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琺瑯小物

愛用している琺瑯アイテムは ふたつ
*
その一つの 琺瑯のトレイを見つけたのは学生時代
古道具屋の隅の 木のデスクに置かれていた
白く清潔で やわらかなフォルム 
これでパウンドケーキも焼けると 連れ帰った

使い始めると ケーキにはコンパクト過ぎたかと 
ものの置き場としての 歩みがはじまった
いまでは 外出時小物一切の定位置になっている
実は 断捨離を始め 幾度となく手放そうとしたもの
大きい 縁広がり 垂直でない ものを置くときに音がする等 
理由が浮かんで しかし不思議とやはりこれ、と 
手元に戻しては 馴染むとはこういうことかと思ってみたり
入れ物をかごや紙箱に 替えてはみたが
パキッと白い琺瑯の肌に なめらかで幅広の縁のおかげで 
取りこぼすことなく 身支度が整う
外から帰ってきて いちばんに目に入るトレイの
丸みと縁の濃いブルーに なにか安堵するのだ
きょうを 無事に過ごせたことに感謝し
共に過ごしたものたちを 呼吸しやすいよう
定位置に戻すことが 習慣になった
*
もう一つが 琺瑯の平たい両把手付きのバケツで
布ナプキンの 漬け置き洗いに使用している
既にあった プラスチックやポリプロピレンのバケツを使ってきたが
うっすら透けるものだと色が また蓋を開けた瞬間のにおいも気になって
高さがあると投入時は便利だが洗う際には不便で 別にたらいも必要だった
劣化していく素材であることも 物哀しく
琺瑯に変えてみると 女性の日にはとくに
混じり気のない白さに 気持ちがあらたまった
清潔さが視覚にまっすぐ届き においも全く感じなくなって
琺瑯ゆえ持ち量りがし ハンカチタイプの布ナプを広げるとやや窮屈で
高さはもう少しほしいところではあるものの 使う度に満足感がある
水を使うような外掃除には 軽いバケツが重宝するけれど
両手をつかえば運べるので 家中移動している
直火にかけられるので煮洗いや 足浴にも丁度いい
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身の回りのものは 一瞥してさっと取り出したい性質なので
今後 琺瑯ものが増えることはないかもしれないが 
くらしの一部になったアイテムを 味わいながら長く使ってゆきたい


Erat, est, fuit あった、ある、あるであろう....🌛