芦原妃名子さん/組織と個人/壁と卵/一色登希彦さんのブログ

何かのおりに、いったん、作家と編集者(出版社)の対立が外部にあらわになると、漫画家は多くの場合に、「組織/おおぜい/システム vs 個」の、“個”の側にたったひとりで立たされることになる。二人三脚していた相手、個人だったはずの編集者が引っ込んでしまって、代わりに、組織である出版社が出てきてしまう。芦原さんが言い残した「攻撃したかったわけではない」という言葉は、誰か個人を攻撃したかったのではなく、「組織 vs 個人」になってしまい、個人として困っている、ということを述べたかったはずです。「パーソナルとマスの問題」なんだけど、マスの中で(組織の中で)個人(パーソナル)として、その理解で組織と個人の問題を捉えて、そして言語化できている人は多くない。大きく括れば、これはハラスメントの問題に属します。パワハラは、立ち位置の不均衡を素地にして起こる。こちらは個人、向こうは組織。その不均衡を、多くの場合、組織(強者)に属する人は理解しきることができない。

芦原妃名子さん(一色登希彦/ブログ)


とてもとても読み応えのある一色登希彦さんのブログ。ずしんときて、重く、処理できず、咀嚼に時間がかかる。そういうことを書いているし、そういうことが起きたのだと思う。村上春樹のエルサレム賞受賞スピーチ『壁と卵』を思い出した。100%の部外者であり表現者でもなんでもないぼくが芦原妃名子さんの痛ましい事件に触れ、少なからず動揺し、一色登希彦さんのブログを読んで思うことは「これはぼくたちにも起こりうることなのだ」ということで。それがこのブログを読むとよくわかる。もちろん表現者たちの話であり、表現者とメディアビジネスの話ではあるが、「組織と個人」の話は誰も無関係でいられない。これはぼくたちの話でもある。ぼくの動揺はおそらくそこに起因する。

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