見出し画像

よりよい自分へとステップアップするために大きな「一歩」を踏み出すことは、人生においては往々にして良いことだとされており、成長した自分を俯瞰したときに「あの一歩が大きかった」と感じることはあると思います。

仕事においては、プレイヤーから責任者へとステップアップするとか、配置転換でまったく未経験分野の部署にチャレンジするとか、そういう選択を自ら選ぶというのが、この「大きな一歩」にあたります。しかし、この「大きな一歩」に、悪影響を及ぼす逆向きの一歩があることはあまり言われていないのではないでしょうか。逆向きの一歩とは、ステップダウンに繋がる、残念な踏み出しです。

例えば、食事を80%に制限して減量するダイエットに挑戦している場合を想像してください。一週間、食べる量を今までの80%に落としたとします。人は100%でいたいと感じる傾向にありますので、1日あたり20%の「我慢」を自らに強いているわけです。ところが、ここで悪魔が囁きます。「7日間80%で我慢したんだから、今日だけは100%食べたとしても、トータルで見ればダイエットは成功しているよ」と。なるほど、(0.8×7日間+1.0)÷8=0.825ですから、たった1日100%食べたとしても、8日間トータルとしてはおおよそ減量に成功しているわけです。しかし、この悪魔の囁きに従うことは、逆向きの「大きな一歩」であり、大きな間違いです。

想像してみてください。マラソンでぶっちぎりのトップを走っているランナーがいたとします。終盤で後続に10分以上の差をつけて圧倒的な1位にいるのですが、走り続けるのは疲れます。しかし、「ここで立ち止まって5分休憩しても、5分差だから、まだ余裕がある」と考えるでしょうか。それは通常ありえません。なぜなら、立ち止まった瞬間に、継続していた気持ちが切れるからです。5分後に再び走り出したときのコンディションは大きく変わっており、後続に追い抜かれるリスクは高まるでしょう。

上の例でいえば、ダイエットの成功は、80%の食事を継続しているうちに、その80%が自分の100%に変わり、頑張らなくても減量に成功することにあります。継続することに意味があるのであり、平均値はあまり関係ありません。「1日目80%、2日目60%まで頑張ったから、3日目は100%食べても平均80%で成功!」とはならないのです。

このステップダウンに繋がる逆向きの「大きな一歩」は、衝撃の一歩です。先ほどのマラソンで立ち止まるという例もわかりやすいですが、継続していたものが途絶えるというのは、考えている以上にインパクトがあるものです。一念発起してチャレンジングな部署に異動を願い出て叶えられ、しばらく頑張っていたが、だんだんしんどくなってきたスタッフが、ふと元の部署を懐かしみ、そこの事務所を訪れたとします。前の部署の仲間は、温かな声で「頑張ってる?」と声を掛けてくれます。そこで気持ちが切れてしまい、新しい部署で頑張っていく自信がなくなってしまう、というのが仕事におけるステップダウンの「大きな一歩」の例です。たとえその後に「やはり新しい部署で頑張ってみよう」と思い直したとしても、それはリスタートであり、継続ではなく「1から」となってしまうのです。

「継続は力なり」とはよく言いますが、その真意は「継続することが当たり前になったとき、それは力になる」ということなのです。厳しいと感じるトレーニングを継続していれば、その厳しさが当たり前になり、それはもはや厳しいトレーニングではなくなります。これが本物の「力」です。

悪魔の囁く「ステップダウン」の一歩を踏み出さず、ステップアップを継続する人間でありたいものですね。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?