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私を待っている

朝から降り続く雨。止まなければ止まないでいい。
でもせめて夫の最期の言葉だけはあまさず聞かせてちょうだい。
「来世でまた会おう。次はもう少しマシな身体で生まれてくる」
「イイわよ。じゃあ目印を決めようね。強く抱きしめてちょうだい。絶対忘れないで私を待っていてね」
妻は病室を飛び出し声を殺してすすり泣いた。

深夜帰りの高校生の娘を父は激しく叱った。
「子どもが彼氏なんかにうつつ抜かして!」
「彼氏なんて言われたらよけいに悲しいじゃん!私フラれたんだからね!」
「ミソミソ泣くな!お前を振るオトコがバカ者だ。そんなバカ者にわざわざ泣いてやるなんてお前も大バカ者だ!」
父は立ち上がるや娘を両手でぐいと引きよせ強く抱き締めた。
(へぇ、お父さんこんな匂いの香水使ってたんだ)
お父さんに抱き締められたの初めてだったかな。どうだったかな。
ええい!そんなことどうだっていいの!
お父さんもっとぎゅうしてね。
そしたら泣きやんであげる。