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【本】『バグダッドの秘密』 2024.02.14

 インドや南アジア、中東やイスラム教についてもっと知りたい。そうは思うのだが、私はもうアラフォー。学生時代~20代の頃のように、難しい本はもう読めない。通勤に往復二時間、労働時間は八時間超。疲れはなかなか抜けないから、睡眠時間はしっかり確保したい。そんな合間を縫って、岩波文庫とか新書とか学術書みたいなものを読む、そんな体力も気力も残っていないのです。
 とはいえ、知りたい欲は止まらない。そこを適度に満たしてくれるのは、エンターテインメです。映画や小説、ライトなエッセイなどを楽しんだ結果、異文化への理解がちょっと深まっている。私にはこれでちょうどいいのです。
 というわけで、アガサ・クリスティの『バグダッドの秘密』を読みました。

 タイトルの通り、バグダッドを舞台としたミステリー小説です。一目惚れした青年を追ってバグダッドへ旅立った英国人のヴィクトリアは、中東の地で、世界を巻き込む大きな渦に巻き込まれていく…、というストーリーです。
 とくにイスラム教徒が主要キャラというわけではないですが、1950年代前後の中東の様子がわかります。現在のバグダッドは危険地帯とされていますが(外務省HPによると、レベル4退避勧告)、当時は外国人の女性が一人で外を出歩けたり、共産主義国と資本主義国の対話の場として設定されていたりと、今よりずっと平和な地だったようです。
 作者であるアガサ・クリスティは中東好きだったらしく、何度も中東地域を訪れています。それもあってか、現在の欧米映画にあるようなアラブへの偏狭な見方はありません。安寧の地だった中東に対し、現在のような見方をする人がいなかったというだけかも知れませんが。
 刊行から70年以上経過しているので、多少の古臭さは否めませんが、1950年代に若い女性が一人、中東で活躍する姿は、十分楽しめます。ミステリーなので人が死ぬ場面もありましが、根底にある平和への願いも感じられ、アガサ・クリスティがもっと好きになります。中東が舞台といえば他にも、『オリエント急行の殺人』、『ナイルに死す』とありますので、また読んで、アガサの中東への愛を感じたいです。

クダー・ハーフィズ!


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