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アセマネOneの元本確保型投信(ゴールドマン社債)について

アセットマネジメントOneの元本確保型のファンドについて、知人から「これってどう思う?」と聞かれたので販売用資料と請求目論見書を見てみました。
ブログの方に詳しく書いたのですが、検討中の方のご参考になればと思い、noteにはショートバージョンを書きます。
(当該金融商品を推奨する意図はありません。この記事を信用して発生したいかなる損害についても一切責任を取りませんので、申込みの是非については投資家自身の責任においてご判断ください。)

ファンドの特徴

ファンド名称:ゴールドマン・サックス社債/国際分散投資戦略ファンド2018-09(愛称:プライムOne2018-09)
申込期間: 2018年9月3日~2018年9月27日
楽天証券のファンド紹介ページ

大和証券のファンド紹介ページ

特徴としては、

(1) 単位型投信(当初の募集期間以降は追加設定を受け付けない)
(2) 信託期間終了日(2028年10月10日)時点で、コスト控除後で元本確保を目指す(逆に、信託期間中の値動きは運用成果次第)
(3) 運用はアセットマネジメントOneの計量モデルに基づいて、世界の株と債券に先物で分散投資する
(4) ファンドが実際に投資するのは、ゴールドマン・サックスが発行する社債(仕組債)(元本確保と国際分散投資のギミックを公募投信で実現するためと推察します)
(5) 仕組債の発行体のゴールドマン・サックスは、年に1回、A:信託報酬相当額とB:アセマネOneの運用実績に相当する額(実績連動クーポン)を支払う(Aがあるのでコスト控除後の元本確保が目指せる)

といった点が挙げられます。

7月にアセマネOneから同じ戦略のファンドが出ていて、これは第二弾です。7月設定のファンドの販売会社は大和証券のみだったようです。
http://www.am-one.co.jp/fund/distributors-list/311800/index.html?id=distributors

金利の無い国の願いを叶える知恵の林檎か?

現在の日本は金利の無い国です。
これは今に始まったことではなく、マイナス金利政策導入や2008年の金融危機以前から、元本保証のあるリテールの金融商品では意味のあるレベルの金利収入は得られませんでした。日銀の統計によると、期間5年の定期預金金利が最後に1%を超えたのは、20年前の1998年3月です。
そのため、過去10数年で流行した投信の多くが、金利の代替として配当収入(インカムゲイン)にフォーカスしたものでした。
ヘッジ付き外債、ハイイールド社債、J-REIT、米国REIT、CB(転換社債)、金融機関の劣後債、通貨選択型、カバードコール戦略、いずれも根本のコンセプトは同じでしょう。
このファンドはさらに踏み込んで、10年後の時点の元本を確保するというギミックを組み込むことで、満期になった定期預金の受け入れ先として提案することを意図しているように見えます。

複雑な外見にリスクを隠したキマイラか?

ギリシャ神話には、キマイラと呼ばれる怪物が登場します。
頭はライオン、胴体はヤギ、尻尾はヘビです。

7月に設定された先発ファンドはかなり話題になったようで、様々なメディアで取り上げられています。
その中には、以下の記事のように、商品性の複雑さを指摘する声もあります。

私もこのファンドは登場人物が多く、取引フローが複雑だと感じました。
このファンドは、運用はアセマネOneが行い、運用の成果はゴールドマンが発行する仕組債の利金(実績連動クーポン)として支払われるので、この2社の間で、情報連携して取引を行わないといけません。
請求目論見書の8ページから15ページにかけて、この仕組が書いてありました。
http://www.am-one.co.jp/fund/pdf/311801/311801_pr_c.pdf

図が何もないうえに直訳風の日本語で分かりにくいですが、大要は以下のとおりだと推測します。

○アセマネOneが、各資産に対するアセットアロケーション(資産配分)をゴールドマンに提供する
○ゴールドマンはアセマネOneのアロケーションをリスク調整して指数にする(請求目論見書ではこの指数を「参照戦略」と呼んでいました。)
○指数(参照戦略)の計算にあたっては、Solactive A.G.という指数計算会社を使う
○指数(参照戦略)の計算にあたっては、アセマネOneのアロケーションに基づいて国際分散投資を行った場合のコスト相当額と、年1.0%の戦略控除費用を控除する
○仕組債の利金のうち運用実績に基づく部分(実績連動クーポン)は指数(参照戦略)の変動に基づいて支払われる。

このように、2社間で情報連携をして、ドイツの指数算出会社(Solactive A.G.)に委託しながら回していくスキームのようです。
このとき、参照戦略のリスク(値動き)を年率3%に抑えるように調整するため、GSの社債への年間の利払いが信託報酬相当額0.37%+実績連動クーポン(最大3%)の範囲で収まります。これは同社の円建て社債の金利よりも有利な条件のはずです。また、必要に応じてGSの関連会社が参照戦略に対するヘッジ取引を行う(反対側のポジションを取る)とも記載されています。
めちゃくちゃ複雑ではないものの、仕組債に馴染みがない投資家にはイメージしにくいと思います。

投資家が認識しておくべき事項

これらのことを踏まえて、私ならどういう観点で考えるかを述べます。
(繰り返しになりますが、実際の投資判断は目論見書の内容をよく理解して、投資家ご本人の判断で行ってください。)

◎抑えるべきポイント

①ゴールドマンが倒産したら元本は大きく毀損する、最悪ゼロ
⇨ファンドが実際に投資するのはゴールドマンの社債(仕組債)ですので、ゴールドマンが倒産して利金と元本を支払えなくなったらオシマイです。元本確保も何もありません。
②分配金はうまく行っても年2%程度で、安定して毎年出るとは限らない
⇨分配金はアセマネOneがアロケーションを決める国際分散投資戦略のリターン次第ですが、リスク量を3%に抑えるように運用しますので、大きく儲かる戦略ではありません。
販売用資料に記載されているシミュレーションでは、実績連動クーポン(≒分配金)の水準は年2%程度になっていますので、これが目安になると思います。
そして、シミュレーションでは毎年安定して分配される試算が出ていますが、株と債券に投資する以上、絶対はありません。
③手数料はしっかり取られている
⇨当ファンドにかかるコストは、販売手数料1.08%(1億円未満の場合)、信託報酬が信託財産に対して年0.37%、成功報酬が実績連動クーポンの10%と、そこまで高くないです。
ただ、上で見たように実績連動クーポンの算出にあたっては、参照指数の算出の時点で取引費用相当額や算出費用が引かれるので、この点は抑えておくべきだと思います。

◎検討事項
(1) 10年間というかなり長い期間に渡ってゴールドマンが倒産しないことに賭ける(信用リスクを取る)ことと、アセマネOneの計量運用戦略の期待リターン(うまく行って年2%くらい?)をどう考えるか。
(2) 元本保証ではなく「元本確保を目指す」だけの商品であり、あくまで社債だと言うことを忘れない。失うと人生リカバリー出来なくなる資金は突っ込まない。
(3) 複雑さについて。10年間という長い期間に、複雑さゆえに予期していなかった事象が発生する可能性は排除できない。納得感を最優先するならば、理解できないものには手を出さないという方針はあり。
(商品設計が複雑なことが即悪いとは思いません。商品設計がシンプルな伝統資産に投資するファンドでは、元本確保や先物を使った分散投資戦略は難しいです。)

以上になります。


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