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NIIGATA6⃣ 国際コンベンション開催における効果と課題


 新潟市は本州の日本海側では唯一の政令指定都市への移行に伴い、またこの機会をとらえて国際拠点都市を目指す新潟市としては、日本海側最大の複合一体型コンベンションセンター「朱鷺メッセ」を有しており、まずは国際コンベンション都市としてイメージアップを図っていきたいと考えています。
 イベントとかコンベンションとか、様々な言葉の定義はありますが、残念ながら日本の省庁の縦割り行政の産物とも言えます。経産省は、イベントと言う表記で、コンベンションと言う言葉の概念はありません。コンベンション統計は、国土交通省系で使われているのが現状です。国際的な統計では、コンベンションという概念で取りまとめられておりますので、コンベンションという表記で進めたいと思います。因みに、経産省では狭義のコンベンションを会議イベントという表記を使っています。
 堅苦しい話からスタートしましたが、コンベンション開催の状況をご説明いたします。次のスライドをご覧ください。

 残念ながら、ここでも統計の基準が国際組織と日本では違います。
 日本は、国際化が図れていなかった時代に規定された基準だったから、こうなったんだろうとしか言えないですね。従って、サラッと流します。

 日本国内における国際コンベンションの開催件数は、1996年から2005年までの10年間で増えてきてはいますが、大幅な増進とはなっていないのが現状ではないかと思います。

 この分野別開催件数から分かりますことは、圧倒的に多いのが科学・技術・自然分野の開催件数が多いことです。続いて、政治・経済・法律、3番目は、医学分野です。1位から3位までで65%を占めています。所謂、国際会議と言われ、学術的な研究の発表や意見交換が行われている状況です。

 大陸別開催件数は、スライドの通り、圧倒的にヨーロッパでの開催が常に多い状況です。続いて、南北アメリカ、アジアの順です。

 国別開催件数は、上位10位は、1位のアメリカを除いてフランス、ドイツ、イギリス、イタリアといったヨーロッパ主要国が占めています。
 日本は、2004年・2005年統計とも17番目です。アジアの中でも、日本より上位に、中国、韓国、シンガポールがあります。

 開催都市の開催順位はパリが1位で、続いてウィーン、ブリュッセルなっています。特筆すべきは4位にシンガポールが入っていることでしょうか。
 国際コンベンションの開催地決定要因とは、何でしょうか?
 国際会議組織の理事、あるいは役員に就任していることが求められます。そして投票権のあるメンバーの意思により決定されます。高度経済成長期の日本が、国際会議を誘致するのは今ほど難しくなかったと言われています。
経済成長が著しく国際社会における日本の存在感が大きくなり、日本開催の機運が高まっていました。欧米の方々は、未だ日本を訪問したことがなく、情報も少ないためためらいがちです。国際会議での参加となると観光旅行と違って必然性のある旅行でもあり、開催国として準備しているだろうから安心安全ではないか?会議に参加する欧米のエグゼクティブは、そういった心理が働くようです。未だ見ぬ日本は、東洋の神秘と言われエキゾティックなイメージ強かったですから、国際会議に参加して訪れてみたいと思ったようです。現在は日本への訪問経験が欧米の方々も多くなり、エキゾティックな東洋は、中国そして東南アジアへ移ってきています。
 近年は、国際本部が機能している団体においては、本部からの打診が事前に行われることが多くなってきました。全地球的な観点から開催地が偏ることを避けたいという思いがあります。普及啓発、財務的な観点から先進国と発展途上国を交互に開催したいという意図があります。先進国開催では、資金確保が容易で余剰金をストックすることが可能です。発展途上国での開催は、どうしても資金確保が難しく本部からの支援が必要になることが多いため先進国開催地での資金確保が生きてきます。
 私も経験がありますが、シンガポールとの誘致競争は厳しい状況です。シンガポールは国策として国際会議の誘致に積極的で、提示する誘致条件がすこぶる良いです。コンベンション施設の条件として、会議場、展示場、宿泊ホテルが隣接してそろっているのが一般的です。残念ながら、日本では3つの施設が適正な規模でそろっている方が少ないです。提示する条件として、会議場を無料に近いものにするケースがあります。多くの会議参加者の飲食を伴う消費や宿泊収入が見込め、総合的に判断して会場費を低くできると判断する訳です。一方、宿泊費に関しては、参加者の個人負担が通例ですが、国際会議開催期間中の宿泊費は安く設定され、参加者にとってもメリットがあります。

 日本国内における会場別の開催状況をみますと、経団連会館が1位です。
また、東京大学をはじめ大学の施設を利用しての会議が多い。
 朱鷺メッセは、34位です。

 以上、簡単ですが国際コンベンションにおけるマーケット状況をご説明し、大きくとらえていただければと思います。
 次に、イベント&コンベンションの種類について、次のスライドでご説明します。

 イベント&コンベンションと言いますと、概ね4つに分類されます。
「博覧会」「文化・スポーツ」「会議」「見本市・展示会」となります。
 右の図では、それぞれのイベント&コンベンションの種類ごとの開催件数や規模を丸い円の大きさによって表しています。これは、統計がありませんので、私が推計で出したものだということをご認識ください。
 地域イベントは、各地で数多く行われていますが、件数、規模とも把握できていません。
 例えば、企業イベントにしても、運動会を大きな公設の競技場や施設で開催された場合は、統計上おそらくスポーツイベントとして競技場等から報告があります。企業が所有するグラウンドで開催されたら企業イベントのままです。
 国際会議の周りにオレンジの円がありますが、会議や大会、ミーティングといった国内で日本人のみで開催されるものも多く開催されています。

 日本国内において1980年代に幕張メッセを始めとするコンベンション施設が数多く建設され、いわゆるコンベンションブームが起きました。
 上の図は、コンベンション関連産業の範囲を示したものです。いかに幅広い産業が関わっているか、お分かりいただけるかと思います。従いまして、コンベンション施設は、都市のイメージアップになると同時に、経済波及効果が大きいので、建設ラッシュが起こったとも言えます。
 海外のコンベンション施設は、会議場、展示場、ホテルが三位一体となってエリア内に設置されているのが通例です。
 上図の左下のピンクで囲ってあるのが、施設等のハード面での産業となっています。その右にある「会議・展示・イベント関連産業」は、どのような産業があるか省略していますが、施設内に設置している設備以外の音響・映像・照明・レンタル機器・看板装飾、人材派遣・警備等幅広い。
 また、宿泊、宴会・飲食関連、交通輸送、観光関連産業と幅広い。

 次に、コンベンションビジネスにおいて、PCOという存在があります。
Professional Congress Organizerを略してPCOです。この図を用意したのはPCOの存在を説明することが主眼ではありません。コンベンションには必ず主催者(Organizer)がいます。Organizerは、どんな業務に関わるのか、その説明をまずしたいと思います。
 コンベンション開催の中心的存在としてコンセプトや全体プログラム構成を立案しプロジェクト全体のマネジメントを行います。そのために中心となる拠点として事務局を設置します。
 プロジェクト・マネジメントとして何を行うかは、この図の一番外側の黄色く表示している業務内容に該当します。
 PCOは、主催者より委託されてプロフェッショナルとして経験を生かして効率よく業務代行あるいはアドバイスする存在です。
 図の左下にヨーロッパ型、アメリカ型という表記がありますが、PCOのタイプがヨーロッパとアメリカでの違いがあるため、私なりに考えて表記したものです。何か、国際的な規定があるというものではありません。
 ヨーロッパ型とは、PCOが個人のプロフェッショナルな存在として存在します。アメリカ型とは、どちらかと言うと組織・会社として請け負う存在としてビジネス化されている状況です。日本はアメリカ型に近い状況かと思います。ヨーロッパはこれまでの歴史の積み上げ経験があり、件数も多くコンベンションの主催者チームの中にある程度知識や経験を有する人材がいます。従って、多くの経験と知識を有する個人が独立して対応しているようです。コンベンションに関するアドバイスや判断が求められる存在です。細かな業務の遂行は、主催者チームが行うようなケースが多い。
 アメリカ型は、主催者に代わって業務を代行する存在ですから、必要に応じてチームとして請け負います。請け負う業務内容は、契約事項でそれぞれ違ってきます。
 日本は今後少しずつ個人としてアドバイスしていくようなPCOが増えるのではないかと、私は考えています。
 次に、コンベンション開催における実施体制について、具体的な事例をもとに次のスライドでご説明します。

  第5回火山都市国際会議の事例です。
1991年6月3日に雲仙・普賢岳(長崎県島原半島)で起きた大火砕流により、死者・行方不明者43人を出す大惨事となりました。皆さんもご記憶があるかと思います。2007年11月19日~23日の5日間、島原市の雲仙岳災害記念館、島原復興アリーナで開催されました。1991年に起こった災害から15年を経過し、本国際会議を誘致し火山噴火による住宅密集地や都市に与える影響、災害の備え、危機管理、都市計画等について議論を目的に開催されました。
 主催は島原市と実行委員会で、実務的なことは実行委員会が執行する形式となっています。従って、大会事務局は島原市役所内に設置、登録事務局という表記でPCOが機能。実行委員会の中心メンバーと島原市役所担当者とが緊密に連絡を取り合いながら準備し、会議直前の一週間前に登録事務局も島原市の大会事務局と合体して実施運営致しました。PCO側では、通常3名程度のメンバーが窓口になります。彼等のコーディネートによって、担当する業務毎に準備が進められていきます。外部に委託する場合もあれば、社内の別の担当者が実務を取り仕切るケースもあります。
 きめ細かく、漏れのない実施運営を行うため、実施運営マニュアルを作成して関係者のイメージや連携する内容のすり合わせを行ってまいります。この準備段階でのマニュアル作成が肝心で、運営がスムースに実施できるかの可否は、全てこの運営マニュアルに掛かっていると言っても過言ではないと私は思っています。従って、分厚い運営マニュアルとなりますが、総合運営マニュアルとは別に個々の業務毎にマニュアルを作成するケースも多い。


 人は何故、集うのか?
 人間は文字を創り、印刷技術を開発して情報は飛躍的な広がりを持つようになりました。また現代の情報化社会の発展は溢れるばかりの情報の獲得やネットワーク形成を可能にしましたが、それでも何故人はコンベンションを必要とするのでしょうか。
 人は情報を持てば持つほど、コンベンション本来の特性、つまり直接会って意見交換し感性で感じるダイレクトなコミュニケーションを求め、集うのではないでしょうか。
 知性と体感と人情が三位一体となった共感(感動)を得られる場があるからではないか、それは「ゆとり」「生きがい」「文化性」「創造性」を感じさせる「心地よい雰囲気」を醸し出している、私はそのように考えています。
 ひいては、この心地よい雰囲気はコンベンションのみならず、都市文化/地域空間におけるコミュニケーション・メディアとして機能すると考えられています。
 「出逢いづくり」「集いづくり」「くつろぎづくり」「ふれ合いづくり」「やすらぎづくり」につながるのではないか、そうあって欲しいと願っています。

 コンベンションをオーガナイズする主催者は、どういった方々なんでしょうか?学術集会であれば、その学術団体・学会の中心的立場の方であり、
業界団体であれば、業界団体の長が一般的には就任します。
 朱鷺メッセでのコンベンションの開催件数を増やしたいという場合、何が課題なんでしょうか?ある学術集会が開催されるということは、新潟県内にその学術集会を自分が引き受けよう、あるいは全国の多くの方々から新潟のあの方に任せようとならないと新潟での開催は、ほとんど不可能です。つまり、地元に実力者がいて、自分が主催者となって新潟で開催しようとならないと、開催件数を増やすことはできません。
 主催者になりたいが、財務的な不安があり、自信をもって手を上げられない方の後押しをする意味で、行政からの補助金は大きな力になることはあります。現状は、そこまで大きな補助金制度にはなっていません。
 それでは、行政が主体となってコンベンションを開催するケースはあります。行政が取り組む政策と連動するコンベンションを開催して、その都市をアピールするケースもあります。
 そういった事例を次にご紹介し、皆さんと共に考えたいと思います。
次のスライドをご覧ください。

 (独)科学技術振興機構(略称JST)が主催する「さきがけライブ」です。
JSTは、文字通り科学技術振興を目的とした組織で、知の創出から研究成果の社会還元とその基盤整備を担うわが国の中核的機関です。
 さきがけ研究とは、イノベーション創出の推進を目的に研究助成を行っており、さきがけライブは、研究成果発表ならびに交流を目的としています。
 研究成果発表を目的ではありますが、新たなイノベーション研究や技術に対して、新たな研究の方向性を模索したり研究支援とか投資等を行いたいと考えてのマッチングの場でもあります。
 従来の研究成果発表会ではなく、今後のまさにコンベンションと言える形式となっています。その一端をご紹介したいと思います。 

さきがけライブ2006 受付

 参加者は来場すると受付登録いたしますが、会議の受付シーンというより
展示会の受付のイメージが強いものになっています。

ステージでの発表

 壇上での発表は従来の形式ですが、写真左サイドのスクリーンでは発表者のブース番号が写し出されています。短い時間内での発表で興味をもった方々は、ブースに行って詳細に質問や議論ができるようになっています。

この写真の通り発表者は、ブースを個別に与えられ具体的な資料やデータ、
場合によっては、機材を持ち込んでのディスカッションが可能です。

ブース内での活発な議論が行われている様子。

ポターセッションという形式があります。発表者が現在取り組んでいるテーマを1枚のポスターにまとめて(パネルに張り付けて)発表することです。 発表者と参加者の距離が近く、一つのテーマに関連するアイデアや意見を交換できます。このシーンは、まさにブースセッションと言えそうです。

 具体的に機材を持ち込んでのデモンストレーションが効果的です。

レセプション風景

 発表終了後の夕刻には、会場内での簡単なレセプションパーティが開催され、参加者の交流機会が設けられています。

 次に、仙台市の取り組みをご紹介したいと思います。

 アジア協力対話(ACD)は,アジアの外務大臣が関心事項について,定期的に意見交換を行う非公式な対話の枠組であり,2002年にタイのイニシアティブにより開始されました。
 環境教育推進対話は、環境教育に関する率直な意見や情報の交換を行う機会を提供することを目的に、我が国が2003年6月にタイにおいてプライム・ムーバー・プロジェクトとして提案したことに基づき開催されています。
このプライム・ムーバー・プロジェクトとは1国(または複数国)がプロジェクトを主導し、参加の意思と用意のある国が参加するプロジェクトです。
 第1回環境教育推進対話は2004年に武蔵野市で、第2回は2005年に横浜市で開催されました。
 第3回は、「国連持続可能な開発のための教育の10年(ESDの10年)」をテーマとし、アジア諸国の取り組みについて意見交換すると共にわが国の実施計画を公表しました。

 本会議の大きな枠組みは、上記スライドの通りです。
 2002年にヨハネスブルグで開催された持続可能な開発に関する世界首脳会議における小泉首相の提案に基づき、同年12月、国連総会は2005年-2014年を国連持続可能な開発のための教育の10年(DESD)と宣言しました。
 第3回は、仙台市において開催、仙台市の取り組みを紹介しながら、各国の取り組み状況についても意見交換しました。

 仙台市の取り組みの中心となったのは宮城教育大学でした。また、仙台市のみならず周辺自治体の気仙沼市、田尻町などの参画もあり大きな枠組みの中で取り組んできた状況が分かります。

仙台市の取り組みを紹介したパンフレット

 会議日程は、6月14日、15日の2日間でした。
 会議プログラムは上記の通りです。

外務大臣政務官が出席し、今後の日本の取り組み、実施計画についての報告もありました。

仙台の取り組み状況についての報告発表
各国の取り組み状況の報告、意見交換

下記の写真2枚は、地元小学校の授業参観の様子です。

地元小学校の授業参観
地元小学校の授業参観

 今回の視察は、生ゴミリサイクルなどに取り組むNPO直売市、炭と藁で作るエコフィッシュを用いた小学校での環境教育、アカモクという海藻を用いた松島湾の浄化運動と充実し、アジア諸国の参加者はわが国の地域における様々な関係者が連携したESDの取り組みについて理解を深めることになりました。これらは、宮城教育大学、仙台市立北六番丁小学校、松島町等の協力に負うところが大きいと評価されました。

 次に、川崎市の事例を簡単にご紹介します。

 川崎市は、環境問題に取り組み自治体として知られていますが、エコビジネスフォーラムを開催しています。第3回の実施概要は、上記の通りです。
本フォーラムの目的は、環境と産業が調和した持続可能な都市モデル形成のための先進的な環境技術・戦略の情報交換にあります。
 川崎市が主催となって、第1回会議は2005年、第2回会議は2006年、毎年開催されています。
 会議日程プログラムは、下記のスライドをご覧ください。

以下の写真は、セッションの様子です。

パネルディスカッション

上記2枚の写真は、分科会において会議取りまとめの様子です。

次に、沖縄県の事例をご紹介します。

 20世紀最後のサミットであり、日本初の地方開催のサミットとなった沖縄サミット。札幌、千葉、横浜、大阪、広島、福岡、宮崎、沖縄の8つの地域が立候補をしました。最終的に開催地に選ばれた沖縄は、最後発の立候補地であり、一番不利とみられていました。直前の報道でも福岡や宮崎が有力とされ、沖縄が開催地に決まったことは、大逆転と報道され、大きな驚きを与えました。沖縄開催の決定は、小渕前総理大臣の英断と高く評価され、「まさに政治判断」言われています。
 サミットが沖縄開催となったインパクトは強烈で、コンベンションマーケットにおける知名度は大きく上がりました。上記スライドの通り沖縄における国際コンベンションの開催件数は飛躍的に増えつつあります。サミット開催効果がありました。
 さらに2005年に米州開発銀行(IDB)年次総会が沖縄で開催されました。14年ぶりに日本で2度目の開催地となったのが、沖縄でした。
 今後、様々な国際コンベンションが、沖縄での開催を検討すると予想されます。当然、その中から実際に沖縄で開催されることになっていくでしょう。

米州開発銀行(IDB)年次総会(2005年)
米州開発銀行(IDB)年次総会(2005年)

 以上、3つの国際コンベンションについてご紹介しました。
仙台市の事例は、日本各地で開催される国際コンベンションを誘致し運営を主体的に実施したケースと区分できます。残念ながら、継続性はありませんが、集中して取り組めインパクトはあります。専門家・研究者のみならず、地元関係者や児童生徒等の参加も促せ、国際コンベンション開催の効果が見込めます。先に説明した島原市で開催された火山都市国際会議は、会議の性格上、そういった効果を目的としています。
川崎市の事例は、主体的に企画し実施運営し毎年開催しています。主催都市のアイデンティティを明確に訴求でき、じわじわと浸透させる効果があります。企画運営とも、少しずつバージョンアップさせていけます。その経験値は、他の案件にも有効に活用される効果も見込めます。
沖縄の事例は、誘致型で企画運営とも全て主体は国や国際本部等にあります。開催時の世界からの注目度は高く、メディアによる開催地紹介等の取材報道は、大きなインパクトがあります。受け入れ態勢や運営ノウハウは、回を重ねるごとに経験を積んでいけると思われます。

国際コンベンション開催は、主催者(団体)により企画し運営されるケースが大半です。主催者(団体)が、新潟で開催しようという決断をしなければ
開催件数は増えていきません。ある面では、他力本願です。新潟でも開催できるという機運を醸成していかないと実現できません。

本スライドで、ご説明するのは「政策実現と国際コンベンションの開催」です。新潟市が取り組む政策実現のために、官公庁や国際機関と連携しながら
政策の理解と普及啓発を狙って施策の事業化を図る。その一つが、国際コンベンションの開催に結びつける。
国際コンベンションのコミュニケーション・メディア機能を活用していきたいですね。このコミュニケーション・メディアとは、人と人とが意思や感情を伝達しあい、相互に影響を受けながら成長していくこと、と私は捉えています。イベント&コンベンションのみならず、都市文化や都市空間そのものに影響を及ぼすのではないかと考えています。テーマパークをあるエリアの空間として考えてみますと、そこには目に見えない共有する文化を形成していると考えるからです。

イベントやコンベンションに求められる3要素は、上記の通り、「情報」,「コンテスト」,「マーケット」だと考えております。評価が高く成功に導く企画は、この3要素が含まれていると言っても過言ではないと思います。
 そこに行けば「人の交流」があり「新たな情報が得られる」あるいは「情報交換ができる」といった「情報の交流」があることが第一の要素として大切です。
 次に、「コンテスト」があること。参加者が競い結果をオープンにする。そのためには、審査基準や基本となる評価基準が無くてはなりません。
 3つ目は、そこに「マーケット」があることが大切です。そこで「買い物」をすることによって「情報や文化を持ち帰る」ことが大切な要素と考えます。改めてお土産は重要ですね、
 新たなイベント&コンベンション企画を立案する時に、この3要素を疎かにしてはいけないと考えています。

 イベント&コンベンションで多くの方々の参加があった実施企画を分析しますと、上記の5つのポイントがあります。
 非日常的な異質空間、安心してコミュニケーションできる心のつながりがあり、地域特性つまりアイデンティティを生かした文化発信があること、安っぽくない優れた感性の本物に接することができること、マンネリになることなく、常に新陳代謝しており新たな出会いがありそうと思わせる何かがあること。
 イベント&コンベンションを企画する際には、この5ポイントを念頭に置いて計画することが要諦と考えています。

 コミュニティ・アイデンティティとは、主体となる組織(コミュニティ)の存在意義を明確にすることが重要です。違う言葉で表現すると、基本理念をしっかりと固めておく必要があります。自分達は何故、イベント&コンベンションを実施し地域・社会とどう関わろうと考えているのか?曖昧な計画のまま推進すると途中でブレて破綻するケースが多くみられます。
 計画策定に当たっては、事前調査・事前準備を充分に行うことが求められます。明確な基本理念と入念な調査に基づいた計画策定は、組織を固め多くの方々に協力を仰ぐ際に、重要な基軸となります。
 組織化を図る段階で、主催するリーダーシップは重要なポイントです。責任・役割分担を明確にして、プロデューサー感覚のある人材が求められます。
 開催する地域の歴史や文化に基づいたイベント&コンベンションは、社会にインパクトを与え、多くの人々の賛同を得られることが可能となります。
企画コンセプトが、歴史や文化に根付いたもの、曖昧ではなく明確化していきたい。
 そのことによって、地域・関係者、まずは中心的な存在、ベースとなる方々の賛同を得て、協力態勢を構築していく。機運の盛り上げは、そこからスタートしていきたい。そうすれば大きな広がりに繋がっていくはずです。
 古くからあるお祭りのように、継続していく。一過性のイベント&コンベンションではなく、継続して実施することにより、更に企画のアイデンティティは確立され、文化が形成されると思っています。 

 新潟らしい『みなとまち文化』や『近代化遺産』がきちんと整備され、訪れると非日常的な空間の中で歴史や文化を感じることができる。提供する設備やサービスはシステム化され高品質で、顧客に対応したハイレベル、ハイタッチなものとなっていて、雑然としたサービスではなく安心感がある。更に詳しく情報を得ようとすると、関連するコミュニティサイトがありネットワーク化されており市民との交流も可能。提供するサービス内容やシステム、コミュニティサイトの情報も常に更新され、新陳代謝されていることが感じられる。訪れると、ホスピタリティ豊かなきめ細かい気配り、やさしさが感じられ、多くの人がまた来たい、訪れたいと思い、リピーターが多い環境となっている。
 

 マーケティングとは、一般的には商品やサービスが売れる仕組みを作ることです。 具体的には、市場調査/商品開発/広告宣伝/販売促進/営業/販売など全ての工程を戦略的に行う事業戦略と言えます。 また、顧客の課題を読み解き、価値を提供するという企業の事業活動そのものでもあります。
 昨今、都市のマーケティング戦略が求められるようになりました。
 話が変わりますが、東京都知事に就任した石原慎太郎氏が中曽根元首相に就任挨拶に出向いたところ、中曽根さんからいくつかのアドバイスがあったそうです。その一つに東京都のライバル都市はどこですか?ライバル都市を想定して施策した方が良いというものだったそうです。マーケティングの真髄があると思います。どう差別化を図り、オリジナリティを確立するため、こうするんだ(政策・施策)、その積み重ねがアイデンティティ、文化形成へとつながっていきます。
 「新潟市のライバルは?」と、これまで新潟市の職員の方やビジネス上でお付き合いのある新潟市在住の方に、聞いてみました。いきなり聞かれて驚き戸惑いながら、返ってきたのは仙台市という答えでした。市制施行100周年を迎えた1989年4月1 日、政令指定都市仙台市が誕生しました。 少し先行しているライバル都市という存在と言えそうです。
 国際コンベンション・マーケットにおいても、開催件数も仙台市の方が多い状況となっています。ただ、会議の誘致において仙台市と新潟市が競合しているとは、あまり聞きません。
 さて冒頭に申し上げました通り、新潟市は本州の日本海側では唯一の政令指定都市への移行に伴い、またこの機会をとらえて国際拠点都市を目指す新潟市としては、日本海側最大の複合一体型コンベンションセンター「朱鷺メッセ」を有しており、まずは国際コンベンション都市としてイメージアップを図っていきたいと考えています。
 国際コンベンションの誘致に力を注ぎたいところです。そこで注目されるのが、開催支援制度つまり開催補助金等です。主催者にとって、財務状況は潤沢ではなく資金確保に四苦八苦しているのが実状ですから補助金等による支援はありがたい。しかし、どの都市も(観光コンベンション協会等も含めて)似たり寄ったりの支援制度を設けています。従って、支援制度はプラス評価にはならず無いことによるマイナス評価対象でしかない状況です。
 それでは競合する都市と如何に差別化を図るかがポイントとなります。
 開催都市つまり新潟の特色をアピールしていく。特色とは、会議テーマと連携する施策や都市としてのアイデンティティ、観光資源の紹介等ではないかと考えます。
 誘致するケースでは、主催者が新潟で開催しようと発案し立候補する必要があります。そのためには、主体となってその分野で活動し、周囲から認められる存在であることが望ましい。ある学術分野で、地元に研究成果を上げている研究者がいて、研究のみならず学術分野での日頃からの活動に加わっていないと、知己を得ることも賛同を得ることも難しい。
 地元にどんな有力者がいるか発掘して、会議開催できる財務的な支援や運営支援が可能だということを日頃から理解してもらっておく必要があります。
 今後の戦略として、サミットや関連する大臣会合といった国を挙げても国際的なコンベンションの誘致に積極的に取り組む必要があります。先に事例としてご紹介した沖縄のケースですね。誘致活動そのものが、広報PRとして効果があり、知名度が上がっていくでしょう。
 また、仙台や川崎市のケースのように市の施策と連携するような会議の誘致や主催開催のコンベンションを起案し場合によっては誘致して、毎年継続して開催。市のアイデンティティを形成、アピールしたいですね。
 大きな会議に付随して展示会を開催するタイプもあれば、展示会をメインとしながらも議論する場としての会議を開催するタイプもあります。新潟で開催する方向性、ターゲットとしては、後者の展示会をメインにしたコンベンション誘致に力を注ぐのが良いのではないかと考えております。日本では見本市という形態の大型展示会が数多く開催されています。見本市ですから企業の売買がその場で行われないケースが多く、海外ではあまり多くないタイプです。従って、出展は企業が中心です。と言って、マーケットを伴いますが新潟で物販展を開催するイメージで申し上げてもいません。新潟は物流の交流地点でもあり、田園都市でもあります。世界に誇る自慢の農水産物が多く、食の豊かさは新潟市の大きな魅力の一つです。食品関連産業も集積し
文化も育まれてきました。そういった新潟の特性を活かしたコンベンションこそ新潟ならではの企画が実現できるのではないでしょうか。
 企業見本市から昨今では、個人を基軸にしたコンベンションも多くなりました。ご紹介した映画祭やらん展といった事例のみならず、コミックマーケットといった分野でも海外からの注目度は高くなっています。
 国際コンベンションの参加者は、開催地でいくらぐらい消費すると思いますか?ストレートに表現すれば、地元にどのくらいの金額を落としてくれるのでしょうか?
 国際観光振興会(JNTO)の調査では、参加者一人当たり平均7万円~10万円だそうです。この金額に会議参加者総数を積算すれば、総額が計算できます。また、文化・スポーツイベントや見本市・展示会における参加者の消費額よりも国際コンベンションの額の方が大きい。
 国際コンベンションは、通常3~5日間の会期が多いのでその期間の宿泊が伴います。従って、消費額が大きくなるのです。
 観光旅行は、国際動向や経済状況によって観光客の増減が大きいですが、国際コンベンションはそういった状況に左右されにくく、安定した開催が見込まれます。
 先に主催者(Organizer)、その業務等ご説明しました。このスライドでは、コンベンションプロデューサーという言葉を使っていますが、そんなに違いはありません。昨今の傾向として、プロデューサーという表現の方が多く使われるようになっているものですから、ご理解いただきやすいかと思いっております。
 国際コンベンションが新潟で活発に開催され新潟の知名度を向上させるために人材育成について、最後にお話ししたいと思います。
 私のこれまでの経験で申し上げますと、国際コンベンションを日本で開催するために主題者は何をしなければならないか、認識が深まってきています。これまでの経験値が生かされ、伝承されてきています。また、新たに取り組もうとされる方も、JNTO等から発行されている国際会議開催の手引き書等を入手し学ぼうとしている方も多くなりました。そういった機運が高まり、ノウハウが蓄積されるような状況には、新潟は残念ながら至っていないと思います。
 まず新潟での開催件数を規模に関わらず増やし、経験を積んでいけば可能ではないかと思います。主催責任者の下で、若手の方が経験を積めば良いと思いますが、時間がかかります。
 そこで主催者にアドバイスして上手く導いていく存在が必要になります。観光コンベンションあるいは朱鷺メッセ等の会場者の中から、主催者の方々にアドバイスできる人材を発掘し養成していく時期に来ているように感じています。ノウハウを体系化して手引書のようなものを作成していくことも人材養成の一つになるのではないかと思っています。