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世田谷総合研究所 レポート№9

世田谷で知る、都市と農地の共存!

これまで「世田谷は住宅過密地帯」的なことを、しきりとレポートしてきましたが、実は別の一面もあります。
世田谷には、そこかしこに農地がある!のです。
農家さんには申し訳ないのですが、街中で見かける農地は、「羨ましい」と思わず呟いてしまうほどの広さです。

世田谷区が発行している「せたがや 農業通信(令和2年度版)」によると、農地面積の広さは東京23区内のなかで第2位(第1位は練馬区)。その農地面積を数字にすると、83.68ha(令和元年8月1日現在)、いわゆる東京ドーム約18個分ですから。

こんなに広大な農地を有し、世田谷は何を目指しているのか?
世田谷区によると、農産物の生産はもちろん、自然景観の保持やレクリエーションの場、食育の推進、環境保全など、尊い意義を担っています。決して、ディベロッパーから開発要請のお声がかかるのを待っているわけではない!はずです。

そんな意義深い農産物のほとんどは、JAの“ファーマーズマーケット”で売られているらしいのですが、農家さんの直売所でも販売されています。

私の家の近くにも直売所が2カ所あり、朝の散歩の際に覗くことがあります。時間帯は8時~9時なのですが、すでに農産物は売り切れています。
世田谷の農産物は、食品ロスすることなく地産地消されている、と推察できます。

以前住んでいた横浜もそうでしたが、農家さんの直売所は無人です。人手は、作物を育てることに集中させている、と分析できます。

そこで想起されるのが、最近話題の“無人コンビニ”!
人出不足対策や人件費の削減、さらには3密を避け、非対面、非接触によるウイルス感染対策など、無人によってもたらされる多くのメリットが注目されています。

まさに農家さんの直売所は、時代のフロントランナー!

“無人コンビニ”のシステム開発は、「農産物の無人直売所に着想を得た」という仮説を提示されても、十分に納得できます。

“売上”という視点で無人直売所をとらえると、横浜では、農産物の代金を料金箱に入れる原始的なシステムでしたが、世田谷ではコインロッカー方式が多く見られます。
それは、性善説と性悪説の違いではありません。
つまり、無人でありながらも農産物の代金を確実に回収するために、販売専用のコインロッカーを設置!それは、十分な設備投資です。そこには投資に値するだけの、確実な売上を得ていることがうかがえます。
その売上には、世田谷産の農産物を「せたがやそだち」と名付け(かなり直球ネーミング)ブランド化を図る世田谷区の戦略も功を奏している、と推察できます。

家屋が密集する住宅街の随所に現れる広大な農地。
このアンバランスなランドスケープによって保たれている“都市農地”という特殊なカテゴリーは、世田谷区の街づくりや不動産価値にも影響を及ぼしています。世田谷の暮らしと共存する都市農地だからこそ、その動向は、都市開発関係者や不動産関係者でなくとも、ウォッチしておくべきでしょう。

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