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地球と人にやさしいオーガニックと国際協力ー協力隊から専門家への飛躍ー

02/22/2017 INDIGO MAGAZINE
執筆者:レムケなつこ(オーガニック専門家)

国際協力に関心を持ったきっかけ

兄弟二人が障害を持っているせいなのか、小さな頃から「生」について考えることが多かった気がします。なんで私はこの世の中にこの時代に生まれてきたんだろうかって。きっと何か理由があるに違いないって。
大学一年生の時にベトナムでバックパック旅行中にカフェで働くリーと出会いました。リーは長女として家族の食費と兄妹の教育費を稼ぐために朝から晩までカフェで働いていて、それでもいつか大学に通うことを望んでいたんです。一方、私は親の臑を嚙って大学に行かせてもらって旅行までしている。
見た目も似ていて同い年なのになぜ彼女と私の生活水準は違うのだろう。そう自問して唯一得られた回答が、「生まれた場所が違うから」。世界って不平等なんだっ、てその時初めて思いました。同時に自分が日本人として生まれてきたことにただただ感謝することしかできなかった。そこからですね、恵まれた環境にある自分だからこそ途上国の人にできることがあるのではないか、私が生きていることの意義がそこにあるのではないかと考えるようになりました。


協力隊に参加し派遣される前と後の気持ちの変化

大学生の頃は、学生団体を立ち上げて代表として活動したり、世界銀行でインターンしたり、スタディツアーを企画してカンボジアにある国際協力機関を訪問したり、インドでボランティア活動をしたり、学生として関われる国際協力の活動をとことんしました。でも、実際に途上国の人と暮らしたり仕事していたわけではないので、勘違いしていたところも多かったし、結局自己満足でしかなかった。
それが、ボリビアでJICA青年海外協力隊として2年間活動をする中で、大事な家族みたいな同僚や友人ができ国際協力への思いがもっと個人的なものに変わっていきました。お世話になったボリビアのみんなに大好きなあの人に恩返しがしたいと思うようになったんです。

※ボリビア時代、大好きな同僚たちとランチの時間

ドイツでの研究の話

協力隊時代、現地の貧しい人の苦しみの下に食物が生産されるのを垣間見ました。ボリビアの任地で栽培されていたサトウキビのほとんどが先進国へ輸出されていきます。調べたら日本でも6割は原料糖という形でサトウキビを輸入しているんですね。

「そうか、これって遠い世界で起きていることではないのだな。」

コンビニやスーパーでお菓子を買ったり、カフェでケーキを食べたりすることで、知らず知らずのうちに私が途上国で垣間見たような搾取構造を消費者として支えているのではないか。誰かの苦しみのもとに私たちの食卓に食事が並んでいるのではないか。どうしようもない憤りを覚え、なんとかしたいと思うようになりました。この世界の不条理をどうにかしたい、このビジネスの仕組みを根こそぎ変えていきたい。その打開策となりうるオルタナティブな仕組みとしてオーガニックにかけてみたいと思ったんです。そこで、オーガニックの専門家となるためにドイツの大学院で本格的にオーガニックの勉強をしました。
ドイツでは、オーガニック製品ができるまでの全過程を一通り学びました。内容は、有機農業、有機畜産、有機加工、有機認証、オーガニック特有のマーケティング学などです。特に個人的にフォーカスを置いたのが、生産・製造技術で、学問領域でいうと農学と化学です。北ドイツの食品研究所にいた時は、オーガニックベビーフードの開発を行っていました。

※ドイツ食品研究所のラボで

なぜ起業したか

オーガニックには健康の理念というものがあります。人や動物が健康でいるためには、植物が健康でなければ成り立たない。そのためには土や水などの自然環境全体も健康でなければならない。動植物や自然環境といった周りのもの全てが健康でないと私たち自身の健康が成立しないという考え方がそこにあるんですね。
だから、単に消費者だけを見ていても、それはオーガニックではないんです。生産者も健康で幸せ、そこに関わってくる植物も動物も健康で幸せ、工場で働く人も、そして販売する人も健康で幸せ。何一つよどみないハッピーの流れを作るのが、オーガニックなのです。
2016年夏に旧友がドイツにオーガニック視察にきてくれたことがあり、その時に日本のオーガニック事情を聞いて唖然するとともに、起業しようと本気で考えるようになりました。

※世界最大級のオーガニック展示会ビオファ2017の視察風景

日本ではオーガニックって、ハリウッドの女優さんが使っている、モデルがオーガニックコスメを使っている、そんなファッション感覚で捉えられがちです。オーガニックのものは高いですから、それを食べていることがステータスになってもいます。決してそれが悪いとは思いませんが、もう少し詳しく知って欲しいのです。
2013年にドイツで行われた調査(※複数回答)では、オーガニックのものを買う理由として「地域支援のため」という回答が最も多かった。その次に多かったのが、「動物愛護のため」。日本で同じ調査を行っても、おそらく絶対に出ない答えです。オーガニックが放つメッセージが、ドイツと日本ではここまで違う。
そこで思いついたのが、オーガニックビジネスに関わる日本の方を対象としたオンラインレッスンやコンサルテーションでした。すでに起業している、これから始めようとしている、それらの人に源流からオーガニックのことを理解してほしい思い、そんな思いでドイツから起業家の皆さんを支援しています。2018年にはドイツでオーガニックツアーを開催し、本場ドイツの先進事例を日本の皆様にご紹介する予定です。

※2017年から行なっているオンラインオーガニックビジネスセミナー
レムケなつこ
ドイツ、ミュールハイム在住。慶應義塾大学経済学部卒。ドイツHohenheim 大学院農学部オーガニックフード・チェーン・マネイジメント科卒(ドイツ学術交流会DAAD奨学生)。ドイツ食品研究所でオーガニックベビーフードの開発。20代でボリビアにてJICA青年海外協力隊、メキシコにて JICA専門家として途上国支援に関わった経験からオーガニックに目覚める。2017年オーガニックビジネスコンサルタントしてドイツで起業。

 Youtube:https://www.youtube.com/channel/UCeGydmu6tzclc1so_zTet7Q
Instagram:https://www.instagram.com/natsuko_bio/




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