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マスクを徹底検証:3日目【RCTのメタ分析,忘れられた2019年までの常識】

※本記事は,連載の第3回です.先に第1, 2回の記事

に目を通していただくことをお勧めします.


【4. RCTのメタ分析

翌日の昼休み、A子、B郎、C美、D介は弁当を片手に理科準備室を訪ねました。昼ご飯を食べながら、先生とマスクについて話し合います。

A子「昨日は、"臨床研究のエビデンスレベル" を学んで、レベル1bのRCTについて検討したから・・・今日は、レベル1aに当たるRCTのメタ分析の話ですよね。」

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先生「そうだったね。昨日も話した通り、どんなに慎重にRCTを行っても、他要因の影響やバイアスを完全に除くことはできない。そこで、複数の研究グループが行ったRCTの結果を集めて、統計的に再分析するんだ。これがRCTのメタ分析だよ。」

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画像引用元:https://www.atelier-roi.co.jp/levels-of-evidence/

B郎「データ規模も大きくなって、より信頼性の高い結論が得られるんですね。」

先生「その通り。臨床の分野では特に、どれか1つの研究だけから結論を下すことは危険なんだ。だから、”臨床研究で効果が示された”と主張するためには、"RCTのメタ分析で肯定的結果がでていること” が最低条件になる。」

A子「マスクについて、RCTのメタ分析は行われているんですか?」

先生「新型コロナ感染に対するマスクの効果を調べたRCTは、昨日若干の例を示した程度で、ほとんど行われていない。だから当然、メタ分析も行われていないんだ。ただ、インフルエンザをはじめとしたウイルス性呼吸器疾患(viral respiratory illness)に対するマスクの効果については、RCTは10件以上行われていて、メタ分析も報告されている。例えばこの論文。」

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https://wwwnc.cdc.gov/eid/article/26/5/19-0994_article

C美「発表が2020年、最近の論文ね。」

先生「この論文の図2が、インフルエンザに対するマスクの効果を調べたRCTを、メタ分析した結果だ。一部を抜粋して詳しく見てみよう。」

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Figure 2. Meta-analysis of risk ratios for the effect of face mask use with or without enhanced hand hygiene on laboratory-confirmed influenza from 10 randomized controlled trials with >6,500 participants. A) Face mask use alone; B) face mask and hand hygiene

B郎「図のAは ”マスクのみ” の効果を調べたRCT、図のBは ”マスク + 手洗い” の効果を調べたRCTを、それぞれ分析した結果ですね。」

先生「オレンジ部に過去のRCT論文が列挙されていて、青部はそれぞれの結果を表している。そして、赤下線を引いた数字が、メタ分析の結果だ。

A子「Risk Ratioが1未満だと "効果あり" 、1を超えると "逆効果" ということはわかりました。」

先生「ただ、確率的要因も考慮すると Risk Ratio はある程度の幅を持つんだ。これは "95%信頼区間(CI)" と呼ばれていて、右端の図では水平の棒またはひし形で示されている。これらが "Risk Ratio =1" の中央線を横切っていたら、有意差がないことを意味するんだ。」

C美「ひし形の方が、メタ分析の結果ね。中央線を横切っているから・・・有意差はなし。つまり、インフル感染に対する ”マスク” や ”マスク + 手洗い” の効果は示されなかった、ということね。

先生「そう、これがエビデンスレベル最上位である "RCTのメタ分析" の結論だ。しかも、この結果はインフルエンザに限った話ではないんだ。もう1つ、RCTメタ分析の論文を見てみよう。」

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https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33215698/

先生「これは、論文の "Analysis 1.1” からの抜粋だ。インフルエンザ様疾患(ILI)に対するマスクの効果を調べたRCTもメタ分析していて、やはり有意差なしの結果だ。」

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Analysis 1.1 Comparison 1: Randomised trials: medical/surgical masks versus no masks, Outcome 1: Viral illness

B郎「ん?よく見ると、水平の棒は全て "Risk Ratio = 1" の中央線を横切ってる・・・ということは、そもそもRCTの時点で、どれ1つとして有意差は出ていなかったのか。それなら、メタ分析しても有意差が出ないのは納得だな。」

A子「先生、ILIって何ですか?」

先生「発熱、寒気、倦怠感、空咳、食欲不振などの症状を伴う疾患の総称だよ。次のようにも説明されている。」

ILIの一般的な原因には、風邪や、風邪よりも頻度は低いが重症化しやすいインフルエンザなどがある。 (中略) ILIを引き起こす感染症には、呼吸器合胞体ウイルス、マラリア、急性HIV/AIDS感染、ヘルペス、C型肝炎、ライム病、狂犬病、心筋炎、Q熱、デング熱、ポリオ・脊髄炎、肺炎、麻疹、SARS、COVID-19などがある。
引用元: https://en.wikipedia.org/wiki/Influenza-like_illness

D介「へー、新型コロナもILIの原因の1つなのか。」

先生"ILIに対してマスクの効果は認められない"、これが過去10年のRCTをメタ分析してわかることだ。ちなみに、"マスクに効果があるというメタ分析も報告されている” と主張する人達がいる。注意しなければならないのは、彼らが言っているメタ分析論文は、RCTだけでなく、コホート研究や症例対象研究といったエビデンスレベルの低い観察研究も分析に含めてしまっているんだ。」

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https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S1477893920302301?via%3Dihub

B郎「それだと、バイアスの大きいレベル2以下の観察研究に、分析結果が引っ張られてしまいますね。」

先生「そうなんだ。こっちの論文に至っては、観察研究だけを分析して、マスクに効果があると結論している。」

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https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(20)31142-9/fulltext

D介「そもそもの分析対象が、バイアスの大きい観察研究だったら、メタ分析してもあまり信頼性が高いとは言えないような・・・」

先生「そう。だから、RCTのみを集めてメタ分析することが重要なんだ。そして、そのようなメタ分析を行ってマスクの効果を示した論文は1つもない。これについては、明治大学科学コミュニケーション研究所がわかりやすくまとめているから、後で読んでみるといい。一部引用しておこう。」

一方、別の研究(Liang, et al. 2020)におけるメタ分析では、データの統合対象にcase-control研究やcohort研究も含めて分析しています。それによると、マスク着用にはインフルエンザなどの感染症リスクを軽減する一定の効果量があったとされています(OR0.35,95%CI[0.24-0.51]下図2)。ただし、case-controlなどの研究デザインはRCTに比べて因果推定が「弱く」、一般的に「リコールバイアス」などのいくつかのバイアス介在の可能性が懸念されます。(中略)
現状実施されたRCTではマスクによる感染症予防効果について有望な結果はほとんど出ていないようです。
引用元:https://gijika.com/knowledge/mask.html

先生「余談だけど、このサイトには次のような追記がされている。」

本記事は「積極的にマスクをしない」ことを一切推奨しません。(2021.1.26一部改訂)

A子「あれ?明治大学は、マスクに効果があるという見解なのかしら?」

先生「これを読んでごらん。」

以上のように、臨床研究で有望な知見があるとはいえないものの、現時点で新型コロナに関する非感染者のマスク着用は、キャンペーンとして促すことによって社会的な衛生意識の高まりを狙ったり、「社会に協力的な構成員」であることのアピールの道具としての重要性は高いと考えられます。 (中略) 一方、マスクの過大評価による弊害も見逃せないものになってしまっています。「マスク着用さえすれば新型コロナに感染しない」などの思い込みやマスクを絶対視・神聖視する姿勢、そしてそのカウンターとしての「マスク警察」「ウレタンマスク警察」などの単語をはじめ、この問題に関する激しい論争も続くものと予想されます。

C美「ええ・・・。”臨床研究で有望な結果は出ていないけど、マスクをしてると社会に協力的だとアピールできます" っておかしくないですか?弊害もあるのに、私たちはこんな理由でマスクさせられてるの??」

先生「この文章は、"マスクをしましょう" とも明言しないことで、うまく批判を回避しているように見えるね。マスク着用の同調圧力が日本中を覆っている状況下では、大学としてはこれがギリギリの発信なんだろう。繰り返しになるけど、 "呼吸器疾患を引き起こすウイルス感染症にマスクの効果は認められない" というのが、コロナ騒動以前の常識だったんだ。例えば、インフルエンザの有症状患者は毎年1,000万人、ピーク時には1週間で200万人以上もいたけど・・・」

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https://www.nikkei.com/article/DGXMZO26197980W8A120C1EA1000/

C美「今のように ”マスク、マスク" なんて全く言われなかったわ。」

D介「臨床試験で効果が出ていないんだから、当たり前だよな。」

先生「アメリカのコロナ政策に絶大な影響力を持つ、疾病予防管理センター(CDC)所長のファウチ氏も、2020年3月にはこう述べていたんだ。」

「マスクを着用して歩くべき理由などない」
「マスクをいじりまくって顔を触り続けると、意図しないことが起こってしまうことが多い」
「マスクは医療従事者や病人にとって必要なものだと思っていればいい」

C美「あれ?この人ってたしか、二重マスクしろとはじめに言い出した人よね・・・?」

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先生「これは2021年2月の写真だね。見ての通り、彼は急に言うことを翻したんだ。」

A子「新型コロナには効果あると思ったのかしら?メタ分析どころか、1つのRCTでも有意差は出ていなかったし、実社会でも効果が出ていなかったのに・・・」

先生「ちなみに、ファウチ氏本人は、カメラが回っていなければマスクを外しているのは有名な話。賢い彼は、体に良くないことがわかっているんだろうね。」

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D介「なんだこれ!茶番もいいところだな!!」

先生「この例からもわかるように、マスクはもはや科学ではなく政治問題なんだよ。RCTで有意差すら出ていないのに、2019年までの科学的知見は葬り去られて、”マスクは新型コロナ感染拡大の防止に効果がある” という設定が2020年に突如として生まれたんだ。」

A子「なんだかおかしな話ね・・・あら、もうこんな時間!!次の授業に行かなくちゃ。あっという間だったなあ。」

先生「昼休みだと、やっぱり時間が短いね。明日の放課後は空いているから、みんなでまたおいで。A子が気になっていた、”マスクに効果がある” と述べている記事を、明日はいよいよ1つずつ検証していこう。」


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