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チョップしたOLとチョップされたおじさんの話。

東京の小さな広告代理店で働いていた20代の頃の話。

その日は仕事が遅く、帰宅しようと電車に乗ると満席で社内も混み気味。みんな疲れてウトウトしている。ぼくもつり革に掴まってボンヤリ車窓を眺めていると、急に「わ!」と大きな声。

見ると、ほくの隣でつり革に掴まってウトウトしていたOLさんが前の席で眠っていたおじさんのすだれハゲ頭にキレイにチョップしていた。たぶん、つり革から手が離れてそのままおじさんの頭にチョップしたのだ。

二人とも何が起きたのか咄嗟に分からず、目を見開いたままチョップの姿勢を保っていた。その間、1〜2秒間。

事態を理解したOLさんが「す、すみません!」と謝って、おじさんも「い、いえ」と返事をして何事もなかったように電車は進んでいった。

ほくは今でも仕事に疲れるとあの二人を思い出す。時が止まったかのような見事なチョップ。おじさん、OLさん、お元気ですか。ぼくは元気です。

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