藍染めと暮らすコツ
藍染めアイテムを手に入れたのはいいけれど、手入れをどうしたらいいのだろう…とお悩みの方もいらっしゃると思います。もしくは、藍染めの何かを使ってみたいけれど、手入れが難しそうで躊躇している方ももっとたくさんいらっしゃるかもしれませんね…
今回はそんなお悩みを払拭できるコツをお伝えしたいと思います。
※こちらの記事は藍色工房不定期発行冊子「藍と暮らす vol.3」より抜粋し、改変してお届けします。
コツその1、 藍は水が大好き
「藍染めのものは水で洗ってはいけないのでしょ?」と、とある老舗百貨店の外商担当さんに言われた時は、一瞬で総白髪になりそうなほど衝撃を受けました。老舗百貨店の上得意様の窓口をされているような方でもこのような認識を持たれておられるのですから、藍染めアイテムを販売するということは至難の業ですね…
結論から申し上げます。
藍は水が大好きです。どんどん水洗いしてください。むしろ水洗いしていただくことが長く良い色を保つ秘訣ですらあります。
上の画像をご覧ください。以前ご紹介した古着のジップアップパーカーを熱湯に浸けて灰汁抜き(あくぬき)をしているところです。染料に含まれている灰汁が溶け出して、お湯が黄色くなっています。
藍は染まった後も呼吸をしています。
酸素や紫外線に触れると、黄色っぽい灰汁が出てきます。藍染めの生地を光の当たる角度を変えて斜めから眺めると、表面にほんのりと黄色っぽい色が浮いて見えることがあり、これが灰汁です。
熱湯に浸けたり洗濯用粉石鹸で軽く押し洗いすると、青い生地から黄色い色がどっと流れ出します。15分ほど浸けた後にきれいな水で十分にすすいで脱水し、陰干しします。(あまり長い時間放置すると、藍色の色素が流れ出し始めますので注意が必要です。)
こうして藍染めの生地から灰汁を取ることを「灰汁抜き」とか「灰汁だし」と呼んでいます。灰汁抜き後の藍の色はより一層深みと爽やかさを増して、美しいです。
逆に灰汁が出たまま放置していると、そこから色が褪色しやすくなり、色抜けや色あせの原因となります。
黄色みがかってきたな、長い間灰汁抜きしていないな、と思ったら、いつでも灰汁抜きしてください。綿や麻などの植物繊維は熱湯で行うとたくさん灰汁が出ます。絹や毛などの動物繊維のものは、体温に近いぬるま湯にそっと浸して自然に冷めるまで置いておきましょう。
ちなみに、灰汁抜きをしたときにお湯が黄色くならず水色になった場合は、残念ですが化学染料のみで染められたものであるとみなしていいと思います。悲しいですが、その場合は普通のお手入れで大丈夫ということになりますね…
コツその2、長期保存は暗い場所で
長く使用しない時の保存は、箪笥の引き出しの下の方や、押入れの整理ボックスの奥など、日差しや光の当たらない場所に保管されることをお勧めします。生地の一部が紫外線に当たると、そこだけ色褪せする原因になるため、タオルや風呂敷などに包んで保管されると確実です。
ストールなどの長いものは、筒形のものに巻き付けてから風呂敷などに包んで保管すると畳みムラができず、綺麗に保管することができます。
また、使わない時が長く続いていても、時々は包みを解いて灰汁抜きを繰り返すようにすると色が強く定着する助けにもなり、綺麗に保存し続けることが可能になります。
コツその3、いつも通りのお洗濯で大丈夫
藍染めアイテムのお洗濯は、いつも通りに行って大丈夫です。正しくお伝えすると、灰汁建てで染められた正藍染めのものは大丈夫ですが、化学染めのジーンズや化学薬品・化学染料を使用した藍染めのものは染まるメカニズムが正藍染めと異なるため、他のものと分けて洗っていただいた方が安全です。
正藍染めの染め液は、最終的に醗酵することで染まる仕組みになっています。そのため、洗濯機の中が醗酵していなければ、他のものに色移りする心配はありません。クリーニングにお出しいただいても構いません。ですが、漂白剤のご使用はお控えください。
ご家庭でのおすすめの洗剤は、昔ながらのできるだけ自然な粉石鹸です。合成界面活性剤がたくさん入っているものより、うんと色持ちが良くなります。
洗濯後に干す際は、裏表を返して陰干しをすると色が抜けにくく、綺麗に保つことが可能です。
コツその4、神経質にならずに普段使いで楽しむ
普段着や作業着として、また普段使いの生活雑貨として、気軽に普段の暮らしの中でお使いいただくと、藍もとても喜ぶと思います。
適度に使い込まれた正藍染めアイテムは、その人ならではの色に育ち、色味が深くなったり柔らかくなったり、表情を変えていく様子を楽しむことができます。取り扱いに神経質になって箪笥の奥に仕舞い込むより、気負わずに普段使いで楽しむのが本来の藍染めの在り方のように感じます。
私自身も、自分で染めた藍染めのシャツを作業着として愛用しています。
種から発芽し、あなたのお手元に届くまで、美しい藍色になるべく鍛錬を重ねた藍達です。どうか、あなたと暮らしを共にする「旅」をこれからも続けさせてあげてください。「用の美」という言葉が生まれた日本ならではの暮らしの知恵の一つ。それが正藍染めですから…。
たくさんの方に藍との暮らしを自然体でお楽しみいただけたら、とても嬉しいです。
よろしければ、サポートをお願いいたします。いただいたサポートは藍農園維持と良質な藍顔料精製作業に活用させていただきます。