ある新任課長への余談 ② チーム力
2015年に開催されたラグビーW杯イングランド大会において、日本代表チームは優勝候補の一角であった南アフリカに劇的な勝利をおさめ世界を驚かせた。日本代表チームを率いたのはヘッドコーチのエディ・ジョーンズ氏です。彼は「勝つための組織作り」について、5つの基盤が必要だと述べている。
(1)リーダーシップ
(2)マネジメント
(3)自分の強みを知ること
(4)規律と文化を構築すること
(5)学ぶ環境を構築すること
(1)『リーダーシップ』・・・「周りの人たちのベストを引き出すこと」
自分達にはポテンシャルがあることを、彼らに気づかせることが大事です。一体感のあるビジョンを持ち、価値ある仕事の一員になって携わると感じることで感情移入していき、特別な何かが引き出される。
リーダーシップスキルの第一は、観察スキル。
「観察すること」で、人をしっかり見て、必要なことを知ることが大切だと述べている。
日本の監督は、立って腕組みをして「自分は何でも知っている」、「何でも言われたことをやれ」という人が多い。リーダーは逆でなくてはならない。リーダーは常に学び、変化に適応していく能力が求められ、学びはリーダーにとって不可欠だと述べている。
(2)『マネジメント』・・・「一人ひとりを理解して指示を出す」
一人ひとりの能力を最大限引き出すには、みんな違っているのだから一人ひとりに合った指示を出し、理解できるようにすること。従って、みんな一律に指示をすることはしない。
チームとして同じ価値観と目標を持つ
勝つためにはチームとして同じ価値観、目標を持つことが大切。
チームには一貫性のあるパフォーマンスを求める。チームとして最大限のパフォーマンス、しっかりと仕事ができるパフォーマンスは、どのレベルなのか見極める必要がある。
下降線の人間は切り離す
スポーツでもビジネスでも、誰がピークに達しているか、誰が下降線にあるかを正確に判断する必要がある。これ以上の生産性がないと判断したら、その瞬間に切り離す必要がある。引きずっていってはいけない。
(3)対戦相手を理解し、自分たちの強みを知る
日本人選手の足は短いが、10メートルの走力なら世界一の速さになり、短距離を賢く走りきれば南アフリカに勝てると考え戦術として「素早く、賢く動くこと」とした。南アフリカの強みはフィジカルで、当たれば南アフリカの選手の方が強い。そこで、日本チームは走っているところにはボールを投げないという戦術を採用した。
(4)規律と文化を構築すること
規律とは、決められたルールを徹底して守ること。規律を守ると同時に文化を共有することが大切。オフィシャルな話し合いは選手を緊張させる。3分間くらいの短い時間でもいいから1対1で話すカジュアルなミーティングを数多くもち、「あなたのことを大事に思っている」ことを伝える必要がある。
(5)学ぶ環境を構築すること
どんなスキル、どんな組織、どんな人材が必要になるか、将来を見据えて準備していかねばならない。そのために学ぶ必要がある。たまに失敗してもそこから前進すればいい。
成功するためには、このポイントをやり続けていくこと。本当に自分のやることを信じること、勝つ準備をすること、ずっとやり続けること。それができれば勝てると、エディ・ジョーンズ氏は語る。
「エディ・ジョーンズ:世界で勝つための組織作り」より
スポーツにおけるマネジメントの成功体験は、ビジネスにおいても学ぶことが多い。
********************************
チーム力を向上させる前提として、皆(チームメンバー)が互いに理解し合う、場合によっては一緒になって取り組む、助け合える関係を築くチームビルディングが求められます。
現状における取り組むべき具体的事項は、下記の通り。
(1)業務の体系化/標準化
①業務の棚卸し
業務を全て洗い出し、整理する。
②業務の鳥瞰図
カテゴリーごとにラフなイメージで図示し関連性が分かるように
整理する。
③業務の体系化
業務項目を明確に(定義)し、大・中・小の階層で整理する。
(2)業務マニュアルの作成
業務全体が把握でき、マニュアル通りに実施すれば誰でも業務遂行
可能なマニュアル、図解等により分かりやすい内容のマニュアル作成
を目指す。
(3)新人職員向けの研修プログラムの作成
新たに加わる職員に基礎的な研修を実施するため、研修計画を策定
する。
研修プログラム(期間や研修構成など)の確定
誰が講師になっても同じ研修が実施できるよう教材を作成する。
実習、OJT等のプログラム編成の考え方を整理
※上記の実施に当たっては、可能な限りチーム内メンバーを巻き込み、議論し作成することが望ましい。
新任課長からの質問に対する私のアドバイスメモの第一段は、部下を知るために、観察すること、これまでの業務実績を把握すること、部下にアプローチする際の手法について言及しました。
今回は、上記通り担当組織の業務の把握、見える化や共有化を推進するために、業務の体系化や業務マニュアルの作成、そして研修プログラムの作成を提案する次第です。