『Il Cantico del Sole』誕生秘話
第6話 太陽の賛歌
「Il Cantico del Sole」誕生秘話をここまでお読みいただき、ありがとうございました。カルツァス氏との出会いから初演に至るまでの長い道のりを振り返ってきましたが、最終話となる第6話では今回の演奏会にかけるインフィニの想いをお伝えできればと思います。
曲が完成してから4年の月日が流れ、ようやくこの作品をインフィニとカルツァス氏の共演でお客様に全曲お届けできる日が来ました。カルツァス氏がいない状態で全曲初演することもできましたが、私たちはその選択しませんでした。この作品はカルツァス氏とインフィニの共演で初めて完成する楽曲だからです。
コロナ禍で直接顔を合わせることがかなわない時間も、私たちはリトアニアとのつながりを絶やすことなく、カルツァス氏と頻繁に連絡を取り続けてきました。インフィニの演奏音源を何度もお送りして聞いていただいたり、カルツァス氏が編曲してくださった複数の楽曲を演奏会で披露したり、時にはオンラインでお菓子パーティーを開いたりもしました。カルツァス氏とインフィニの絆は、コロナ禍を経てより一層深まりました。リトアニアと日本は距離こそ遠く離れていますが、カルツァス氏がおっしゃっていた「私たちは音楽でつながっている」という言葉を軸としていつも心の中に抱いていたので、お互いの存在はいつも近くに感じていました。
時間をかけて温めてきた「Il Cantico del Sole」世界初演のステージがいよいよ間近に迫ってきました。これまでカルツァス作品の素晴らしさに触れてきた私たちは、可能な限り多くの作品をお客様にご紹介したいという想いから、今回の演奏会を「カルツァス作品展」と題し、開催することにしました。第1ステージでは、私たちがカルツァス氏に出会ってから歌い続けてきた作品をインフィニの演奏でお送りします。
続く第2ステージでは、カルツァス氏と深い親交のあるインフィニのアドヴァイザー、荒木泰俊氏によるバリトンの演奏をお届けします。こちらの作品はカルツァス氏が2013年に作曲したものであり、今回の演奏会が日本初演となります。2019年にジョイントコンサート“Harmonija”の公演のために来日したカルツァス氏から楽譜を受け取った荒木氏は、翌年のカルツァス氏の誕生日にサプライズとしてこの曲を収録したCDを送ったそうです。このエピソードは二人の友情の深さを物語っています。
最終ステージはようやく迎える「Il Cantico del Sole」世界初演のステージです。カルツァス作品の魅力がこれでもかというほど詰め込まれた組曲であると感じています。曲によって変わる色合い、空気感、壮大でありながら繊細で美しいハーモニー。インフィニのアドヴァイザーであり、ピアニストの菊池大成氏のために書かれたピアノ伴奏も見どころのひとつです。カルツァス氏と共に、いつか舞台でたくさんのお客様に届けられる日を夢見て、1曲1曲を大切に作り上げてきました。「Il Cantico del Sole」がどのような曲であるかは、初めて楽譜を手にした日からこの素晴らしい曲の数々を最高の状態でお客様に! と奮闘してきたインフィニの音で、お客様の耳、そして心で感じていただきたいので、ここで詳細に語ることはしません。作曲者のカルツァス氏自身の指揮で歌える喜びを噛みしめて、曲の魅力を余すことなくお届けします。この大きく美しい音楽を受け取ったとき、これまで経験したことのない苦難の中でも私たちを突き動かしてきた、この曲の持つ力をお客様にも感じていただけたなら嬉しいです。
2022年11月10日。「カルツァス先生が日本にご到着されました!」との知らせに多くの団員が胸を熱くしました。4年の時間をかけて培った絆が奏でる音を、お客様に手渡せる日がすぐそこまで迫っています。待ち望み、待ち焦がれた日。世界初演の記念すべき瞬間をここまでお読みいただいた皆様と共有できたなら、それほど幸せなことはありません。コーラス・インフィニ☆が全身全霊でお届けする「太陽の賛歌」、ぜひ客席でお聴きください。