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山本塾ドリルの取り組み方

前回「算数って結局なんですの?」で色々と風呂敷を広げてみたのですが、早速2か月間放置してしまいました市民です。今日はその辺の言い訳をしながら、最近気づいたことについてアウトプットしてきたいと思います。

というのも、実は最近僕の計算指導を習得した門下生の子たちが増えてきて、教えることも無くなってきたので具体的な算数指導を始めてみたり色々していたのです。その中で、実は結構最近の中学受験生には「まずい算数の習い方」をしている子も多く、計算力のベースがある子でもそれが活かされていないのではないかと感じることが多くありました。

そういうわけで、やっぱりこうなったら計算だけじゃなくて算数全体について語らないとだめだなと。そうやって元々広げ気味だった風呂敷が収拾がつかない感じになり、放置気味になってしまいました。

なので、まずは一旦、体系的に話をすることは諦めて、ちょっと自分のやっている具体的な取り組みなどから説明することにしましょう。

最近の取り組み

前回のNoteでもお話ししたのですが、僕は計算力を算数の根幹としておくことをそもそもの考えとして持っています。そして、その入り口として山本塾の計算ドリルを用いた計算トレーニングを推奨しております。

そしてよく受ける質問は「1日にどれくらい取り組んでいるのか?」というものです。僕が採用しているルールは恐らく本家の山本先生が本に記載しているルールより厳しく、かなり厳密に取り組んでもらっています。

  1.  原則、四則計算に毎日全て取り組む:実際のテストにおいて、たし算しか出てこない試験やかけ算しか出てこないことはありません。だから、まだわり算を習っていない低学年の子などを除いて、四則計算を1セット単位(つまり最低でも4枚)に取り組んでもらっています。

  2. 四則計算のセット数は、2セット以上を推奨:以上の4枚セットの四則計算を2セット以上取り組んでもらう事にしております。ドリルは四則計算1セットでも10分弱ですが、実際の試験は30分以上あるのが通常。セット数を増やすと意外と「集中力のスタミナ切れ」が浮き彫りになるケースも多く、3セット程度取り組んでもらう事を推奨しています。

  3. 四則計算の取り組む順番はランダムに:実際の試験において、四則計算が同じ順番に単調に来ることはありません。用意した計算セットをシャッフルでもして、たし算の次にかけ算、その次はわり算といった具合にランダムに計算に取り組んでもらいます。

  4. 全て暗算で、答えは上の桁から書くように:これは何処かでまた説明しようと思っているのですが、僕は計算を通じて「脳内メモリ」を増強することを一つの重要なトレーニングと位置付けています。そのため、筆算のようなメモや答えを下の桁から書く行為は禁じています。

  5. レベルアップの基準は2日連続満点:以上のルールの下で、四則計算をそれぞれレベルアップさせていってもらいます。そしてレベルアップの条件は2日連続で◎スコアで100点を取ることです。これは1日2セット取り組む場合は4回連続、3セットの場合は6回連続で満点を取ることになります。要は「マグレの満点は認めない」という基準です。

  6. これらをレベル感に応じて若干調整:とはいえ、以上は「最終的に満たしてもらいたい水準」であり、それぞれのお子さんの段階に応じて調整をしています。例えば、低学年でそもそも速記が出来ないお子さんに◎スコアを目指させても仕方ないでしょうし、その場合は〇を目指そうとか、毎日取り組むだけでもOKといった具合です。6年生の段階では以上を全てクリアできるようになってほしいと考えています。

その取り組みの結果

結論から言えば、30名ほどのお子さんを見させていただいておりますが、全員計算はむちゃくちゃ上達しています。ただ、これは至極当たり前の事です。毎日スクワット100回してたら足がムキムキになるのと同じで、これだけちゃんとトレーニングしたらそりゃ上達します。

もう少し数字を出すと、この取り組みを始めたのは5か月ほど前ですが、以上の条件で山本ドリルを最終レベルまでクリアした方は既に7名いらっしゃいます。学年としては小6が4名、小4が2名、小3が1名です。これを多いと取るか少ないと取るかは皆様に任せますが、上の基準をクリアするのは最難関校を受験する生徒でも骨が折れる水準なので、それなりに「継続は力なり」ということを示せているのではないかなと思います。

そして、僕はこの日々の勉強記録のやり取りを参加者の方々とするにあたって、勉強日記のようなものを作ってもらい、そこにコメントを返すといった事を毎日続けているのですが、意外なことにそういった形式で取り組むことにも以下のような効果がいくつかあるなと感じました。

  1. 保護者の方がどっしり構えるようになる:まず、最も感じたのはこの点です。初期の時点では多くの保護者の方々がとにかく「焦り」を感じており、あれやこれやと色んな勉強法やらを手を変え品を変え摂取している印象がありました。しかし、このように自分のお子さんの「現在のレベル感」が定量的な形で分かる山本ドリルに毎日取り組み、他人に報告することで、「色々なものに手を出すのではなく足場をしっかり固めよう」という意識への転換が進んだように感じます。

  2. 人に報告することで継続する:また、計算ドリルの旅はなかなかにストイックな作業です。1週間単位でスコアを見ていると確かに着実に成長しているのですが、2-3日の低迷なんて日常茶飯事。高レベル帯になると1ヵ月同じレベルに取り組んだ例もあります。僕はその報告に対して軽くコメントをしているだけなのですが、やはり一人で壁打ちに取り組むよりは保護者の方も精神的に楽なようです。その結果ある日「掴んだ」かのように急成長が始まるケースも多く、継続の力を感じます。

  3. 何故か子供がやる気を出す:そして、これは非常に不思議な現象なのですが、かなりの高確率でお子さんはやる気を出してくれます。その理由は一つには、段々難易度の上がる塾の試験などと異なり、同じ基準で同じものに取り組むことで「自分の成長を実感しやすい」点にあると思います。そしてもう一つは、どうやら子供は僕のような直接面識のない「第3者」であっても、誰かに自分の勉強結果を報告して、何かしら褒めて貰えるのが嬉しいようです。だから、結構ストイックな計算練習をしてるはずなのですが、ちゃんと継続してくれるのだなと思います。

現状僕はキャパシティいっぱいなので、新たに門下生を募集する予定はないのですが、こういった取り組みはもっと多くの方がやっても良いのではないかなと思いました。別にこの方法論に何らかの権利を主張するつもりもないので、指導者の方々はご自由にご活用ください。

計算指導を通して得た気づき

それでは、以下にこれらの計算指導を通して得た「気付き」を何点か書いていきます。少し過激な主張に聞こえてしまうかもしれませんが、これは正直な感想でもあるのでご了承いただければ幸いです。

その1:進学塾で配られる計算ドリルに基本的に効果はない
まずいきなりブッコミますが、これは最も大事なことです。どこの進学塾でも毎日取り組む教材として、何らかの計算ドリルを提供していますが、これらは基本的に無意味だと考えています。それらに毎日取り組んできた真面目な生徒さんでも、全く山本塾ドリルには歯が立たない事例ばかりです。それは何故かは単純です。それらの計算ドリルは「それっぽい」雰囲気を出しているだけで、トレーニングとしての負荷が低すぎるからです。

例えば、一例として日能研が出しているマスター1095題という計算ドリルを見てみましょう。これは「1日5分、毎日3題」という時間設定がついていますが、はっきりいって(少なくとも難関校を目指す方にとっては)冗談のようなレベルでしょう。サンプルから見える小4のドリルには「870-240」のような式が載っています。つまり、このドリルでは、この計算は1分かけてよい計算ということです。一方山本ドリルの基準では、これはひき算Lv.12にあたるので「1問3.8秒で正解するのを36問続けて◎」となります。

小6の問題集になると少しは問題は複雑になりますが、それでもピクニック気分のような時間設定で量も少なすぎます。そして、これは日能研がたまたま市販のドリルを出しているから槍玉に挙げただけで、他の進学塾のドリルも同様です。こういった計算ドリルは残念ながら「それっぽい事をやらせている」という塾側の言い訳作りに近い側面があり、効果はかなり薄いです。こんな練習では当然、いくらやっても計算ミスは減りません。

その2:計算力は低学年のほうがよく伸びる
これはなかなか驚いたことです。当初自分は、山本塾ドリルは低学年には「勉強習慣をつけるため」程度に取り組ませることにして、高学年になってから上に述べたとおりに負荷を上げていく形式を推奨していました。しかし、想像以上に低学年生徒の吸収が速く、もしかしたら「計算力が最も伸びる適齢期は小3,4辺りなのではないか?」と感じるようになりました。

事実として、僕の門下生の中では計算速度の伸びは小3/4年生の子たちが最も速いです。ただ、これは一つ「時間的制約」という外的要因が理由としてあるでしょう。小5/6年生は塾も忙しくなり、なかなか計算ドリルに取れる時間は多くありません。しかし、それを差し引いたとしても、やはり低学年の生徒のスコアの伸びが著しいと評価せざるを得ないのです。

たまげた一例としては、ある小3の生徒さんは、最初はレベル1の計算ですら〇スコアがやっとで、1か月くらいそのような「計算習慣をつける」ことが目標の状態が続きました。それがある日急に「コツ」を掴んだのか瞬く間にスコアを伸ばし始め、今はほぼ全ての四則計算が最高レベルに達しています。これがたった2-3ヵ月の間に起きたことなのです。

これはあくまで母集団も少なく相当ラフな仮説にすぎないのですが、自分には何かしらの「計算適齢期」があるような気がしてなりません。その時期を逃すと、計算力を鍛えるハードルが上がってしまい、処理速度が上がらないことから演習量もこなせず、算数がより苦手になる、という負のスパイラルに入りやすいのではないか。そんなことを感じます。

その3:一度鍛えたレベルには、いつでも戻れる
これは、僕が計算練習を最もお勧めする理由といっても過言ではない事です。僕は、特に低学年の生徒にむやみやたらと「先取り学習」をさせることは、あまり意味がないと感じています。その理由は非常にシンプルで「忘れるから」です。低学年で難しい特殊算の解き方を習ったところで、それを3か月後、1年後覚えているかというのは全く保証されません。

その一方で、計算練習というものはかなり再現性が高いと自分は考えています。もし、こんなに毎日計算を頑張っていても1週間休めば元通りになってしまうのであれば、正直言ってあまり意味がないでしょう。しかし、少しばかり計算ドリルから離れても、どうやら「一度鍛えた計算レベル」の辺りには戻ってこれる様子が実際に門下生の方々からも伺えます。そういう意味で、しっかりと着実に「積み上げ」が出来ているのです。

そして、自分自身もそれをある意味体現できていると思います。僕は大学受験ももう10年以上前で、教育業界などに関わっている訳でもないのですが、未だに並大抵の中学受験生に負けないレベルの計算力を維持できています。例えば、ドリる算数さん(Twitter @drill_sansu)のやっている中学受験算数アプリ計算コンテストなどで僕のスコアを見て貰えれば、まあそう言い張るだけの計算力があることは納得してもらえるかなと思います。

でも、別に今でも毎日計算ドリルを続けてるとか、そういうことは全くありません。勿論、全盛期と比べたら随分錆びついたなあと思う事ばかりで悲しくなるのですが、それでも現在も高水準で安定しているのは小さい頃に限界まで行った計算トレーニングの賜物だと思っています。中学受験が終われば特殊算のやり方など算数特有のテクニックは忘れてしまうかもしれません。でも、徹底的に身につけた計算力は、一生ものです。

まとめ

長くなってしまいましたが、今回は以下のことについて説明しました。

①山本塾ドリルの取り組み方
②低学年は伸びが凄い。もしかしたら計算には適齢期がある?
③計算力は一生モノ

まあ実は、僕が言っている「計算トレーニング」というのは山本塾ドリルは序章に過ぎなくて、ちゃんと次のステージもあるのですが。まずは次回、山本塾ドリルの水準にあたる「普通の四則計算」について、どういった技術でトレーニングをしているかといった方法論を語ってみようかなと思います。実はここだけでも、語ることはかなり多いです。

ちなみに、こんだけ宣伝しておきながら、山本塾の山本先生と僕は全く面識もありません(笑)。でも、YouTubeなどで発信されているのを聞いて、本当に算数がよく理解されている方だなと感じますし、こういった方がより評価されてほしいなと純粋に応援させていただいています。なので、山本先生は月額2800円の動画授業配信『進学塾の算数』も行ってらっしゃるので、こちらももっと注目されてほしいな、なんて思ったり。

この辺を交えて、関西と関東の算数の教え方の違いみたいな話もそのうちしてみたいなと思っています。いつになるかはわかりませんが、乞うご期待。

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