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和漢三才図会と藍のこと

1、和漢三才図会の序文に藍の事が書かれている?

 数年前、お客様からお問い合わせをいただきました。
「和漢三才図会(わかんさんさいずえ)の序文にタデアイの記述がある、と、ある藍染め業者から聞いたことがありますが、探しても見当たりません。どういうことですか?」
 …どういうことなのでしょう…私もその藍染め業者さんにお伺いしたいものですが、それはひとまず横に置いておいて、本来お客様がお探しの資料にたどり着けるよう、私なりに探して分かったことをここで共有したいと思います。

 和漢三才図会とは1712年に刊行された百科事典で、大坂の医師だった寺島良安が中国の『三才図会』を参考にしながら約30年をかけて編纂したものと伝えられています。
 ここにタデアイの記述があるというのは、恐らく間違いのない情報です。オンラインで公開されている古文書のデータを検索したところ、今は国立国会図書館デジタルコレクションに統合されている近代デジタルライブラリー(2016年6月1日終了)で元の文章を確認できました。

 やはり序文にはタデアイの記述はありませんでしたが、第94巻1363ページ目に「藍」の項目がありました。江戸時代の原文で内容を把握する力量が甚だ心もとなかったため、これをもとに口語訳を探し、何とかたどり着いたのが平凡社『和漢三才図会』の第17巻(初版1991年1月10日 島田勇雄、竹島淳夫、樋口元巳)「湿草類」という項目の28ページです。

 これで、和漢三才図会の序文にタデアイの記述は無いけれど、植物の一項目に案内されていることが確認できました。

2、江戸時代に記された藍の効能が衝撃的

 口語訳にたどり着けたところで、ようやく内容をしっかり読むことができるようになりました。喜び勇んで目を通しましたところ、「それはない!!」と静かな図書館で思わず叫びそうになる記述が目に飛び込んでまいりました。

 なんでも、タデアイの葉を絞って得た汁を、首をくくって死亡してしまった人に注ぐと生き返る…と。

 なぜそのような記述が加えられるに至ったのか謎なのですが、これはあまりに極端です。ですが、「物凄く効き目のある薬草なんだ!」という事を何とかして伝えようとしている気概は伝わってまいります。。。

3、「藍」の項目で記されている内容 

 この項目で記されている内容は「タデアイ」の植物としての特徴、葉や種の薬効、葉から抽出した色素(青黛 ~セイタイ~)の作り方や薬効についてが主なものとなっています。また、タデアイに続いてイヌタデ、ウマタデなど他のタデ科の植物もそれぞれの項目で記され、違いが分かるようになっていました。

 これを読む限りでは、江戸時代の知識を持っていた人たちは、藍染めのあの色を、単なる色としてではなく薬としての働きかけのある物質として認識していたのではないかと思います。
 当時の考え方がイメージできるような興味深い内容ですので、ぜひ探して読んでみていただければと思います。

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