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初めての失恋

喧騒は嫌いだがクリスマスを待つ街の様子は好きだ。
案外オレはまだ若いのかも知れない。

引き寄せられるようにして昔住んでいた街の駅で降りた。

人生初のデート場所の喫茶店はオレ記念館のようにそのままの姿を保っていたが店名が変わっていた。
やがて我が母校の姿が見えてくる。正門を通過し裏側に回り込む。
体育館脇の楓の木。
ここで三回舌を噛みながらアイツにデートを申し込んだ。

さらにその奥にある緑深い公園。はたして今の人たちはデート場所に公園なんか選ぶのかな。
カラスの一声。

通称ポンコツ時計台。
オレの前であの日を演じるように二人の情景が浮かぶ。
別れを告げたアイツが泣いて、オレが慰めている。今でも思うがこれ絶対逆だろ。

アイツ今頃どうしているのやら。
返事をするように風が吹いた。

シアワセよ。

ならどうして泣いた。

風はぴたりと止んで暫らく静寂が支配した。

うつむく色白の横顔をかき消してオレはその場を後にした。