マガジンのカバー画像

忘れがちなひきだし

138
忘れがちなテキストをしまっておく場所です。
運営しているクリエイター

2021年6月の記事一覧

「感情的な人」と「情的な人」

どんなときも「感情的」にならず、そこに集う人々のことをよく観察している。状況をできるだけ深く読み込もうとする。こうした態度を保っていると、クールな印象を放つ。 だがその人は、機械のようにそれを行なっているのではない。むしろ「感情的」な人より、よほど強い情動に身を焦がしている。 感情は、情動を解釈する形式だ。喜怒哀楽の激しい人は、情動を覚えるはしから、それに形式を与えて外在化してしまう。 情深くあれ、とは、感情的になれということではない。むしろ情動に安易な形式を当てがうことな

眠れているうちは狂わない。

精神科医の中井久夫は、「眠れているうちは狂わない」と言った 体感としてよく分かる。 ぼくは精神が不安定になった一時期、とにかく「眠ること」が怖かった。だから、夜が来ることが怖かった。理由は分からない。でも、その気は大学時代からあった。眠れない自分を考えると、深くて暗い穴に落下し続けるかのように怖かった。 だから、より正確に言うと、「眠ること」が怖いのではなく、「眠ろうとして、眠れないかもしれないこと」が怖かった。そういう恐怖が絶えずあった。 40代になって精神状態が一番