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ある新任課長への余談 ③ 環境づくり


「teamLab:Transcending Boundaries」
2017年1月にロンドンのPace Londonで開催された個展。

世の中を驚かせるアートを生み出し続ける
“ウルトラテクロノジスト集団”チームラボ。チームの代表は、猪子寿之 氏。

これまで受けてきたインタビューや対談等の取材記事から、組織の成り立ち、コンセプトやマネジメント,リーダーシップ等について猪子代表が語る内容を以下のようにまとめてみた。

チームラボは、その創作活動の基本に「集団的創造」を掲げている。なぜ彼らは、チームでの作品作りにこだわり続けるのか?
最新のテクノロジーを活用したシステムやデジタルコンテンツの開発を行うチームラボは、アーティスト、プログラマ、エンジニア、CGアニメーター、数学者、建築家など、 デジタル社会の様々な分野の専門家で構成されている。取り組む仕事は細分化しており、一人の専門職が全てを考えることは難しい。クリエイティブな発想は、チームラボという『場』が生み出していると、猪子代表は語っている。

知の発見、共有する集団
モノをつくるという行為を通して知の発見をして、それを共有することで、集団による創造力を上げる。究極的には、組織の強みはそれのみで決まると考えているようだ。
本来、チームラボはプロジェクト型の組織で構成されている。一つのプロジェクトを立ち上げてマネジメントする人を決めるが、そのプロジェクトが終わればその人はマネージャーでなくなる。
猪子自身、会社の中の5%程度のプロジェクトを担当しており、そのプロジェクトのメンバーと一緒にプランニングしている。

創造する環境
代表と肩書がついてはいるが、リーダーとかまとめ役というよりは一人のアーティストに過ぎない。あえて言えば、自分の役割としては皆が活躍する『場』を提供しているだけで、多様な専門家が集まって共同でアートを創造する、その目標を達成できる環境をつくっている。

例えば『略語を使わない』とか、『ローカル(個人)で紙を使うのは禁止』とか。略語って、その分野の専門家しか分からない言葉だったり、内輪だけで共有する言葉で、外の世界の人と共有しようという意識がないと彼は感じる。

打合せ時に、自分のノートにだけ書き留めるのは、利己的な行為だと思うので、聞き書きやアイデアなどのメモはクラウドのようなシステムを使って、誰もが見られるように共有する。チームラボは知のネットワーク化を重要視している。

チームラボは大学時代から一緒に活動してきたアート仲間と立ち上げた為か、彼自身が『ずっといたい場所』としてチームラボをつくったのかもしれない、と語っている。

一方で、組織を引っ張るリーダーシップと聞いてイメージするのは、工場で皆にやる気を出させて商品を効率的に生産するとか、軍隊などの組織が他の組織に勝てるよう個人に命令通りに動いてもらう、といったものです。それは、個人に主体性を発揮してもらうとか、自分が今やっていることの意味を考えよう、という発想とは正反対でチームラボの考え方とは違う。

彼自身、組織のトップとしてのマネジメント能力があるとは思っていない。スティーブ・ジョブズ(アップル創業者)だってマネジメント能力ないんじゃないか。
むしろマネジメント能力がある人が組織のトップに立つべきでないのかもしれない、と述べている。

チームラボはアートをつくっている組織です。何をしているかというと、こういうものを創りたい、という意思や主体性を持った専門家が集まって、『知』を持ち寄ってつなぎ合わせていくことでアートを生み出しています。

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猪子氏は、主体的な人が自分で自分を引っ張って、それぞれの力が掛け合わさることでより大きな結果をもたらす、と考えているようだ。
そのためには、チーム内のコミュニケーションを大切にし、情報の共有化を図り、クリエイティブな環境(場)をつくり出すことを重視している。

これからの時代は力を持った(プロフェッショナルな)個人が、それぞれリーダーとしてコラボレートしていくことで、まさしくチームラボのような人を感動させる組織づくりができると思われる。

クリエイティブな環境(場)をこれからつくり出したいと考えるリーダーにとって、指針となる以下の考え方を参考としたい。

企業風土を変えるには、『気楽にまじめな話をする場』が必要条件
経営コンサルタント 柴田 昌治
氏は語る。
心がけるポイントは、

①形式ばらず気楽な雰囲気をつくる
②話し合いの場では結論をノルマ化しない
③まず「人の話をきく」という姿勢を持つ
④立場を離れる努力をする
⑤相手にレッテルを貼ったままにしない
⑥正しいことを言い過ぎない
⑦相手をすぐにやっつけ過ぎない
⑧自分の弱みを早めに上手に見せる
⑨リ・コミュニケーションは、話し合う場から聞き合う場へ

組織風土を変えるには、まず今の状況を変えて思いを実践に生かせる環境を
意図的に作る必要がある。
「思い」を持った人材を発掘する
1人でも問題意識の強い人材を発掘する。内に秘めた情熱を持つ人材を見つける。まず、人の「目利き」ができること。通常はどうしても“仕事ができる/できない”という結果で評価しがちだからです。部下に対して思いやりがあり、事実に対して誠実な人は、改革の原動力になり得る。人間性を重視した観点での目利きは、問題意識の高い人材を発掘することにつながりやすい。

「変える能力」を磨く
「言われた課題をそつなくこなす能力」とは異なります。
①共感能力
 目線を合わせて人の話を聞くことができ、他人の痛みや喜びが分かる。
②協働能力
 自分と異なる価値観を受け入れて、他人の力を借りたり、他人と相談できる関係を作れる。
③仮説提案能力
 問題の本質をとらえ、1つひとつの事象を大局的に見て改革のシナリオを描ける。
④実践能力
 波風を立てることをいとわずに、他人を巻き込んで大きな力を作れる。制約条件を取り払おうとして行動できる。
⑤問題感受能力
 自ら問題を見つけ、自分の問題として考えられる。