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【地券ってご存じです?】

ちょうど1年前のお話し
以前取引した売主様からのご紹介で『私の知り合いが困っているから相談に乗ってほしい』と連絡がありました

先日お世話になった売主様からの紹介ということもあり、「紹介営業は究極の営業」との教えを忠実に守っている私は早速その紹介者に連絡を取りました

売主(以下、“売”):「いやね、売れればいいんだけど、どうやって売ったらいいのかわからなくて、先日〇〇さん(紹介者)が家を売られたそうで、いい不動産屋さんを紹介してくれるって話したんだけど、でもお話ししてもネ…」

なんか売りたいのかどうなのかよくわからない
私:「とりあえずお会いしてお話し聞かせてください」
売:「来てもらってもネ…どうしても来られるの?」
私:「電話ではですネ、ちょっと状況がわからないのでお会いしてお話ししたほうがいいと思うんですヨ」
売:「そうなの…でも午前中は病院行くから 午後からならいますから」
私:「では午後1時でよろしいですか? お話しさせて頂くときに権利書を拝見させてもらってもよろしいですか?」
売:「あ、ぁぁ はい…」
私:「?」

このあと相続で回ってきた話や息子さんの話などありましたが、今回は割愛します

 約束の日時に訪問
ご自宅は賃貸(具体的な建物の描写は伏せます)でお住まいで、売りたい家にはお住まいではないとのこと
 その家は10年前にリフォームしているとのことらしいがなんでそっちに住まないんだろう…?

私:「お世話になります。上がってもよろしいですか?」
売:「暑いでしょう、扇風機しかないけどいいです?」

今回紹介者は90代のご年配の方だったこともあり、今回の売主様も結構なご年配の方
このあと電話でも話した経緯の話を改めてお聞きして、さっそく売れるかどうかの査定のお話しへ

私:「さっそくその土地、建物の権利書を拝見させていただけますか?」
売:「あ、ハイ これなんですけど私よーわからんほいネ」

出てきたのはなんと【地券】
この仕事をしてきて初めて見ました
本物を見ることはないと思っていましたがここにきてまさか出てくるとは…
“出てきたらどーしょーか…”と冗談交じりに恐れていたことが現実に

まず【地券】の知識がほとんどありません。
イメージとしては明治時代に政府から株券みたいな形で昔の禄持ちの武士みたいな人に交付された権利書(有価証券?)という印象

私:「こ、これが権利書ですか…地券って初めて見ました」
売:「私もホイじゃけ知ってる人に聞いてみるけど、価値ないとか言われるし、骨董品ならいいかもしれんていわれるし、アンタいらん?(欲しくない?)」

骨董品・資料としては面白そうですが、さすがにちょっとこの土地を背負いこむような気がして丁重に遠慮しましたww
私の地元には城下町もあり、古い町なのでこういうこともあるのだなとおもいつつ、どうしたものかと…

 地券は1872年(明治5)以降、明治政府が土地所有者に発行した土地所有権を証明する証券です。今の登記事項証明書(権利書)にあたるものです
 しかし1889年3月、土地台帳規則制定に至って廃止され現在の権利書制度に繋がっていきます

 制度自体がないのでこれだと現在有効なのか権利者かどうかもわからないので、もう少し詳細を調べるために…
私:「恐縮ですが固定資産税の納付書ってきてますか?あれが来てるなら現在の権利者としてほぼ間違いないと思います」とお聞きしました

 どのくらいの土地・建物を相続し権利があるのかこれで大体がつかめる
とりあえず査定せねば…

 それで分かったのは江戸時代、ある大名の支藩が置かれた場所にあり、家と建物のほか田畑も含まれた比較的広い敷地でした。
 地券を明治政府から交付されていたということなので、おそらく当時は名のある地位の方だったんだと想像できます

 しかし調整区域内で道路までは敷地内に無理やっこ作ったような幅1.6m程度の農道で接道(公図には道はない)
 敷地の大半は農地で農転(農地転用)は難しそう
農業委員会にも確認しましたが、やはり売買は断念せざるをえない結果で
現在の状況だけお伝えし、力不足ということでお断りしました

 昔の歴史的なものを引き継ぐというのは、引き継いだ子孫は果たしてうれしいことなのか…
 不動産の仕事をしていると、いろいろ勉強になります
(※文化財に指定されていると国からの補助金などがあるそうです)

追伸 : 先日Twitterに挙げたところ多くの反響を頂きました
いろんな知恵も拝借しました。大変参考になりました。併せてお礼申し上げます
<m(_ _)m>

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