僕の愛するロッカー達1

60年代の救済者─ピート・タウンゼント

もしピート・タウンゼンドの鼻がもう3センチ短かったなら、あの偉大なる気狂いバンド、ザ・フーはこの世に存在しなかったかもしれない。
”学校に行ってたころ、よくイキがってめかしこんでて、生まれる前から女を知ってるような顔してキザってる奴らが、何かっていうと俺の鼻をサカナにして騒ぐんだ。人生で一番デカイ問題みたいな気がしてたぜ。このクソデカ鼻がさ。俺は思った。よし、それなら奴らにいやというほど見せつけてやろうじゃないか。毎朝、イギリス中の新聞でこのデカ鼻の写真を拝ましてやるよ。そしたらもう誰も笑わなくなるだろうってね”
ザ・フーの前身バンド、ハイナンバーズが活動を開始した1964年、スウィンギング・ロンドンはビートルズを筆頭に、ローリング・ストーンズ、キンクス、アニマルズなどのブリティッシュ・ビートの新鋭達がこぞってボップ革命へ向かっての烽火を開始していた。
美術学生の気取りと、60年代的傾向であった既成の価値観に対する敵意とティーンエイジ文化のタフな無礼講は、アメリカの黒人達のリズム&ブルースから得たワイルドなリズムとハードなアクションで武装することにより、イギリス中産階級のツッ張り坊や達のブリティッシュ・ビートを創りあげたのだった。

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