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週末の余談③ 「レゴ型の対応力」

以前、こんな話を雑誌のコラムで読んだ記憶があります。好奇心旺盛な読書好きの小学生の女の子が、中学受験のため試しに塾で試験を受けたそうです。試験問題に『全身に酸素を運ぶのは?』とあったので、「ヘモグロビン」と回答したら、返ってきた答案用紙は「×」となっていたそうです。不可思議に思い先生に問い正したところ、正解は「血液」で、「まだ教えていないから不正解です」と言われたそうです。あなたが採点をする立場だったら、どうします?

正解主義と修正主義
正解主義が当たり前の発想になってしまうと融通が利かなくなりそうです。
正解主義の対義語は、修正主義。
正解主義はジグソーパズル型、修正主義はレゴ型と言われるそうです。
ジグソーパズルは決まっている一つの完成形をめざしてパズルを組み合わせますが、レゴはパーツで何を作るか本人の自由です。

多様性と調和
社会は一つの解しかない、ということの方が少なく複雑です。グローバル化が進み、社会における多様性が叫ばれるようになりました。それぞれの違いや価値を認め、画一的な発想を避ける概念でしょうか。環境の変化に適応できなくなり、生き残れないからだとも言われています。

東京2020大会の「大会ビジョン」にも、「多様性と調和」が謳われ、多様性を尊重する共生社会づくりをめざしています。

求められる対応力
2018年5月31日にサッカーW杯ロシア大会の日本代表が発表されました。
記者会見では西野朗監督が記者の質問に対して、選ばれた選手には『対応力』を求めたいとのコメントがありました。
同様に同年10月23日に原監督の復帰会見のコメントでも『対応力』をキーワードに挙げました。

ところで『対応力』とは何だろう? 
自分が置かれている状況をすぐさま把握し、臨機応変に対処でき力?

我々も半歩先の業務を考え、スムースに進行できるよう段取りしなければなりません。また発生したトラブルやアクシデントに即応し、解決にむけて各担当者と調整する行動力や判断力が求められます。

創造的破壊
昨今、創造的破壊(Creative destruction)という言葉が頻繁に使われ、これまでの価値観や行動規範をアップグレードしていくことが求められています。スポーツの世界でも同様で基本的なコンセプトは一致しています。

東京2020大会は、オリンピック史上初めてとなる大会延期が決定しました。原因となった、新型コロナウィルス対策が急がれています。
また、延期に伴う経費増のため大会運営のシンプル化、スリム化が検討され、決定された後には、運営計画の見直しが行われる予定です。前例のない事態です。これまでの知識・経験から作り上げてきたルール通りでは対処できません。

ジグソーパズル型ではなく、レゴ型の発想と推進力が求められます。完成形をイメージしつつも、考えながら創り上げていく力が求められます。正にレゴです。今回は一つの完成形を作り上げようと、パズルを当てはめていく訳にはいかないからです。

東日本大震災における日本人の行動は、世界の人々から賞賛されました。
パニックにならず冷静で略奪等もなく、非常事態でも周囲のことを考えて規律を守る連帯感がすばらしい、と。

今回のシチュエーションはかなり違い、レゴ型のクリエイティブな発想が求められます。
これまで準備してきた計画を創造的破壊(Creative destruction)して、多様な要望や新たな与件に従い、柔軟に対応する力、チーム力によって創り上げていく必要があります。出来上がった時には、今後のオリンピックの新しい姿が描かれているかもしれません。新たなレガシーとなることを期待します。

言い換えれば、日本(人)の力が試される一年かもしれません。我々も、その一端を担う存在でありたいものです。

                          2020年7月20日

藤原和博氏 講演資料より