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息子が漫才師。その時おとんは、、、

僕のおとんは変わってる。おとんはデザイナーの仕事しながらバンドしている。
その傍らでハーモニカもずっとしている。
一度日本で1位になったほどの腕前だ。
毎年ブルースハープの神様の命日には
海外へ行ってブルースハープの式典にも参加しているらしい。
それだけハーモニカで結果を出しているのだろう。
これって客観的に見たら興味を引く話。
つまりオモロイ。


ただ僕は芸人なるまで
この面白さは何一つ分かっていなかった。
ハーモニカを吹くおとんというのが常に当たり前にいたからだ。


僕の実家はガレージがある。
その奥におとんの部屋がある4畳くらいの小さな部屋だ。そこにはおとんの仕事道具であるパソコンが置いてあり、
これまた趣味のハーモニカが大量にある。
どうやら曲によって使うハーモニカが違うらしい。

どうやらというのはこれだけおとんがハーモニカ好きなのに僕は一つも興味を持たなかったからだ。
なぜ興味を持たなかったんだろう。
今、この瞬間も自問自答しているが答えが出てこない。
毎日聴いていたのもあるかもしれない。

そう。先ほど言ったガレージの中から僕が学校から帰る帰り道、家が近づくと
ハーモニカの音が毎日聞こえていた。


これもオモロイ。 


ただその時はハーモニカを吹くおとんが毎日いて、
それが当たり前なのだから何も思わなかった。
毎日だ。僕は帰ったら、ただいまとガレージの奥のおとんの部屋を開ける。
その部屋は煙草の匂いとハーモニカの音と幾つものエリッククラプトンが陣取っていた。
調子がいい時はここにギターも駆けつける。


これだけ書くとシドヴィシャスみたいな
カッコいいおとんを想像することだろう。


だが実際偽りなくおとんはカッコよかった。
むしろ周りがそう言っていた。
その頃のおとんは江口洋介みたいなロン毛だ。それが授業参観に来た日には
あれ誰のおとんとヒソヒソ話が始まる。
そこから噂が一人歩き。
木村のおとんがカッコいいらしい。
ロン毛でバンドもやっててハーモニカやってんねんて。
武道館も一人でハーモニカだけで埋めたらしい。
そんなことを言われては子供ながらに鼻は高々だったので、否定も肯定もせず
噂の一人歩きの背中を押していた。


そんなおとんとも歳がゆくにつれ何も話さなくなる。

芸人なった時にはもう連絡すらとらなくなる。

上京しますます距離は離れる。

そんな折におかんから連絡があった。
おとんが重病で入院することになったと。


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