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3rd.EP"HIGH NECK"/ヤギ・ハイレグの帰還(中編)


幕間. 『トーキングモカフラペチーノ』


今回もちゃんとやってくれました。
レオブタヤギハイの恒例でありました、E.Pのリリースごとに開催するトーク動画『トーキングモカフラペチーノ』(以下『トーモカ』)。レオブタがレオブタとして出てくることは少ない(ほぼ無い)し、ヤギハイはこういうときでないと本当に出てこない。ヤギハイあんなに曲の中ではかっこいいのに、フリートークになるととたんにフワフワするんすよね。そこがいいという話でもある。カシミヤだから仕方ない。

『レオブタヤギハイの「トーキングモカフラペチーノ2023春」』より

『トーモカ』で助かる命はたくさんありまして、まずレオブタの声が結構な確率で迷子になる点。そしてそのせいでほぼ素なのではと思われる声が混じる点。ヤギハイの話題がフワフワして迷走しがちな点。そしてだいたいヤギハイの迷走を受け止める側に回っている点でレオブタのお兄ちゃん属性が発揮される点。最後に話題がなさすぎて思いつきで話す結果、いろいろな新事実が発覚する点です。

なんだろう、飲み会での友達同士の会話をただただ聞いているような圧倒的安心感。本当にあんなイカした曲を書いている2人なんだろうか?という疑問が時折頭をかすめますが、この振り幅も2人の魅力。

個人的なトーモカ大好きポイントは
レオブタがヤギハイに打つ相槌。「はいはいはい」とか「(カードキーの下りで)そのヤギハイ見たことあるわー」とか「そうなんよ」とか。普段敬語でしゃべってる感じなんで、素っぽくていいですよね。あとは笑い声。とくにパリの下りでのレオブタの笑い声はあまり他では聞けない。
②ヤギハイの「はぁ、あっ、はあ~~~~↑↑」っていう焦った時の裏声。
③ヤギハイが花見の時期を逃したとかいいつつ花見にとことん否定的なところ。
④ひな祭りのフォーメーションに現代フットボールの視点から苦言を呈するところ。「あれはひどい。」でくっそ笑ったしチェルシーの可変サイドバックのところで耐えられなかった。レオザの名前出すのは卑怯。
⑤ぽこピーを馬鹿にできないヤギハイ兄妹のやらかし物語。

たった30分しかないし内容も花見と旅行とカードキーしかないのに満足度が非常に高い。もっとやってほしいけどE.Pを出さないとやれないのがトーモカ。E.P縛りじゃなくてもええんやで。。。

冗長失礼いたしました。曲の感想に戻りたいと思います。

3. 『舌打ち』


はいきたこれこれこれこれ!!!!!!ってなLBYH真骨頂。
「『レオタードブタとヤギ・ハイレグ』ってどんな曲やってんの?」って聞かれたときに、『幸せジャンク生活』とか『Under The Club』とか様々代表曲ありますけど、最新ならこの『舌打ち』を挙げるリスナー多そう。ていうかLBYH好きな人ってそれぞれド嵌り曲が結構違うのがすごく面白いなあって思ってます。「おい、Ctrl,Alt,Del忘れてるぞ」とか「レオブタとヤギハイのテーマが至高では?」とか。お前ら全員大好きだぞ。

drillを感じるライミングとビート。毒をまき散らすレオブタと、その勢いをすかすような乗り方で底を見せないヤギハイ。ファンが一番レオブタヤギハイに求めていたものをきちんとホームランで打ち返すのはさすが。ぽんぽこなら「性格が悪い」というんでしょうね(笑)

【福岡】博多の穴場飯はうどんってマジ!?麺巡りしたら最高すぎました!!ごちそうさま!!【2日目】」より

さて、いきなりですが『ピーナッツくん』のやってるラップってのは実はすごいことだと思っていまして。というのも、ただVirtualのガワでラップするだけのラッパーに見られがちなのかもなって思うんですけど、『ピーナッツくん』は曲をしっかり聞いてみて「あ、違うわ」って思ったんですね。
なんでだろうって考えてみたら、Vtuber全体(とそこにいる自分)が浴びてる視線そのものをラップにしてディスりまくってる。「言いたいことがあるからラップやってんだ」ってのを強く感じます。

そしてその「言いたいこと」に必然的に絡んでくるのは『カネ』です。マーケットとして急成長している分野で日々お金が飛び交っているのを視聴者目線でも感じます。スーパーチャットをはじめ、グッズ、ショップ、オンラインライブ…そういう経済的側面がVtuberというカルチャーを根付かせる養分になっているのは間違いなくて。
やっているライバー本人たちはそのことをさらに感じているのは明白です。様々なライバーがそれぞれカネとの距離感を測りながら活動している中、我らがレオブタくんはラッパースタイルど真ん中で泥をぶん投げてきます。さすがだぜ。

気に入らないことあるけど適当に見過ごしている今看過スタイル
あいつ嫌いとかそれはダメとか言って過ごすよりbaking pie
精神 根性焼き ビジネスライクな君友達
だんだん出ていく体のサビ 全てを飲み込んでる俺カービィ yeah
気に入らないことあるけど適当に見過ごしている今看過スタイル
あいつ嫌いとかそれはダメとか言って過ごすよりbaking pie
状況で変わるpuppy あの経営者ウザくてswerving
だけど金になる話は大事 全部奪い取るあいつの大金 yeah

舌打ち

全体的に歌詞のままなんですけど、読み解く際にbaking pieがずっとわかんなくて、何度も聞くうちに、baking pieって「利益を生み出す」ってことかって思い至りました。「精神 根性焼き」「だんだん出ていく体のサビ」っていうのが「やりたいこと」から遠ざかっていく感が出ていて、そこからの「すべてを飲み込んでいく俺カービィ」のバースは大人っぽさがあまりない、少年の心の表れとしてカネとの関わり方の対比関係が際立ちます。
puppy,「子犬」swerve「突っぱねる」、大事、大金、もかなり作りこまれてて聞き心地も抜群。テーマ的にも「カネ」とhiphopは親和性がかなり高いのもあって本格hiphopになってます。

一点張りする尻軽Flow 俺ビッチ呼ばわりでも気にならない
てかそもそもじゃなきゃやってないスタイル LBYH乗るCar

舌打ち

 『The Iron Steppers』でもそうなんですがLBYHという呼称が定着した感があります。Leotard Buta & Yagi Highleg。こう書くとButaもYagiも動物感無いですね。海外の人はそういう名前だと思いそう。

閑話休題。曲に戻りましょう。案件狙いの配信などを揶揄する声や、ゆるキャラ的な立ち位置で正統派ライバーとして勝負しないことをズルさと見る向き。個人的にはすべてイチャモンだと思っていますが、そういうのも無くはないのでしょう。「LBYH乗るCar!」の発破から、『レオブタ』は以下のバースで次々轢いていきます。

ばあちゃん俺Don't stop 別にないよPost 
記事に書いてボースト ビリリダマ爆発
実に面白いって言う湯川先生みたく 案件連絡 You got a message
数字はなんぼ なにそれ雑魚 俺たちサンゴか真っ赤なマンゴー
むかつくなら努力しなさい それしかないからやるしかない
運とか才能とか環境 俺ラッキーパンチ当たったみたい
けどまだ足りないから媚びへつらってる まだまだ何も変わっていない

舌打ち

車の印象をたたきつけての前半8小節は爆発イメージと炎上関係かな?それでも止まらないVtuberとしての活動。「数字はなんぼ なにそれ雑魚」は言われた事実があるのかどうかはわかりませんが(まあ…なければリリックにはしないでしょうね)「むかつくなら努力しなさい それしかないからやるしかない」っていう基本姿勢は見れる限り活動の中で一貫してて。負けず嫌いなレオブタ、個人的にすごく好き。ラッパーはある程度ビッグマウスなんですけど行動が伴ってると気持ちいいですね。見返してやれ。

「運とか才能とか環境 俺ラッキーパンチ当たったみたい」はもう言及するまでもない「刀ピーoverdose」の大バズのことでしょう。「けどまだ足りないから媚びへつらってる」。ファンならピーナッツくん関連の楽曲がoverdoseに比して再生数が足りてないことは心底感じているでしょう。本音は控えますがおともナッツは全員同じこと思ってるはず。いや全然足りねえのよ。逆に考えると、火が付けば一気に広がるのがポップミュージックの特徴。それを狙うには今流行に乗っている『ピーナッツくん』を知ってもらうのが一番の戦略であるのは確かに妥当。

2023年前半時点でもどんだけイベント出るんだよという状態です。森、道、市場だったりMU2023だったり。ちょっと「使われてるな」って思うことは以前はあったんですがMUでの人気を見てちょっと考えが変わりました。音楽ストリームの一つになってきています。個人的にtofubeatsとかkzとかに認知されているのがすごく良かった。

どこまでも冷静だなって思うのが、ちゃんと「ラッキーパンチ」だって言い切るところですよね。配信上でこすり倒しているんですけど、「うざい!」「うるさい!」と言われる前置き以上に見てない気がします。計算づくで作っていると思うんですけど「まだ届いていない」からこそ冷静に俯瞰できるのかな。ステップアップにバズを大いに利用してほしい。

刀ピーOverdose擦りがうざすぎるピーナッツ君【 歌衣メイカ/ピーナッツ君/天開司/成瀬鳴】より
刀ピーOverdose擦りがうざすぎるピーナッツ君【 歌衣メイカ/ピーナッツ君/天開司/成瀬鳴】より

Friends on the trend
黙れ 嘘とほんと見抜け あいつ乗るエレベーターの上 
俺も乗れたら乗るし 仲良しいつでもCall me

舌打ち

「Friends on the trend」(流行りの友達=調子良いときによってくる奴ら)「俺も乗れたら乗るし」断るときの常套句じゃん。「仲良しいつでもCall me」毒がたんまり入っててにやついてしまう。こういう世の中なのでほぼ通話とかディスコードとかで終わらせることができるだけに、callという単語が絶妙なリアリティを持ちますよね。逆に考えると、直接会って話をしている関係にリアルを強く感じているのかもしれません。いつも思うけど音楽表現の中では媚びへつらう気がまったくないところほんと推せる。

……………さて、ここまで語っておいてなんなんですけど、
実は一番この曲で好きなのはヤギハイのバースなんですよね!!!!!

海パン野郎が息巻いてる よくない欲ばっかが渦巻いてる
想定外の結末いく2個前で 腑に落ちてしまって抜けれねえ

舌打ち
はだかモコピ より

上記動画のために海パン野郎は確実に特定されました。「腑に落ちてしまって抜けれねえ」のバースはほんとに面白い。「腑に落ちる」と「抜けれねえ」を選ぶワードセンス。「想定外の結末行く2個前で」っていう言葉もいいなあ。普通に生きてたら出てこないワード。前向きになるときに、さらに思いがけない響きが活動再開にあたってあったんでしょうかね。

花見プールや紅葉スキーでおれもさ 良い日送りてえのに なぜか眠たい昼下がり 俺が俺に金縛り I don't give a f〇〇kって 何度でも言う  Adobeがなくても遊べるフロウ 過渡期だとしても上げるテンション

舌打ち

Vtuberではない自分もたくらみてえことがあるんだよってのをビシビシ感じます。「花見プール紅葉スキー」は日常の暗喩で、「I don't give a f〇〇k」は「そんなの気にもかけねえよ」って意味のスラングです。「Adobeがなくても遊べるフロウ」はVラッパーへの暗喩だと思うんですよね。Abobe Premiere Proは動画編集のお友達なので…自分の立ち位置なども含めた「過渡期だとしても上げるテンション」のバースだと感じます。
平凡な日常への憧憬と、それに背を向けようとしている自分の自覚。
ここら辺は『Ghost Town』にも通じています。もう堅気には戻れません。

【ラップバトル】MCピーナッツくん VS MCぽんぽこ

Ah 思い出はin my head スピードはエムバペ おれは ヤギハイレグ
お前歯磨いて 寝ろ Yeah 予定のリストに入れる すでにヒストリー 
でおれ忘れないリステリン えらい

舌打ち
NUMBER GIRL - OMOIDE IN MY HEAD @ “THE MATSURI SESSION” より

唐突に訪れる向井秀徳。エムバペはサッカーフランス代表のスピードスターです。マジでドリブルが速い。その圧倒的スピード感をNUMBER GIRLの曲
で表しています。『OMOIDE IN MY HEAD』は時代を代表する名曲だから聴いたことない人はみんな聴いてね。「おれは ヤギハイレグ」をここに持ってきたのは、「それくらいみんなを置いてっちゃうぜ」感だと思っているんですよね。

でも「でおれ忘れないリステリン えらい」でせっかくの緊張感とスピード感ぶっ壊しててもう笑っちゃった。この外し方がヤギハイですよ。最高。
ここからの贅沢な小節の使い方も大好き。

Yeah ガメラ平成 おれら冷静なフリしてたくらむメイヘム
あの話続きTell me

舌打ち

メイヘムはノルウェーのバンドでブラックメタルの象徴。やらかしたことがやばすぎるので検索すらお勧めしません。ガメラ平成からのメイヘムは令和の時代に対する挑戦なのかな?と穿っています。そこから考えるとNUMBERGIRLもそうで、音楽的な出自が90年代~2000年代のポップミュージック的なものにあるのだとすれば自分たちの音楽が最先端のミュージック的な感じではないと思っているのかな、って感じる部分があって。
それでも俺らの音楽かっこよくねえか?っていう挑戦なんかなっていう妄想なんですけど。いやもう正直ぶっ倒れそうっすヤギハイさん。

「あの話続きTell me」はレオブタバースの「仲良しいつでもCall me」の対比がガッツリ効いています。「Friends on the trend」と「メイヘム」ももしかしたらメッセージかもしれない。メイヘムはとんでもないことをしでかしてもまだ「メイヘム」としてのつながりを持っている。
いや、逆かもしれない。寄せては返すon the trendの波ではどうにもならないくらいお互いを縛り付けるものがLBYHってことなのか。メイヘムで譬えているのも、いいところだけを掬う関係ではない一蓮托生な部分も窺えます。「腑に落ちてしまって抜けれねえ」もここで響いてきます。

節回し及びビートメイク、ライミングふくめヤギハイのセンスをこれでもかってくらい叩きつけてきます。それを土台にして高速ラップでリードしながら全体の毒のカラーリングをするレオブタ。
2人を取り巻く環境と絆の強さをダークな世界観で感じられる名曲です。

予告「レンタカーで行った」


もうほんと節操無くて申し訳ないんですが、またもや長くなってしまったのでこちらを中編とさせていただいて、「KANE&SON」と「Yeah?」を後編とさせていただけたらと思います。

というのもですね、この時点で6000字を超えていまして、「KANE&SON」と「Yeah?」を入れると倍じゃ済まない量になります。お前半分にしたのにそんなに増えたの?って言われてしまうとぐうの音も出ないのですが。

さらに言うと、何度も聴くうちに全曲解像度が高まって書き直している真っ最中ですが、一番分量が増えるのはおそらく「Yeah?」なんですよね。キーワードは「レンタカー」でした。気付いて「ああっ………!!!」ってなっています。そこにたどり着くまでにここまで筆を走らせていった結果全曲含めると2万字を超える予定です。お前きめえな、と心の裡の私が言ってます。

そもそもなんでトーモカを増やしたのかについては書きたかったからです。また別記事で書くには蛇足感が強かったから。トーモカ含めこのE.Pの魅力だと思います。

トーモカ内の
レオブタ「HIGHNECK…まあいい感じなんじゃないですか?」ヤギハイ「いやまあ…そう…そうすね、まあ…そうね…」レオブタ「…はい」ヤ「…なんかある?」レ「特にないですね…」
の掛け合いが好きすぎるという話。もっと言語化しろ。照れ屋な二人の言語化をもっとしていきたい所存です。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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