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下浦石

下浦石とは、熊本県の天草地域を産地とする砂岩のこと。海底に溜まった砂の層が、長い年月を重ねて1つの塊となったものです。石質が柔らかく、加工しやすいのが大きな特徴。柔らかな曲線を必要とする彫像などに適しています。
また、マットな質感で滑りにくいといった性質もあり、その特徴を生かして古くから敷石や貼石として利用されてきました。天草市の下浦町では、江戸時代に「下浦石工」と呼ばれる高度な技術を持った職人が誕生し、現代に至るまで数々の下浦石を使用した作品が作られています。
代表的な作品として挙げられるのが、天保3年(1832)に建造された「祇園橋(ぎおんばし)」。石造桁橋としては国内最大規模で、全長はおよそ28.6mもあります。大雨などの水害にも耐えられる構造となっており、古くから地元住民に親しまれている石橋です。全国的にも珍しい多脚式を採用していて、国の重要文化財に指定されています。
世界遺産に登録されている天草市の﨑津集落(敷石)や、アーチ型の石橋が印象的な楠浦町の眼鏡橋への利用も有名です。下浦石工は九州から中国、四国地方にまで発展し、長崎オランダ坂の石畳など数々の文化遺産を生み出しています。
新しいうちはきれいな白色ですが、年数が経過するにつれて錆色となり、落ち着いた雰囲気を醸し出します。吸湿性があるため、コースターや水回りへの使用にもぴったりです。

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