醒めた場所から熱狂的に祈れ8

スージー&ザ・バンシーズの幻想美

まったくひどい二日酔いの日曜日だ。で、突然唐突にスージー&ザ・バンシーズのことを考え始めた。朝っぱらだというのにさっきからスージーのレコードを発売順に5枚、たて続けに聴いているうちに、頭の中の酔いが次第に覚醒していくのを感じる。
いつだってスージー・スーの歌声は、僕に深く遠い湖のイメージを想い起こさせた。天使というのでもなく悪魔と言うのでもない。まして森の妖精や屋根裏部屋の魔女でも妖怪でもない。あえて言うならば表現者としてのスージーには巫女的な呪術力があるように感じる。だが不思議と陰気さは感じない。バンシーズとスージーの力強い演奏と歌声が放電する強烈な磁気のせいだ。単に文学的と言うのでもない。合田佐和子の描く絵に出てくる暗灰色のポートレート、ハンス・ベルメールの作る腕のない人形たちのイメージ。クールネスとパッションがルツボのように溶けあわさった赤と青のエロス……。もし僕が映画監督だったら、スージーに、リリアナ・カヴァーニの映画「愛の嵐」のシャーロット・ランプリング役をやってもらいたい。

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