醒めた場所から熱狂的に祈れ2
醒めた場所から熱狂的に祈れ
秋風が肌寒い季節になってきた。だが僕の胸の中は熱い。 僕の手元にある何枚かのレコードが僕を熱くしてくれるのだ。それを“パンク”と呼ぼうが、“ニュー・ウェイヴ”と呼ぼうが君の自由だ。 熱くなれないような音楽なんてもうたくさんだ。そしてそいつは、いつだって醒めたまなざしを必要としているんだ。『ロック名盤リスト』なんていつまでも大事に抱えていると、ホラ、君の耳はいつの間にかロバの耳になっちまってるぜ。
パンク・口ックも、セックス・ ピストルズの「ゴッド・セイヴ・ザ・クイーン」の発売と共に、ようやく日本でも定着し始めたようだ。ところが驚いたことに、民放連からクレームがついて、この曲、イギリスなみに放送禁止になってしまったらしい。おまけに、エリザベス女王の目と口を塗りつぶしたオリジナル・ジャケットも、ただの横文字だけのジャケットに変わってしまった。何てことだ……国家の批判を標榜するような歌は、聴いてはならんと言うことらしい。だがこの事は、彼らの、パンク・ロックの持っている“毒”の部分を明確に浮かび上がらせる事実だと言えるだろう。とにかく彼らのアルバムの発売が待たれるところだ。
このところ僕のテーブルに乗っかるのは、流行のシティ・ターン ・ミュージックやクロスオーバー・サウンドでもなく、パンク/ニュー・ウェイヴのレコード、それもシングル盤がほとんどで、さっと思いつくままに書いてみると、アドバーツ、イーター、キルジョイス、コーティナス、スロウター&ザ・ドッグス、リングス、モデルス、スクイーズ、スクリュー・ドライヴァー、スナッチ……と言ったグループで、彼らはロンドン周辺の若いティーン エイジャーのパンク・バンドで、今のとこLP発売の予定もなく、マイナーのレコード会社から、シングル盤を1〜2枚出したばかりの連中だ。
彼らの演奏はどれも一様に、最初から最後まで一貫してハードでストレートなロックン・ロールだ。これらのシングル盤をたくさん聴いていくと、ロンドンのニュー・ウェイヴと呼ばれる新しいロックの局面が、まざまざと目の前に浮かび上がってくるのだ。詳しい歌詞を聴き取るまでもなく、幼い顔の中に精一杯ギラギラと、怒りの瞳をギラつかせている彼らのジャケット写真や、「退屈な代」とか、「ファシスト独裁者」、「アイ・ウォナ・ビー・フリー」……と言ったタイトルを見るだけで、彼らの歌に込められた“叫び”は、強烈なエナジーを伴って僕の胸に飛び込んでくる。
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