にオッズ比を計算して、1よりオッズ比を引いた数値を求めます。 診断陰性例コントロール試験では、この数値82.6%がワクチン有効率ということになります。

診断陰性例コントロール試験のロジックは少々トリッキーです。 ロジックの詳細を知りたい方は、 こちらの解説 をご覧ください。

この手法の長所は、コホート研究に比べて労力や費用が少なくてすむこと、 受診行動バイアスが軽減されることです。 短所は、感染率が高い時には適用できないこと、 絶対リスク減少率とNNTは算出できないことです。 また、発症予防効果と重症化予防効果を検証できますが、 感染予防効果は検証できません。


イギリスでは、診断陰性例コントロール試験によりオミクロン株のワクチン予防効果が詳細に分析され公表されています。 イギリスのレポート(04/28/2022) より、65歳以上の入院例のデータを抜き出してみます。

驚くほど詳細に分析されています。 たとえば、赤枠のデータは、65歳以上で、2回目の接種より175日以降の場合、 酸素吸入、人工呼吸またはICUを必要として2日以上入院した時を重症として、 ワクチン重症化予防効果は73.4%であることを示しています。 括弧内は95%信頼区間です。

日本でも、これくらいのワクチン予防効果のデータを国民に提供してもらいたいものです。

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