マガジンのカバー画像

パレスチナ/イスラエル問題

16
運営しているクリエイター

2024年2月の記事一覧

「歴史家論争」再考(2)

「歴史家論争」再考(2)

 この論争は「歴史家論争」と呼ばれており、確かにハーバーマスによって「歴史修正主義」と批判された4人は――それぞれ傾向の違う――歴史家であったが、ハーバーマスをはじめ、論争に参加した者の多くは、歴史の専門家ではなかった。また、この論争を日本に紹介した『過ぎ去ろうとしない過去』の訳者たちは全員が歴史家ではなく、ドイツ哲学やドイツ思想の専門家であった。訳者の代表であり解説を書いた三島憲一によれば、論文

もっとみる
「歴史家論争」再考(1)

「歴史家論争」再考(1)

 先日、「ガザをめぐり対照的な南アとドイツ」の中で、「ドイツは、ナチス・ドイツによるホロコーストを反省したのは良かったのだが、それが盲目的なイスラエル擁護につながってしまい、結果的にイスラエルによる「ホロコースト」を支持するという自己矛盾にまで陥っている」と書いた。しかし、このようなドイツのイスラエル支持の姿勢は、果たしてホロコーストに対する反省自体が本物だったのか、という、より根源的な疑問を、栗

もっとみる
「小説 その十月の朝に」について

「小説 その十月の朝に」について

 『現代思想』2月号は「パレスチナから問う」という特集号で、収録された論文の大半はいずれも力作ぞろいですので、いずれ機会をみてご紹介できればと思います。

 今日はその中でも異色の作品、岡真理さんの「小説 その十月の朝に」というちょっと奇妙な小説を紹介したいと思います。岡さんが現代アラブ文学の研究者で、パレスチナ問題の専門家として縦横無尽の活躍をされていることは周知の通りです。その岡さんが小説?

もっとみる

UNRWA職員のイスラエル奇襲攻撃関与疑惑について(ガザ危機メモ)

 国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の職員が、ハマスによる10月7日のイスラエル奇襲攻撃に関与していたとの疑惑が浮上したのを受け、アメリカ、ドイツ、日本など10カ国以上が資金拠出の停止を決めた(1月29日時点)。

 一方、資金拠出の継続を表明したノルウェーのアイデ外相は28日、「この深刻な人道状況でUNRWAへの資金を削減することの影響の大きさを考えるべきだ。我々は何百万人もの人々を

もっとみる