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4月から8月まで続いている異常な超過死亡

【まえがき】

本記事は,以前に公開した記事

の続編で,2021年8月の超過死亡の分析を新たに加えたものです.特に,4, 5月の超過死亡に関する記事に,分析方法の詳細を記しています.


【本記事の概要】

厚労省が発表している人口動態統計に基づいて,2021年8月の超過死亡を3,581人と算出します.また,超過死亡の内訳を探るため,「コロナ死」,「医療逼迫の影響」,「自殺」,「熱中症(暑さの影響)」を順に検討します.


【8月の超過死亡の算出】

厚労省は10月22日に,今年8月分の人口動態統計速報を公表しました.

https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/s2021/08.html

下図はその中から引用したもので,今年(赤)の全死者数の推移を,昨年(青)と比べています.

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今年8月は117,804人の死者数で,昨年8月の速報値を6,213人上回っています.この増加が確率的変動の範囲か否かを検証するため,2012年(東日本大震災の翌年)から2020年の8月の死亡者数データを,厚労省の「人口動態統計月報(概数)」から入手し,

https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/81-1a.html

2021年のデータと合わせてプロットしました.

※2012-2020年は月報の概数であるため,基準を揃えるために2021年の速報値は0.991倍してあります.この補正係数は,2020年各月における「月報と速報の死亡数比」から求めました.詳細は過去の記事https://note.com/info_shinkoro/n/nc9b6eed433deを参照して下さい.

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2012-2020年の死者数の増加傾向から求めた2021年の「予測死亡数」は白丸で,「予測の幅(95%信頼区間)」は縦線で示しています.2021年の実際の死者数(赤丸)は,予測の信頼区間を大きく超えていることがわかります.

超過死亡 = 実際の死者数 - 信頼区間の上限値

として定義する「超過死亡」の値は,3,581人と算出されます.過去の記事で算出した7月までの値と合わせると,超過死亡は下表のようになります.

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この異常性をよりはっきり理解するために,別の方法でも分析します.下図は,1-3月と4-8月の合計死亡数の推移を,それぞれプロットしたものです.死亡数は全て,人口動態統計の速報値を用いました.1-3月はコロナ死が約6,000人いたにも関わらず超過死亡は0人であるのに対し,4-8月は2万人程の超過死亡が出ています.

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国立感染研に取材した朝日新聞の記事(8月12日付)でも,5月までの超過死亡について言及されており,次のように書かれています.

超過死亡は冬場に季節性インフルエンザの影響などで多くなることはあるが、4~5月に多くなることはほとんどないという。

https://news.yahoo.co.jp/articles/5a62426088d5bf411ffc1e018c48713809b51317

4-7月の超過死亡の内訳については,前回の記事で細かく分析したので,本記事では8月の超過死亡の原因を以下に考察します.


【超過死亡の原因の検討】

(1)コロナ死

こちらのサイトから,

https://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/data-all/

各月のコロナ死者数の暫定値が入手できます(A).また,1-5月については人口動態統計月報が発表されており,「特殊目的用コード22000」に分類されている死者数が,より正確なコロナ死者数を表します(B).これらをまとめた表です.

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前回の記事

https://note.com/info_shinkoro/n/n9cb1c5ef1da0

「Q3への返答」で述べたように,コロナ死は部分的にしか超過死亡に寄与しません.死因別死者数の分析から,4, 5月における寄与率は55%と求めました.仮に同じ比率を用いると,8月の超過死亡(3,581人)へのコロナ死の寄与は,481人(= 875 × 0.55)と求まります.


(2)医療逼迫の影響

各都道府県の病床使用率データ

https://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/hospital/

を見ると,8月中旬から東京を中心に神奈川,千葉などの首都圏で重症病床の逼迫が起きたことがわかります.

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その一方で,4-6月頃に逼迫した大阪,兵庫,北海道では,8月は病床に余裕がありました.他の愛知や福岡といった大都市圏でも,逼迫は起きていません.

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8月の医療逼迫の影響を考察します.国立感染研による「都道府県ごとの超過死亡」の発表は11月下旬になるため,現時点では4-7月の分析を基に大まかな見積もりを行います.

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4-7月の分析によると,超過死亡に寄与したコロナ死の内,医療逼迫地域(大阪,兵庫,北海道)で発生したものの割合は,c / b = 25/37 でした.また,医療逼迫地域における超過死亡の内,コロナ死が占める割合は,c / a = 25/31でした.

https://note.com/info_shinkoro/n/n9cb1c5ef1da0

8月の場合,医療逼迫地域は東京,神奈川,千葉ですが,仮に同じ比率を適用すると,(1)で求めた b = 481 人を用いて,a = 403 人c = 325 人と算出されます.概算ではありますが,コロナ死(b)と医療崩逼迫による非コロナ死(= a - c)を合わせた超過死亡への寄与は,

a + b - c = 559 人

と求まります.


(3)自殺

警察庁のWebページ 

https://www.npa.go.jp/publications/statistics/safetylife/jisatsu.html

https://www.npa.go.jp/safetylife/seianki/jisatsu/R03/R02_jisatuno_joukyou.pdf

から自殺者数のデータを入手し,表にまとめました(2021年のデータは9月末の暫定値).

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8月の自殺者数は,過去5年の平均を下回っており,超過死亡には寄与しないことがわかります.


(4)熱中症(暑さの影響)

消防庁の発表によると,2021年8月の熱中症による救急搬送人員17,579人であり,昨年同月の43,060人の4割ほどです.

https://www.fdma.go.jp/pressrelease/houdou/items/210929_kyuki_01.pdf

2016-2020年7月の「熱中症による救急搬送人員及び死亡者数」は,下表の通りです.

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https://www.fdma.go.jp/disaster/heatstroke/items/heatstroke_geppou_2020.pdf

このように,2021年の救急搬送人員は例年の水準を下回っており,熱中症や暑さは2021年の超過死亡に寄与していません.


【まとめ】

過去9年の死亡数推移に基づいて,2021年8月の超過死亡を3,581人と算出しました.「コロナ死」,「医療逼迫」,「自殺」,「熱中症(暑さの影響)」を考慮しても,

3,000人(~ 3,581 - 559)

の超過死亡は説明がつかないことがわかり,これまでの記事で再三述べてきたように,4月から一般接種が始まったmRNAコロナワクチンの関連死と疑わざるを得ません.4-7月の分析結果

https://note.com/info_shinkoro/n/n9cb1c5ef1da0

と合わせると,その数は8月までに14,500人と見積もられます.

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