SSL2+USBオーディオインターフェイスの音

INAEです。

昨年、自宅で録音をしてみたいと思い、初めて手にしたインターフェイスがAudientのiD14(2-in/4-out)でした。

インターフェイスって何なの?というレベルから始まった私ですら録音ができています。これから録音をされたい方、安心してください。

インターフェイスというのは「接触面」「境界面」という意味の英語ですが、その名の通り、私たちが放つ音(アナログ)をデジタルに変換して、電脳世界に送り込んでくれる箱です。この箱の中で小人たちがアナログを頑張ってデジタルに変換してくれているので、振ったり叩いたりせず、大切に扱ってください。これがないと録音ができません。PC画面に頭を押し付けても中に入れないのと同じです。

私のフルートの音色はbreathyで、良く言えばメレンゲのようにふわっと軽い、悪く言えば音が痩せやすいのが特徴です。この本来の生音の質感を壊さない、いわゆる雑音までもしっかり録ってくれ、かつ操作性とコストパフォーマンスがいいものを探し、こちらにたどり着きました。

iD14は極端な色づきもなく、フラットに音を録ってくれる印象です。派手さはないけれど、ピュアな音で採録できるので気に入っています。

ただ、当初から謎の動作不良があり、これが結構なストレスでした。

スピーカー、ヘッドフォンのどちらもなのですが、接続してから、DAWなどの再生ボタンを押して、音が初めて出力されるまでに5〜10秒ほどラグがあるのです。(?)ひどい時には、ボリュームのつまみを少しずつ上げていかないと反応してくれなかったり、かなり気分屋なiD14。

電力不足なのかなと思ったのですが、電源から直接繋いでるしなぁ。そもそも付属のUSBはしょっちゅう接続が外れまくっていたので、他のUSBケーブルに変えてみたところ一応落ち着きました。

それでも、一旦音が出始めてからは接続が外れるということはなかったので愛用していたところ

Solid State Logicより、新しいオーディオインターフェイスが発売されました。「SSL2」と「SSL2+」です。

リンク内の情報を見ていただければおわかりになると思いますが、SSLの製品としては、驚愕の価格設定になっています。

最高級のアナログメーカーとして名高いSSLのインターフェイスって、一体どんな音がするのだろう...

気になったので早速使ってみます。

画像1

iD14と比べると....少し大きくて偉そうです。

iD14は相変わらずシンプルで健気な見た目。好きです。

画像2

iD14...約780g

SSL2+...約880g

持ち運んで使用される方も、このくらいなら使いやすそうですね。

画像3

作業中にヘッドフォンを使い分けたい方、MIDI端子が必要な方には、2in4outでバランス出力に対応している「SSL2+」が断然おすすめです。

USBケーブルは'C' to 'C'と 'A' to 'C'の2本が同梱されています。私は2016年のmacbook proを使用しているのですが、iD14だとUSB"C"しか同梱されていないので、変換用するためのハブを使っています。SSL2+なら直接接続できるので、これもちょっと嬉しい。Simple is best.

兎にも角にも音ですよね。

下記からiD14、SSL2+(通常)、SSL2+(4KスイッチON)を聴き比べられますので、ぜひ聴いてみてください。

・J.S.Bach/Air Flute ver. 

かなり印象が変わりますよね。

【Audient iD14】芳醇な太い音。音に丸みがあり優しく、艶やかな音色です。音の抜け方はSSLほどではありませんが、暖かみがあって各パートが滑らかに溶け合います。天井が高い空間の音ではないけれど、窮屈にも聞こえない良いバランスです。

【SSL2+】スタイリッシュでエッジの効いた音。厚みはあまり感じられません。4Kスイッチを入れると、さらに輪郭がくっきりとして抜ける感じがあります。ただ、フルートの高音が少しギラついた音に聞こえてしまうのと音が痩せているように聞こえるのが気になります。色付けを前提とするならこれくらいの方がかえって良いのかもしれませんが。輪郭がはっきりするのでそれぞれのパートが明瞭に聞こえます。

歌も録ってみました。

・Body and soul (Audient iD14)


しゃりしゃりした音色にしたいならSSL、しっとりした質感が欲しいならiD14という印象でした。歌の場合、4Kスイッチの効果はより濃く表れています。フルートだとあまり厚みの変化が感じられなかったものの、歌に4Kをかけると太さも増して聞こえます。

同じ価格帯なのにこうも違う。

これまで1つのインターフェイスしか使ってこなかったので、比較して初めてiD14の音色に気がつきました。個人的にはiD14の濡れたような音が大変気に入ってます。謎の不具合さえなければね.............

明らかにどちらかが飛び抜けて気に入ったらどちらかリリースしようと思っていたんですが、個性が比較的反対方向に振れているのでしばらくは2台とも我が家で活躍することになりそうです。

続いてDAについても触れたいと思います。

ずっとiD14→モニターFocal shape40という環境に慣れてしまってるので、これが私のスタンダードとして、SSLがどんな感じ音なのか聴き比べてみました。

SSL2+はインプットの音とはうってかわってiD14よりも中域がこもった音に聞こえます。ただ、厚みも増すのでSSL+で録った音をSSL+で聴くと線の細さがカバーされてとても良いバランスになります(笑)

とにかくボリューム感があります。最低域と最高音の付近はかなり明瞭に聞こえ、中音域がぼやけて聞こえ、いわゆる「ドンシャリ」な傾向があります。どの音楽も刺激的に聞こえ、個性が映えます。

iD14は立体感がSSLに劣るものの、極端に聞こえにくい音域などがなく、良くも悪くもフラットに出力されます。低域、高域のディティールも少し聞き取りづらい。

SSLを通して初めて「こんな音鳴ってたの!?」と気づいた作品が多数。

今回はモニターからの出音のみのレビューを書きましたが、後日ヘッドフォンでの聴き比べも追記するかもしれません。

これは楽器にも言えることなのですが、全てがパーフェクトな道具なんてこの世には存在しないのですよね。音のいいアナログ機器は途轍もなく高価な上に繊細。コストパフォーマンスを重視すればコストを削っているのだから何かしら苦手な部分があるけれど、ありがたいことにたくさんのメーカーさんが機材を開発してくださっているので、あとはうまく目と耳を利かせて選んでいこうと思います。

一つ言えるのは、高い機材は多分、とってもいい音がするんだろな。

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▽2020年2月14日追記《ヘッドホン出力の所感・音源のリバーブについて》

試しそびれていたヘッドホンで、下記の聴き比べをしました。

Aurora / Apple Tree
N.E.R.D / Lemon
Jeff Buckley / Hallelujah

まず、全体の所感です。

スピーカーと同様、SSLの方がディティールははっきり聴き取れます。
モニタリングをメインとしてインターフェイスを使用される方には、iD14からの出力音はあまりにも漠然としています。
やはり芳醇な音には変わりないので、SSLでは感知できない要素まで掬い取ってくれているとは思うのですが。
子音の音や遠くから鳴っているほんの僅かなオブリガート、傷までちゃんと確認したいのであればSSLを選びたいところです。
ただ、アウトプットに特化した他のインターフェイスと比較して、このSSLの突出したメリットどがのくらいあるのかは未知です。

それぞれの作品ごとに見ていきましょう。

<Aurora / Apple Tree>
散りばめてある繊細なディティールが聞こえるかを試しました。
iD14の音はまろやかな分、どうしてもぼやけてしまう音があります。
圧倒的にSSLの方が聞こえますが、どうしても色が薄く、瘦せぎすなのが気になります。良くも悪くも冷たい音です。

<N.E.R.D / Lemon>
30~40Hz近辺の低域の聴こえ方を検証しました。
まずスピーカーで試したところ、残念ながら両機とも全く聴こえません。

ヘッドホンではどうでしょうか?
iD14は、ほんの僅かですが低域が鳴った時の「風」を感じました(笑)
なんと表現したらいいのか分からないのですが…
この音域が聴こえると胸のあたりが振動して、両耳に空気の流れを感じるんです。
SSLでは、この音域はほとんど聞こえません。

<Jeff Buckley / Hallelujah>
音量を大きめにして聞いた時に、痛くなく聴けるかどうかを比較しました。
先ほども述べたように、SSLはブレスや子音の音をとても敏感に拾ってくれるのですが、
高域で声を張った音はシャリシャリしていて耳が圧迫されて痛いです。
iD14は最後までボリュームをいじらずに、高域から低域まで楽に聞けます。

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簡単な検証でしたが、いかがでしたでしょうか。

わたしは良い音で音を録りたいと思いSSLのインターフェイスに興味を抱いたのですが、
個人的には、インプットの際はiD14だけで十分だと思います。
フルートという楽器の音色の性質上、音の抜けが良くなっても、色気のない薄い音になってしまうデメリットが大きすぎるからです。他の楽器での録音に関しては不明なのですが、色のつき方については歌にもあてはまるのではないでしょうか?
あとは音色の好みやご本人の演奏の仕方、個性によって、選ぶものが変わってきそうですね。

多くの方がインターフェイスをアウトプットのために使用されていることを最近になって知り…
いえ、考えてみれば当たり前のことなのですが。
きっと多くの方に需要があるのはSSL2の方に違いないと思います。


最後に、今回の録音音源でどのくらい色付けがあるのか知っておきたいという方がいらしたため、
使用したリバーブだけ明記しておきます。

Valhalla Vintage Verb
Mode : Concert Hall


さて 練習するかにゃ




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