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成長






風が冷たくなってきた。

むすめが生まれてから、もう5回目になる冬が来る。

はじめての冬は、まだ赤ちゃんで、その靴下の小ささが可愛かった。
2回目の冬は、もこもこのコートが歩いているようで、それはそれは可愛かった。
3回目の冬も、4回目の冬も、気づけばあっという間に過ぎていった。
そうして5回目になる冬が、もう目の前まで来ている。

季節がめぐることを覚えた小さなからだが、ぴょんぴょん跳ねながら、大人のまねをして、言う。

「かぜが つめたく なってきたね。」

公園には、今年も、どんぐりがたくさん落ちている。

「そうだね。暗くなる前に帰ろうね。」

私がそう言えば、むすめは、手を差し伸べてくれる。どんぐりを拾うのに夢中だった手は、ずいぶん、冷たかった。

「ままのて あたたかいね。」

そのむすめの言葉は、私にとって、大事件だった。
1つ前の冬には、たしかに、むすめは「あたたたかい」と言っていたから。

「そうでしょう。手をつなぐために、あたためておいたよ。」

私が笑うと、むすめも笑う。私は大事件を飲み込んで、むすめと一緒に帰路につく。驚くことは何もない。その大事件の名前を、私はとっくに知っている。


文  いなみみ
絵  こたきさえ

読んでいただきありがとうございました。とってもうれしいです。またね。