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幸せは、0円。


南スペインでの通常運転。いつもどおり、買い出しをしなければいけないためパートナーとスーパーに行った。移住した当初は "ヨーロッパ" のスーパーということにドキドキしていた私だけれど、4年もこの地に住むと色々なことに慣れてくるもので。2人で淡々と買い出しに行った。

道を歩いていたら、午後なのに心地いい風が吹いてきた。ここ数日、午前中からずっと32℃-38℃だったセビリア。ケータイのアプリで温度を見てみたら、今日は27℃だった。こんな小さなことなのに、外を心地よく散歩できる事に嬉しくなってきた。

「あ〜、幸せ。メンタルも回復してくるってもんだよ。」

遠回しに、この街の夏が暑すぎると皮肉も混ぜてコメントしてみる。もちろんそんな皮肉に彼は気づかないから、うんうん、と歩きながらも賛同してくれた。

ある程度、いつも買うものたちは決まっている。スーパーに到着し、手際良く色々とピックアップしていると彼が子供のようにやってきた。手には最近ハマっている ” ディナーにコップ1杯だけ飲む赤ワイン ” を持っていた。色々なスーパーで、気になったワインを1本買って、ディナーに1杯だけ飲む。飲み終わったら、また試したことのないものを買って、飲んでみる。それが今、パートナーのホセが地味にハマっていることだったりする。

「何、どうしたの?」

お母さんみたいに質問してみる。さっきまでお互い疲れていて、買い物をめんどくさそうにしていた彼から手渡されたのが、これだった。

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" Juntos " ( 一緒 )

「ももがよくJuntos! Juntos! って言うじゃん、こんなの見つけたよ!」

「え、何、じゃぁこの運転しているのがホセで、ネズミが私?」

「へへ、そう!今回は(ワイン)、これにするよ。」

そんな会話をして、彼がカートの中にそっとワインを入れた。大好物のフレッシュ・オレンジジュースを取りに、彼はそのまま歩いていってしまったけど、私はなんだか一人、とても暖かい気持ちになっていた。

冷蔵コーナーは涼しくて、というか若干寒いはずなのに、私はなんだか暖かく、満たされていた。その後すぐにホセがお会計を急かすから、「あっ」と気づいたように歩き出したけれど、私は数秒の間、心で味わっていたんだ。



コロナで全てが順調ではないかもしれない。仕事でも人生でも、楽しいことばかりではないかもしれない。大人になれば、小さな責任がまとまって、大きなストレスにだって簡単になってしまうかもしれない。でも。それでも、今、この瞬間も、ホセといれてよかったな。そう思ったと同時に、つくづく感動したのだ。



本当に.....


本当に、幸せって、ゼロ円なんだ、と。




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